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焼香の正しいやり方は?回数や作法など宗派別に解説…数珠やマスクについての注意点も

/ [最終更新日] 2022.04.14

焼香のやり方をきちんと学ぶ機会はなかなかありません。そのため、いざ、葬儀や法要で焼香の順番がまわってくると、ちょっとドキドキしてしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントの吉川美津子さんに焼香の意味や、宗派別の作法についてうかがいました。

焼香の意味や目的は?

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“焼香”とは、仏前や霊前で香をたいて仏・故人にたむけること。

日本においては、仏教式の葬儀や法要において参列客がお香をたく場面のことを指すのが一般的です。

仏教では、香のかおりは、分け隔てなく皆にいきわたり、心身を清浄にすると考えられているため、焼香は重要な作法とされています。

焼香の際には“抹香”(まっこう)と呼ばれる香木をベースとした粉末を香炉の中に入れる場合が多いのですが、線香を使用する場合もあります。後ほど詳しく説明しますが、宗派によって焼香の回数は少しずつ異なります。

焼香のやり方は?宗派別の作法を解説!

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続いて、焼香のやり方を解説します。

司会者の誘導に従い、自分の焼香の順番がまわってきたら、亡くなったかたの霊をお祀りする象徴として仏壇に安置されている“位牌”(いはい)に向かってお辞儀をします。

その後、焼香をしますが、宗派によって回数が異なります。抹香を使った焼香と、線香を使った焼香に分けて、各宗派の基本とされている方法をまとめました。

宗派 焼香の回数 作法 線香の作法
天台宗 1~3回 額におしいただきながら焼香 3本たてる(奥に1本手前に2本の正三角形)
真言宗 3回 額におしいただきながら焼香 3本たてる(奥に1本手前に2本の正三角形)
浄土宗 1~3回 額におしいただきながら焼香 1~3本たてる
浄土真宗本願寺派(西) 1回 抹香は額におしいただかず、そのままつまんで香炉へ 香炉に横に寝かせて入れる(香炉の長さに合わせて折る)
真宗大谷派(東) 2回 抹香は額におしいただかず、そのままつまんで香炉へ 香炉に横に寝かせて入れる(香炉の長さに合わせて折る)
臨済宗 1~3回 額におしいただきながら焼香 1本たてる
曹洞宗 2回 1回目は額におしいただき、2回目はそのまま香炉へ 1本たてる
日蓮宗 1回または3回 額におしいただきながら焼香 1本たてる
日蓮正宗 3回 額におしいただきながら焼香 香炉に横に寝かせて入れる(専用の香炉を使用)

このように、宗派によって焼香のやり方は少しずつ異なります。とはいえ、実際には全ての宗派の方法を正しく使い分けられるかたはほとんどいらっしゃらないと思います。

無理に相手の宗派の回数に合わせる必要はなく、自分が属している宗派がある場合は、その方法で焼香をしても問題はありません。

ちなみに、焼香をする前後に親族にお辞儀をする場面がよく見られますが、必ずしも厳密なマナーではありません。あくまでも場の雰囲気に従い、必要と判断した場合にお辞儀をする形でいいでしょう。

加えて、「抹香は親指、人差し指、中指でつまむのがマナー」という説もしばしば聞かれます。適度な量の抹香をつまみやすいのが3本の指という点においては一理ありますが、仏教の決まりに基づいたマナーではありません。

キリスト教式や神道では「焼香」は行われている?

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キリスト教式では、カトリックでもプロテスタントでも、焼香の代わりに献花でお別れをするケースが多く見受けられます。仏式の葬儀の焼香に影響を受けたものだと考えられており、日本の独自の儀式です。

献花の正しいやり方というのはありませんが、茎を祭壇に向け、花の部分が手前になるように置くのが一般的とされています。

神道では玉串奉奠(たまぐしほうてん)と拝礼

神式の葬儀においては、仏教の焼香に類する作法として、玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われています。

玉串奉奠のやり方は少し複雑なので戸惑う方がとても多いようです。神社によって差異はありますが、基本的なやり方は以下の通りです。

(1)一礼して神職から玉串を受け取る。左手で先のほうを下から支え、右手で枝元を上から持つ。玉串の先のほうを少し高くする。

(2)胸のあたりで少しひじを張り、神前の玉串案(台)の前まで進み、15度の敬礼をする。

(3)玉串を右に90度まわしたら一旦両手で枝元を持ち、 少し立てて祈念をこめる。

(4)右手と左手を入れ替え、右回りに180度回して枝元を神前に向ける。

(5)玉串案の上に玉串を置く。

(6)90度で2拝した後、両手を胸の高さに合わせ、右手を少し引いて音を立てない 拍手(しのび手)で2拍する。最後に手を下ろして90度に拝礼する。

”しのび手”とは、音をたてずに両手が触れる寸前でとめる作法です。

玉串奉奠の作法がわからなければ、スタッフに確認してから行いましょう。

神道 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
神職から玉串を受け取る
神道 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
玉串を右に90度まわしたら一旦両手で枝元を持ち、 少し立てて祈念をこめる
神道 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
右回りに180度回して枝元を神前に向け、玉串案の上に玉串を置く。その後、二拝・二拍手・一拝。拍手は音を立てない「しのび手」で。

「回し焼香」とは?

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再び仏式の焼香のお話に戻りますが、焼香には香炉の前に並んで行う一般的な焼香のほかに、「回し焼香」が行われる場合もあります。

「回し焼香」とは、参列客がその場に座ったままの状態で、焼香用の香炉を順番に回していく方法です。会場の規模の関係で参列客の移動が困難である場合や、少人数の法要の場面で見られます。

焼香のときには数珠はどうする?

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焼香 数珠
数珠は、仏様と自分をつなぐ仏具であると考えられています。数珠を持参する場合には、常に身に着けておくようにします。焼香の場面でも同様です。焼香などで席をはなれるとき、いすや座布団の上に置いていくことは避けましょう。

焼香のときに気を付けるべき服装マナーは?マスクは外すべき?

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その場にふさわしい装いをしているのであれば、焼香だからといって特別気を付けることはありません。

ひょっとしたら、風邪が流行っている時期や花粉症の時期は、「マスクを外すべきかどうか」といったことで悩むかたもいらっしゃるでしょう。もし、周囲への配慮のためにマスクを着用しているのであれば、外さずにそのまま焼香を行っても問題はないでしょう。

今回は、吉川美津子さんに焼香のマナーについてうかがいました。

複雑な作法があるために、自分の焼香のやり方に自信のないかたは少なくないようです。吉川さんによれば、全ての宗派の作法を覚える必要はなく、自分の宗派の焼香の作法を覚えておくことが大切だそう。”故人に香をたむける”という本来の意味を踏まえて、焦ることなく心を込めて焼香をしたいものです。

 

【取材協力・監修】

葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント

吉川 美津子(きっかわ みつこ)

大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、専門学校にて葬祭マネジメントコース運営に参画。現在は葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントとしての活動に加え、医療・介護と葬送・供養の連携を視野に葬送・終活ソーシャルワーカー(社会福祉士)としても活動している。

共同監修『葬儀・相続 手続きとお金』(扶桑社)、共著『死後離婚』(洋泉社)、著書『お墓の大問題』(小学館)など。

葬儀ビジネス研究所

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