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災害時「ネット銀行」ってどうなるの!?「ふだんから知っておきたいお金の備え」Q&A

地震、水害、火災……日常を奪う“もしも”は突然やってきます。そんな時、なによりも大切なのは命!ですが、暮らしを取り戻していくのに必要となるのが「お金」です。もしもに備え、どのような準備ができるのでしょうか?

前回に続き、『どんな災害でもお金とくらしを守る』(著/清水香・小学館クリエイティブ)から、“お金の防災知識”をお届けします。前回は「被災直後」に役立つ情報を見てきましたが、今回は「ふだんから知っておきたいこと・できるお金の備え」を取り上げます。

※書籍は2019年時点の情報のため、法改正の有無を確認した上で本記事をお届けしています。

Q ネット銀行は災害時にどうなるの?

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A 本人名義の他行口座に振り込み対応

ネット銀行(インターネットバンキング)とは、基本的に店舗をもたず、インターネット上で取引をする銀行です。提携しているコンビニや銀行のATMを利用し、残高照会や振込はネットで手続きをします。手数料が安かったり、窓口へ行く手間が省けたりと、メリットも多いので口座を開設する人が増えています。

店舗をもつ既存の銀行では、災害で通帳やカードを紛失してしまっても、本人確認ができれば引き出しは可能です。一方、ネット銀行には店舗がないので電話等で連絡が必要です。東日本大震災では、本人確認後、本人名義のほかの銀行口座に振り込むなどの対応がなされました。金額に上限はありましたが、ATM利用手数料を無料にするなどの対応も。いずれにしても、電話やネットで連絡をする必要があるので、連絡先を控えておきましょう。

ネット銀行の災害時対応に、既存の銀行と比べデメリットはありませんが、電話やネットがつながらなければ、お金を引き出すのに時間がかかります。ただ既存の銀行でも、停電やシステムトラブルでATMが利用できないことはあり得るので、普段使う銀行とは別の銀行でサブ口座を作っておくのも、災害時の対策になるでしょう。

Q 経済的ダメージの大きい人は?

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A 持ち家でローンありの世帯は注意!

被災後、私たちが暮らしを立て直すには、まとまったお金が必要になってきます。被災後の公的支援があるといえども、支援は限定的です。そこでまず、今の暮らしを改めて見つめ直してみましょう。持ち家、あるいは賃貸住まいでしょうか? ローンはありますか? 貯蓄残高はどうでしょうか?

個々の状況により、被災時の家計リスクは変わってきます。わが家はいったい、どのような状況におかれるのかーー。それを把握して、事前に必要な手立てを講じることが大切です。

私たちに災害を止めることはできませんが、家計ダメージを抑える準備は今すぐできます。被災はもはや、他人事ではないのです。そのとき不本意な選択を余儀なくされることのないよう、準備を進めていきましょう。

Q 住まいの保険って必要?

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A 住まいのリスクに公的給付はほぼない

保険というと、多くの人は「生命保険」「医療保険」への関心が高いようです。ですが、「ヒト分野」のリスクは、公的年金制度や公的医療保険制度などの給付を受けるのが基本であり、生命保険等はそれらの補完と位置付けられます。大切なことは、公的な給付をどの程度受けられるのかを具体的に把握すること。それが分かれば、お金がどのくらい必要かを見通すことができます。貯蓄での対応が可能なら、保険にこだわる必要もありません。

一方、「火災保険」や「地震保険」はあまり把握していないという人が多いようです。日本には、近隣の火災で延焼被害を受けたとしても、原則として火元に賠償請求できないと定めた法律があり(通称「失火責任法」)、火災保険には誰もが加入する必要があります。さらに自然災害で被災したときは自力で生活再建を図ることが基本とされ、公的支援は側面的な支援に留まると位置付けられています。貯蓄での対応が不可能な自然災害による損害には、火災保険や地震保険で備える以外の手段はないも同然。頻度が低くても、一旦起きると家計に壊滅的な被害を及ぼす事態には、保険での備えが必要です。

Q 災害に備える保険とは?

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A 火災保険は「自然災害保険」

火災保険は、火災による住宅や家財の損害だけではなく、種々の自然災害で受けた損害もカバーできます。各地で自然災害が頻発する昨今、火災保険は自然災害の損害を補償する保険としての意味合いが大きくなってきています。

自然災害と一口に言っても、いろいろあります。洪水や高潮、土石流や地滑り、床上浸水など、水による損害は「水災」として、台風や旋風・暴風・暴風雨など風による損害は「風災」として補償されます。ほかにも、ひょう災、雪災、落雷などで受けた損害も対象です。水濡れや盗難といった、偶然起きた事故もカバー可能です。

ただし、契約により補償の範囲や内容が異なりますので、これらの補償を必ず受けられるのではありません。火災保険は非常用グッズ。どのような補償を受けられるようになっているかを確認して、わが家に合った適切な内容で加入しましょう。

なお、地震、噴火、津波が原因で受けた損害は、火災保険では補償されません。火災で損害を受けても、その原因が地震等の場合は対象外になることを知っておきましょう。地震等が原因の損害をカバーするには、火災保険に地震保険をセットします。

Q お金まわりの情報管理方法は?

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A 財産目録を作成しておく

加入している保険や持っている銀行口座などの情報をリストにしておきましょう。仮に通帳や証券を紛失しても、スムーズに手続きを進める助けになります。

記録しておきたい情報は、取引銀行と口座番号、契約している保険会社と証券番号、各種ローンの負債状況などです。クレジットカードや健康保険、運転免許証番号なども控えておくと、いざというときとても役に立ちます。これらの情報を書きとめて非常用持ち出し袋に入れるなどしておけば、住まいが被災したときでも必要な情報にアクセスできます。パソコンやスマートフォンを利用して管理する場合には、情報管理を厳重にしましょう。

災害時には、スマホが強い味方となります。情報収集や連絡手段としてはもちろん、停電やシステムトラブルがなければ、電子マネーが使えます。お金まわりの情報もスマホからアクセスできれば、お金に関する心配事はぐんと少なくなります。充電が切れることがないよう、予備バッテリーを持ち歩くなどの対策も忘れずに。

 

イラスト:いぢちひろゆき


被災時の我が家の経済的リスク、住まいの保険の必要性、非常時に役立つ情報リストなど、平時にこそ見直しておきたいポイントが盛りだくさん。

『どんな災害でもお金とくらしを守る』ではこの他に、「火災保険と地震保険の違い」や「自動車の被災への備え」といった項目も分かりやすいイラスト付きで掲載されています。

タメになる手引書とともに、お金の防災について考えてみませんか? そして、できることから取り組んでみましょう。


『どんな災害でもお金とくらしを守る』
(著/清水香 税込み・1,430円・小学館クリエイティブ)

被災者が日々のくらしを取り戻すのに「お金」は必要不可欠。

「被災直後」「生活再建時」「平時にできること」の3段階に分け、それぞれで役立つ“お金の防災知識”がまとられた1冊です。

実際の被災者、トラブルに対応した弁護士、住宅の損害調査にあたった損害保険会社の調査員など、専門家たちのリアルな体験談も収録。

いざというときの支援・相談窓口の連絡先などもまとめられ、防災バッグに入れておきたい必携本です。

清水 香(しみず かおり)

FP&社会福祉士事務所 OfficeShimizu 代表、 (株)生活設計塾クルー取締役。

1968年東京生まれ。中央大学在学中よりファイナンシャルプランニング業務を開始、2001年、独立系ファイナンシャルプランナーとしてフリ ーランスに転身。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。生活者向け相談業務のほか、執筆、講演など幅広く展開、TV 出演も多数。財務省の地震保険制度関連の政府委員を歴任、自由が丘産能短期大学講師、日本災害復興学会 会員。著書に『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)、『あなたにとって「本当に 必要な保険」』(講談社)など。

OfficeShimizu
https://kaorishimizu.themedia.jp/
(株)生活設計塾クルー
http://www.fp-clue.com/

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