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【JAFに聞きました!】豪雨や地震…ドライブ中にもしもの災害、その時どうする!? 猛暑対策も

梅雨の長雨にゲリラ豪雨、台風、猛暑、そして地震……。自然災害に直面する機会が多い中、ひとりで、あるいはお子さんを連れてドライブ中、“もしも”災害に見舞われたら……。恐怖と不安でパニックに陥り、冷静な判断ができなくなってしまうかもしれません。

そこで今回は、JAF(日本自動車連盟)でJAF認定セーフティアドバイザーを務める由水雅也さんに、ドライブ中の災害トラブルについて、その対処法を教えてもらいました。

「台風・大雨」で冠水した道を走るときの対処法

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全国に約3,700カ所あるとされる「アンダーパス」(前後区間と比べて急激に道路の高さが低くなっている区間)をはじめ、川沿い、海沿い、急傾斜地など、冠水しやすい道路は全国に多数あります。やむを得ず、そういった道路を走らなければならないとき、どうしたらいいのでしょうか。

ドライブの基本は“リスク回避”。そもそも水が溜まった道路は“走れない”と思っていただき、気象情報を見て、台風や大雨の危険が近づいているとわかった段階で、運転を控えるのが大原則です」(以下「」内、由水さん)

とはいえ、ゲリラ豪雨など、予測できないケースもあります。どれくらいの深さの水溜りに入ると、走れなくなるのでしょうか。

「冠水路走行テスト」 時速30km 水深60cm(写真提供:JAF)

「JAFでは、集中豪雨などでアンダーパスが冠水した場合を想定し、自動車がどのくらいの浸水深の冠水路を走りきれるかを検証しました。

この実験によると、水深30cmの場合、時速10~30kmの低速であればなんとか走行できますが、水深60cmになるとエンジンが停止して、走行できなくなりました。タイヤの上部まで浸水したら走れなくなると思いましょう

※資料提供:JAF

車のエンジンは、空気を取り込んで動くため、車体前方に空気の取り込み口があるのですが、ここに水が入ってしまうとエンジンはかからなくなるそう。

「走行できそうにない場合は、エンジンを切って脱出し、助けを呼びましょう。その際、可能なら車を道路の左側に寄せて止めましょう」

「台風・大雨」で車が水没したときの対処法

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考えたくはありませんが、万が一、車が水没した場合はどうしたらいいのでしょうか。

「車内にはまだ浸水しておらず、車外に水が溜まっている場合、水圧が大きくなりドアが開けられなくなる可能性があります。

すぐに脱出を試みてほしいのですが、ウィンドウガラスが開かず、脱出用ハンマーなどガラスを割るような道具もない、あるいは脱出用ハンマーがあっても合わせガラスなど頑丈な窓ガラスで割れない場合、慌てず冷静に車の内側と外側の水位差が同じになるのを待ちましょう。

車内に浸水し、車外との水位の差が小さくなれば水圧も小さくなるため、女性でもドアが開けやすくなります」

こういった危険性も考え、普段からウィンドウガラスを割るための脱出用ハンマーやシートベルトカッターを車中に常備しておくのがおすすめだそう。

いずれも、カー用品店やインターネットの通販サイトなどで1,000円前後~購入できます。

5分でも危険!「猛暑」の車内で起こること

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真夏の炎天下の車内に、小さなお子さんや高齢者、ペットを置き去りにした結果起こる、痛ましい事件が毎年報道されています。“5分くらい大丈夫”という気持ちが最悪の結果を招くと、由水さんは警鐘を鳴らします。

「JAFでは、真夏の日中、車内温度がどのように変化するのか、テストを行いました。その結果、窓を閉め切った車両(黒色のボディ)では、エンジンを停止させてわずか30分後に車内温度が約45℃を記録。3時間後には55℃を超えました。窓を3cm程度開けておいたとしても、30分後に約40℃、3時間後に約45℃と、厳しい車内温度になることには変わりありませんでした」

フロントガラスの全面をサンシェードで覆っても、温度抑制効果はあまり望めなかったといいます。

真夏の車内温度の変化(資料提供:JAF)

「エンジンをかけたままエアコンを作動させておけば大丈夫だろうと考える人もいるかもしれませんが、この場合、温度の上昇は防げますが、エンジンをかけてあるので誤操作で車が動いてしまったり、燃料切れでエンジンが止まってしまう可能性があります。また、排ガスなどの環境面にも問題がありますので、絶対にやめましょう」

気をつけるべきは車内温度だけではないそうです。気温に関わらず、熱中症になる危険性を表す「熱中症指数」が上昇すれば、死に至ることがあるのだそう。

熱中症指数の推移(資料提供:JAF)

「エアコン停止からわずか5分で熱中症指数は『警戒』レベルに達し、15分後には『危険』レベルに達します。特に乳幼児や高齢者は体温調節機能が未発達だったり、低下しているため、短時間で命を落とすことがあります」

起こすと泣いてしまうからなどの理由で、寝ているお子さんを車内に残しておきたくなる気持ちはわかりますが、これはとても危険な行為。車を降りるときは、たとえわずかな時間でも必ず一緒に降りましょう。

その他、炎天下の車内ではどのようなことが起こるのでしょうか。

「ダッシュボードの上をはじめ、シートベルトやチャイルドシートのベルトの金具は熱が蓄積しやすい場所。うっかり触るとやけどの危険性があります。

また、デオドラントスプレーや冷却スプレーなど、可燃性ガスを使うスプレー缶や、ライターなどアルコールの含まれる製品は、破裂や引火の可能性があります。車内火災や爆発につながるので、絶対に車内に置かないようにしましょう」

他にも、お子さんのクレヨンをダッシュボードの上に置いておき、溶けてしまったケースや眼鏡フレームが曲がってしまったケース、スマホが故障したケースもあったそう。夏の日中、車内に入れておいていいものはないと心得ておきましょう。

車内温度をすばやく下げる方法は?

では、暑くなった車内を短時間で効率的に冷やすには、どうしたらいいのでしょうか。

「車内の温度を下げるには様々な方法がありますが、これもまた、JAFで実験を行い、比較したことがあります。結論から言うと、

対策別 車内温度の変化(資料提供:JAF)

  1. 窓を全開にする
  2. エアコン(オート)を外気導入にし、温度設定はLo(最低)にして走行
  3. 2分後に窓を閉める
  4. エアコンを内気循環にして3分間走行する

という方法が最も早く室温を下げることがわかりました。

これなら、車内の熱気を素早く、効率的に逃がせます。短時間で温度を下げられるので、燃料の消費や排ガスも抑えられ、環境面でもメリットが多い方法と言えます」

    エアコンの外気導入と内気循環って?どう使い分ける?

    ところで、ここで出てくるエアコンの「外気導入」と「内気循環」とは一体何でしょうか。

    「車内のエアコンは『外気導入』と『内気循環』のどちらかが選べます。

    『外気導入』では、車外の空気を取り入れられるので、換気したいときに使います。車内の温度を外気温に近づけられるので、ガラスの曇りを取りたい時にも有効です。

    一方、『内気循環』は、外気が入らないようにした状態で、車内だけでエアコンの冷気などを循環させます。車の空調をどちらにしておくか、悩まれるドライバーのかたは多いのですが、通常は『外気導入』にしておくのがおすすめです」

    「内気循環」にしておくと、外の排気ガスが入ってこないというメリットはありますが、空気を車内でのみ循環させて換気されないので、二酸化炭素濃度が上がり、運転中に頭が痛くなったり、集中力・判断力が低下することもあるそう。状況によって賢く使い分けましょう。

    ドライブ中に「地震」が発生したときの対処法

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    夏に限らず、地震は突然襲ってきます。運転中に大きな揺れを感じたり、緊急地震速報が発表された時は、どうすべきでしょうか。

    「どんな場所を走行中でも、基本的な対処方法は同じです。焦ってスピードを落とさず、まずはハザードランプを点灯させながら徐行し、周りの車に注意を促します。周囲の状況を確認しながら、道路の左側に停車させ、エンジンを止めたら、揺れが収まるまで車内で待ちます。

    その間、ラジオなどで情報収集をしましょう。揺れが収まり、走行できそうならそのまま走行し、車が動かせない状況であれば、エンジンを切って車をその場に置いて安全な場所に避難します。

    その際、サイドブレーキをかけ、窓を閉めてドアはロックせず、キーをつけたままか車内の分かりやすい場所(スピードメーター周辺など)に置いておきます。可能であれば、連絡先を書いたメモなどを貼るか、残しておくのがおすすめです」

    ドアをロックせず、キーを車内に置いておくのは、緊急車両が通行するときに移動させられるようにするため。とにかく、車を移動できる状態にして逃げるのが大切なのだそう。

    「橋の上を走行中は、可能なら渡り切ってから停車しましょう。トンネル内を走行中は、非常の駐車スペースに。いずれもやむを得ない場合は、その場で駐車してかまいません。

    徒歩で避難する場合、つながりにくいとは思いますが、警察に連絡を入れておくのがおすすめです。地震がおさまって車を取りに行く場合は、道路を管轄している団体を調べてそこの指示を仰ぎましょう。特に、高速道路には勝手に入れませんので、注意が必要です」

    自然災害はいつ起こるかわかりません。車内には、以下のものを常備しておきましょう。車内用の防災リュックを入れておくのもおすすめです。

    • 脱出用ハンマー
    • シートベルトカッター
    • 懐中電灯
    • ラジオ
    • 飲料水や携帯保存食
    • 携帯トイレ・おむつ

     

    ただでさえ、パニックになりがちな災害時、これらの対処法を知っておけば冷静さを保てますし、助かる可能性が上がるはずです。家族で一緒に学んでおきましょう。

    次回は、車両トラブル編をお届けします。

    【取材協力】

    JAF(日本自動車連盟)


     

    【教えてくれた人】

    由水雅也(よしみず まさや)

    一般社団法人 日本自動車連盟 事業課交通環境係。JAF認定セーフティアドバイザーとして、実技型・座学型の講習会で講師を担当。全国各地で、楽しく学べる交通安全イベントも実施している。事故のない社会を目指し、日々業務に励んでいる。

    嶋田久美子
    嶋田久美子

    エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。

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