子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

災害時にも強い「キャンピングカー」のススメ!最強なのは遊ぶことだけじゃない【#8】

旅エッセイストの国井律子です。今回の連載「無駄のない暮らし」は、「キャンピングカーと防災」について。

2008年から私はキャンピングカーのオーナーですが、ここ数年、車両数が増えたなぁと肌で感じています。というのもコロナ渦があり、日本各地で年に何回か起きる災害などもあり、「シェルター」としてのキャンピングカーが注目されているからです。キャンピングカーショーでも防災特集が組まれているほど。

2024年始早々に起きた能登半島を中心とした大地震。羽田空港での事故など心を痛めておられる方も多いのではないかと思います。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
私の夫の実家が金沢で、能登半島にも親戚が多く、なんだか落ち着かない正月を過ごしました。
そんなおり、この連載の担当Uさんもご実家が金沢で、正月に地震に遭遇したそうで、彼女から「防災とキャンピングカー」について書いてほしいというリクエストをいただきました。これまで私がキャンピングカーに乗ってきて、「ソレに乗って遊ぶのはもちろん楽しいけど、こういうところが災害時にも強い! 」ということを今回はご紹介します。

私とキャンピングカー

null
千葉鴨川にて。サーフィンにハマり過ぎて全盛期には毎週「水土日」と外房に通っていました。

水道設備がない場所でも海上がり、快適に砂や潮を落とすことができます。

まずはじめに、どうして私がキャンピングカーに乗るようになったかを……。
もとはと言えば独身時代、趣味のサーフィンのために、ほぼ寝るだけの装備しかない中古のキャンピングカーを購入したのがキッカケでした。2008年のことです。前の晩から出発する“前乗り”をして週3日外房の海に浸かっていました。サーフィン中心の生活を送っていたのです。

その後、2011年に結婚。2012年にイヌを飼い、2013年に長男が生まれてそのキャンピングカーでは役不足となり、クルマで寝泊まりしながら旅するための快適な装備が整っている……、皆さんが想像するようないわゆる「キャンピングカー」を2017年に購入。

2台目キャンピングカーには「大容量の水タンク」があり、家族全員シャワーが浴びられます。つまり水がないところへも自由に行けるということです。「家庭用エアコン」や「電子レンジ」、単身用サイズの「冷蔵庫」も付いており、エンジンを切っても使える「サブバッテリー」が3基。それは大容量ポータブル充電器みたいなモノだと思っていただければわかりやすいでしょうか。これまでのひとところにとどまる旅では、スマホやPCの充電くらいなら3日はもちました。

サーフィン以外でもあれこれ遊んでいたら、2018年に次男が生まれました。長男はおとなしくてインドア派ですが、次男はというと非常に活発。レストランやホテルでは気が引けてしまうくらいで、私たちの旅には誰にも迷惑を掛けずにプライベートが確保できるキャンピングカーが欠かせなくなりました。
またコロナ渦では、とにかく次男を発散させようと、家族以外の誰とも接触せずに楽しめる、キャンピングカー&トレッキングなどアウトドアの遊びをよくしていました。

数年前にはガソリン燃料を用いて経済的に車内を暖められる「FFヒーター」を追加装着。快適に雪山遊びを楽しんでいます。

つい最近、千葉は館山で仲間たちと焚き火キャンプ。
長野県の北端、マンモスの化石が出たことで有名な野尻湖畔にて。
電子レンジは本当に便利! キャンピングカー旅のマストアイテムです。

キャンピングカーの旅はとにかく経済的

null

その土地のご馳走をスーパーなどで購入。このときは富山の「昆布締め」が食卓に並んでいます。

先ほども申し上げましたが、次男が活発すぎて旅の食事はほぼ車内で食べています。寝床もクルマですし、家族でホテルに泊まるよりも当然ながらお財布にやさしい。現在インバウンドの影響で宿泊費が高いとよく聞きますが、私たちには関係ありません。唯一気になっているのは最近のガソリン高ですね……。でもそれは一般的なガソリン車も同じですよね。ちなみにリッター8kmくらいは走ります(ディーゼルです)。家を積んでいるため重量があるので燃費はやや悪いですが、宿代を考えたら経済的です。初期費用はちょっとかかりましたが、ガンガン元を取っているところです(笑)。

さて、本題。「キャンピングカーと防災」。いざというときキャンピングカーがあればどんなことが助かるか、「シェルター」としてのキャンピングカーについてご紹介します。

活発次男は、なぜか落ち葉を熱心にタイヤハウスに詰めている那須高原にて。
ちょっとなつかしい次男ミルクタイム。キャンピングカーは家のようにくつろげます。

1:家と変わらない寝心地

null

リアの二段ベッドの様子。キャンプ用のエアマットを敷いています。

寝泊まりすることを目的に作られたキャンピングカーです。自宅と同様足を伸ばして悠々寝ることができます。避難所や自家用車の車中泊でたびたび報じられる「エコノミークラス症候群」の心配はありません。車内は天井が高いので男性でもコシをかがめずに移動することができます。

余談ですが、私はひとりでないと寝られない体質なんです……。誰かの寝返りで目が覚めてしまい、朝を迎えてしまいます。なのでわが家のキャンピングカーは「睡眠」に重きを置きました。運転席上の広々とした「バンクベッド」には息子たち。後部にある「二段ベッド」は夫と私がひとり1ベッドで寝ています。

狭い車内ですが、ひとりずつの寝床を確保。家より安眠できるかもしれません。
寝具は布団状になる寝袋、スノーピークの「オフトン」を使用。コンパクトに収納できます。

2:プライベートを確保

null
ペットを飼っているご家庭にとって動物は家族の一員。災害時に安心して過ごせるスペースがある。それだけで全然気持ちが違いますよね。

大規模な災害に見舞われた場合、多くの人々が集まる避難所でプライバシーを完全に確保するのは難しくなります。そんななか、キャンピングカーは人目を気にすることなく、プライベートな空間が保たれます。ペット連れや持病がある人や赤ちゃんや、わが家のように元気すぎる次男がいるご家庭にも心強いシェルターということは間違いありません。

3:電気が使える、充電ができる

null
この画像は旅の前サブバッテリーに自宅から一晩「外部充電」しているところ。キャンピングカーの屋根にはソーラーパネルも付いています。

わが家のキャンピングカーにはサブバッテリーが3基、屋根にはソーラーパネルが付いています。エンジンを切った「オフグリッド状態」でも冷蔵庫を付けっぱなし、スマホやPCなどの電子機器の充電くらいなら3日はもちます。キャンピングカーは大容量の充電器でもあるのです。

とはいえ電力を大量に使用する電子レンジやエアコンを同時に何度も使ったらスグに空になりますが。AC電源が繋げられるオートキャンプ場やRVパークに滞在しているとき以外は、エアコンは使わないようにしています。代わりに冬場はガソリンを用いて室内を暖める「FFヒーター」を。一晩付けっぱなしでもガソリン使用量は1Lくらいと言われています。暑いときには窓を開けて扇風機を回したりも。

そのように常日頃バッテリー残量を考えながら、なるべく快適に過ごせるよう旅しています。最悪、充電が無くなってもエンジンを掛ければなんとかなるので、ふだんから旅の最後に給油し、なるべく満タン状態にするよう習慣づけています。マンイチ災害などで停電になっても、階下に止まっているキャンピングカーに乗り込めば1週間くらいはなんとかなるかなと思っています。

4:トイレがあると安心

null
防水ルームには「ポータブルトイレ」を置いています。
「トイレシート」はアウトドア用(遊び用)より介護用の方が量が多くて安いです。災害など、いざというときに備えておくと安心。

独身時代のとき、キャンピングカーの旅でトイレは高速道路のサービスエリアとか、道の駅とか、コンビニとか、ガソリンスタンドを利用することでなんとかなっていました。しかし子どもができて、あの方たちが「おしっこー!」とシャウトするときは、だいたい決壊寸前……。2台目キャンピングカーに乗り換えたタイミングで、クルマにトイレを積みました。といっても備え付けの「カセットトイレ」ではなく、置くだけのもっとも簡易的な「ポータブルトイレ」です。

便器内にあるバケツのなかに、使い捨てのトイレシートを敷いて使用するタイプなので後処理がラクです。子どもなら4回くらいは使えます。小なら臭いも気になりません。使用済みのシートは「Lサイズの防臭袋」に捨てています。感覚でいうと赤ちゃんのオムツ交換に近いかもしれません。

災害時の避難所では、トイレになるべく行かないように水分補給を控えたらエコノミークラス症候群を引き起こす、という話もよく聞きます。簡易トイレでも、あるとないとじゃ全然安心感が違いますよね。

5:食事する環境が整っている

null
シート下にある「調理器具類」。鍋やザルなどひととおり揃っています。
食器洗いに時間を取られたくないので、紙皿が便利です。災害時も同様ですね。100均にはかわいい柄がいろいろ。
RVパークなど電源が取れる場所以外は、基本は電子レンジは使わず「湯煎」で温めています。

暮らすように旅しているクルマなので、調理器具や食器類はバッチリ揃っています。調理にはカセットコンロを使っています。

出入り口には、夜中に外のトイレに行くときに使う懐中電灯、頭に付けるヘッドライトもぶら下がっています。不便を快適に変えて楽しむキャンプなどもそうですが、アウトドアグッズはもしものときに役立ちますね。
車内には電池、ティッシュ、ウエットティッシュ、ミネラルウォーター、お米のレトルトパック、スープ、ペットシートなど備蓄しています。さらにはタオル、爪切り、マンイチ風呂に入れなかったときの顔や身体を拭くシートなどもあり、スグにでもシェルターになります。

6:非常食はちょっとおいしいレトルト食品で

null
自宅のパントリーを見渡して、非常食になりそうなモノをピックアップしてみました。
旅の前、自宅の冷蔵庫にある食べ物はそのままキャンピングカーの冷蔵庫に移動。小さいけど冷凍庫もあります。

災害などですべての物流が止まったことを想定して。だいたい3日あれば物資が届くだろうと考えたとき、皆さんはどんな非常食を思い浮かべますか。そのまま食べられる乾パンとか缶詰とか、お湯や水を注いで作るアルファ化米とかカップラーメンとかでしょうか。月に何度もキャンピングカーで出かけるわが家の食事も毎度非常食のようなモノですが、ご当地カレー、モツ煮、高級ハンバーグとかけっこうおいしいですよ(笑)。

また、わが家は月に一度パルシステムを取っているので、長期保存できるクロワッサン、子どものジュース、レトルト食品など毎回たっぷり買っています。こちらも立派に非常食として活躍しますね。

そのような常温保管できる食材は旅に持って行ったり、バタバタ忙しい夕方に子どもにサーブするなど、買っては食べてを繰り返しています。常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法を「ローリングストック」と言うそうです。たとえ非常時でも、食がいつもと同じなら気持ちも安定しませんか。

ところでこの正月、モチの魅力にハマってしまいました。常に「ハラヘッタ! 足りない!」と叫んでいる育ち盛りの息子たち。うどんや蕎麦にモチを入れると急に静かになるんです(笑)。カロリーの底力を感じました。モチはお湯で煮たりフライパンで焼いたり簡単調理ができるので、非常食としていいかもしれません。ただ、小さいお子さんや高齢者さんは気をつけてくださいね。

地方のスーパーやホームセンターなどで安いミネラルウォーターやカセットボンベを見つけたら、箱買いしてパントリーに備蓄。旅に行く都度キャンピングカーで使っています。

7:キャンピングカーをレンタルして「防災体験」してみる

null
レンタルのキャンピングカーで旅した北海道は道東にて。

最近は、キャンピングカー人気の高まりから、レンタルできる車両もあちこちにあります。わが家も本州の旅は愛車で行きますが、北海道とか九州とかへは貯まったマイルを使って飛行機で飛び、現地でキャンピングカーをレンタルしています。自走してフェリーに乗せるよりずっと安上がりで、現地での時間が長く取れるからです。

キャンピングカーが気になる皆さま、ぜひレンタルして防災体験をしてみてはいかがでしょうか。

このたび被災された皆さまには、平穏な時間が1日でも早く訪れますよう願っております。

国井律子
国井律子

1975年東京生まれ。大学卒業後ラジオレポーターなどを経て二輪雑誌でエッセイスト・デビュー。現在は、オートバイのほか、旅、クルマ(キャンピングカー所有)、自転車、サーフィン(ショートもロングも)、スノーボード、ファミリートレッキングなど多趣味をいかしたエッセイを執筆中。旅が好きなのと同時に、おうちも大好き。家での一番の趣味は収納(整理収納アドバイザー1級資格取得)。いかにラクするか考えること、「時短」という言葉も大好き。嫌いな言葉は「二度手間」。インテリア、ネットショッピング、お取り寄せグルメ・酒、手抜きおつまみ作りに熱心。「痩せたい」というのが口癖。直近は苦手な掃除をがんばっている。飼い犬はボストンテリア。ふたりの男児の母でもある。

https://ameblo.jp/kuniritsu/
https://www.instagram.com/ritsuko_kunii/

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載