イタリアンレストランのドレスコード
まずはお店に行く際の服装について。イタリアンはフレンチと比べてカジュアルな印象をもっている人もいるようですが、例えば下記に挙げる「リストランテ」などは高級料理店ですので、相応のドレスアップが必要です。お店のカテゴリーから判断して、着て行くものを考えましょう。
■リストランテ
コース料理を中心に提供する高級店。女性はワンピースやスーツ、男性もスーツやジャケットにネクタイを着用します。女性が仕事先からスーツで直接向かう場合は、ビジネススタイルのままでなく、アクセサリーやストール、スカーフなどで華やかさをプラスすると良いでしょう。
■トラットリア
リストランテよりもカジュアルな、いわゆる一般的なレストラン。個人経営や家族経営が多い傾向。服装もリストランテよりは軽装でよいですが、日本では区分けがあいまいなためトラットリアと名乗っていても高級店の場合もあるので注意します。
目安としては、マネージャーと給仕(ウェイター・ウェイトレス)が分かれており、給仕がジャケットを着ていたりしていたら、客側もある程度のドレスアップ(男性はジャケット、女性はエレガントなスタイル)が必要ととらえましょう。
また、ディナーのコースで1万円を超えるのが普通なようであれば、トラットリアと表記されていてもリストランテと同様に考えます。
■オステリア
“イタリア版居酒屋”。庶民的な雰囲気のある食堂です。以下3種の店では普段通りのカジュアルな装いで問題ありません。
■バール
イタリア本国ではカフェ的な位置付け。
■ピッツェリア
ピザ専門のイタリア料理店。
イタリアンの基本のテーブルマナー
【1】ナプキンの扱い
■膝に広げるタイミングとかけ方
給仕が水やアルコール等の飲み物を運んできた時がナプキンを膝に広げる目安です。飲み物が運ばれたら、ナプキンをふたつ折りにし、折り目の側を自分に向けて置きます。
■食事の途中に口を拭くときは
表側でなく、ふたつ折りにしたナプキンの内側で拭き、汚れた面が表から見えないようにします。
■席を立つとき
洗面所に行くなど途中で席を立つ場合は、椅子の上に軽くたたんで置きます。たまに椅子の背にかけていく人がいますが、給仕の人がサービスでしてくれることであり自分ではしません。
■食事を終えたら
食べ終わって席を立つ前に、ナプキンをテーブルの上に戻します。このとき、きれいにたたんでしまわないこと。無造作に置いて終わります。きれいにたたみすぎると「料理がおいしくなかった」という意味になります。
【2】カトラリーの扱い
■ナイフとフォーク、スプーンなどは外側から使う
コース料理ではナイフとフォークなどのカトラリーがあらかじめテーブルに並んでいます。左右外側から順に使っていきます。
■食事中の途中で置くとき
食事中、ナイフとフォークから手を離すことがあります。このとき、ナイフとフォークは皿の上にハの字になるように置きます。ナイフは刃の部分を内側に、フォークは背を上にして置きます。
■食べ終わったら
ひと皿食べ終えるごとに、ナイフとフォークは揃えて片側に置きます。ナイフは刃を手前に、フォークは背を下にして置きます。この時、時計の5時の方向に置きます。
【3】パスタやピザを食べるとき
■ロングパスタの食べ方
イタリアンといえばパスタは欠かせない存在ですね。日本ではスパゲティなどのロングパスタを食べる際、フォークとスプーンを使う人がいますが、本場イタリアではフォークだけで食べるのが一般的。
また、パスタをすする、口に入りきらなかったパスタを途中で噛み切るのもよくありません。一度に口に入る分だけのパスタをフォークで巻き切ってひと口で食べます。
ロングパスタは、口に入る量を想定してフォークでパスタをすくい、フォークをお皿に対し垂直に立てて巻き取ります。フォークの先がお皿に直接触れていないと、パスタを巻き取るのが困難になります。
■ショートパスタの食べ方
ペンネやフジッリなどのショートパスタを食べる場合は、フォークをスプーンのように使ってすくって食べます。フォークでうまくすくえない場合は、パスタを刺して食べても大丈夫です。
■貝殻つきの具が入っているスープやパスタ
パスタに入っている貝を食べる場合は、食べる都度手で殻を押さえながらフォークで貝の中身を取り出します。最初から全部の貝の中身を取り出すのはよくありません。
貝の殻は殻入れ、またはお皿の一方(自分から遠い側)にまとめて置きます。フィンガーボウルが用意してある場合は中の水を使って指の汚れを落としましょう。ない場合は膝の上のナプキンで拭き取ります。
■ピザの食べ方
カジュアルな食べ物とされているピザですが、カジュアルなお店や仲間うちでは手を使って気楽に食べても構いません。やけどに注意してくださいね。
持ち上げたピースは、そのまま食べ切ります。食べかけたものをお皿に置かないこと。
手で食べた時、油っぽい手指の汚れは、ウエットティッシュより紙ナプキンで拭うほうがきれいに取れるものです。食べ始める前に紙ナプキンを手元に用意しておくとよいでしょう。
レストランでナイフとフォークが出された場合には、もちろんそれらを使って食べます。出されていない場合、お店の人にお願いしてナイフとフォークをもらっても問題ありません。基本的には取り分けたピザのスライスを三角形の頂点のところからひと口分ずつ切って食べます。
薄い生地のピザを食べる時に適している、ナイフとフォークで巻いてから食べる方法をご紹介します。上に乗っているトッピングやソースもきれいに食べることができますよ。
(1)ナイフで生地を押さえながら、フォークでピザの中心の三角形の先端を少し持ち上げます。
(2)めくった先端をナイフで軽く押さえ、フォークで外側に向かって巻きこんでいきます。
(3)耳の部分まで巻けたら、食べやすい大きさに切り分けます。
(4)ひと口分ずつ食べられて、具もこぼれません。
食事の際にしてはいけない10のタブー
【1】食べる際に音を立てる
お皿とカトラリー(ナイフやフォーク、スプーンなど)の音は立てない。クチャクチャと噛む音やズルズルとすする音を立てない。コーヒーカップとソーサーなど食器同士の音にも気を付けます。
【2】食べる時の姿勢が悪い
猫背で座っていたり、食器に口(顔)を近づけて食べたりしていませんか? どんなにカトラリーを上手に使えても、姿勢が悪いと台無しです。
【3】違いな服装で行く
お店の格に応じてふさわしい服装を。高級店ではドレスコードを確認してから行くとよいでしょう。カジュアルなお店に過度に華美な服装で行くのも考えものです。
【4】食事中に席を離れる
一度座ったら、メイン料理を食べ終わるまでは席を立たないのがマナーです。メイクを直すなど洗面所に行く用は、席に案内される前に済ませておくこと。
【5】苦手なものやアレルギーのある食材を伝えない
特にコース料理ではあらかじめ聞かれることが多いですが、自分の苦手な食材やアレルギーのある食材があれば事前に伝えておくこと。料理を出されてから食べずに残したりすることのないように。
【6】大きな声で話す
食事に楽しい会話はつきものですが、大きな声で話すのは良くありません。ほかのテーブルの人にも迷惑ですし、お店の雰囲気も壊してしまいます。
【7】女性から男性にお酒を注ぐ
欧米ではテーブルで鳥をさばくことやかたまりのお肉を切り分けること、お酒を注ぐのは男性の仕事です。女性が男性にお酒をつぐのは品がないこととされます。高級店では給仕の人に注いでもらえますが、カジュアルなレストランでは自分達でワインなどを注ぎます。その際、女性から男性に注ぐことにならないよう注意しましょう。
【8】落としたカトラリーやナプキンを自分で拾う
落としたナイフやフォークなどやナプキンなどは、給仕の人にお願いして拾って(新しいものに取り換えて)もらいます。
【9】自分のペースで食事を進める
自分だけノロノロと食べていたり、逆に早すぎるのも考えもの。同じテーブルの人達の様子に目を配り、食べるスピードを合わせることが大切です。
【10】給仕の人などお店の人にお礼をしない
欧米の人に比べて日本人はお店の人に「ありがとう」を言わない人が多い印象です。料理や飲み物を運んでもらうなどサービスを受ける際、食事が終わって帰る際など必ず「ありがとう」と声をかけましょう。
世界中で愛されているイタリアン。日本だけでなく様々な国で食べる機会もあるかもしれませんが、基本のマナーは世界共通。たとえカジュアルなお店であっても、普段から品よく美しい食べ方を意識して食べることはなにより大切です。
ドレスコードやテーブルマナーに気を配り、お店やそこに集まる人たちへの敬意を忘れずに、食事を楽しんでくださいね。
・撮影/田中麻以(小学館)
・イラスト/スギザキメグミ