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夫に買い物のしすぎだと怒られました。生活費を使い込み…落ち込んで眠れません。どうしたらやめられますか?

「お酒」「たばこ」「ギャンブル」以外にも、依存して沼から抜け出せなくなることはあります。脳神経内科専門医の山下あきこ先生に、依存の悩みについてお答えいただきました。

やめたいのにやめられない

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今回のお悩みは32歳の明世(あきよ)さん。ネットショッピング沼にハマり、生活費まで使い込んでしまい夫からひどく怒られたそうです。しょんぼりとした様子で、相談にいらっしゃいました。

「夫に買い物しすぎだと、ひどく怒られました。生活費を使い込んでしまって……いけないと頭ではわかっているんですけど、やめられない自分に落ち込んで、眠れない日も多いんです。それでつい夜ふかししてしまって、ずっと疲れがとれない感じがします」(明世さん)

買い物とはいったいどのような物を買っているのでしょう?

「服とか、バッグとか、化粧品をネットで買っています」(明世さん)

ネットショッピングは選んでいる瞬間が楽しく、クリックするだけで手軽に買えるのもリアルにお金を使った感覚が薄いため、ついついたくさん購入してしまいがち。

「仕事を辞めて時間ができたので、ついサイトを眺めてしまいます」(明世さん)

なぜ新しいものが欲しくなるのか?

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明世さんはフェミニンなファッションを上手に着こなす、可愛らしい女性です。3年前に結婚をし、生活も満たされているようですが、なぜそんなに物を買いたくなるのでしょうか?

「友人たちとランチに行ったら、新しい服を着ている人が多くて、私は古いのしか持っていないから恥ずかしいんです。メイクもみんな上手で私より若く見える気がします。私もきれいで若いって思われたいです」(明世さん)

どうやら友人関係の中に、何かがありそうです。あきこ先生が「友人の中で、特に気になる人はいますか?」と質問。すると……

「実は高校時代につきあっていた彼がいて、その彼と結婚している友人がランチによく来るんです。きれいだな、負けたくないなって思ってしまいます」(明世さん)

解決策は「依存行動の原因に気づくこと」

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過剰にネットショッピングしすぎる明世さんの行動は、人との比較や若さへのこだわりが隠れた原因のようです。さらに、掘り下げて聞いてみると、たったひとりの誰かのために、家族の生活費まで注ぎ込んでいたのです。

そんな明世さんに、あきこ先生が伝えた言葉は……

「彼女に負けたくないと言う気持ちがあって、買い物が増えていたんですね。でも、そのせいで夜更かしして肌荒れしたり、生活が苦しくなるなんて、もったいないと思います。明世さんはそのままでも十分きれいです。早く寝て睡眠を十分にとり、今の家族と過ごせる幸せを感じてみませんか? 買い物したい気持ちが減って、肌も髪も美しく魅力的に見えますよ」(あきこ先生)

仕事を辞めたことで自分の自信が揺らいでしまい、モノで取り繕うようになってしまった明世さん。そうした買い物行動が、実はくだらない競争心からくるものだったということに気づいてはっとしたようです。

買い物依存は永遠に満足することはない。

人は「幸福貯金」がなくなると「快楽」で借金をする

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明世さんの場合は、新しい服や化粧品を購入することでドーパミンが刺激され、快楽につながっていったようです。そもそもの元カレのパートナーに良いところを見せたいという気持ち、これは日常の本当の幸福に気づいていれば、そんな方向に意識が向かわないはず。

「積極的に幸福を感じようとするこころのあり方は『幸福貯金』につながり、安定するものです。しかし、寂しい、自信がない、誰かを恨んだり、批判している、そんな感覚に飲み込まれている人は、幸福を感じようとして快楽に手を出しやすくなります。

一方で、愛されていると感じ、自信があり、人に感謝して生きている人は、心が満たされているので、快楽を求める必要なんてないのです」(あきこ先生)

明世さんは婚活の末に現在の夫と出会い、結婚しています。本人の中では「妥協した」という部分もあったようで、そんな気持ちが元カレの妻をライバル視してしまう背景にあったのかもしれません。今目の前にある生活を心から感謝して、日々に喜びを見出すことで依存の沼から抜け出せる日がくると良いですね。

山下あきこ先生。

【答えてくれた人】

山下あきこ 

医学博士、内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医1974年佐賀県生まれ。1999年川崎医科大学卒業、福岡大学病院脳神経内科を経て、米フロリダ州メイヨークリニック留学。佐賀県如水会今村病院勤務。人々が健康づくりを楽しむ社会を目指し、2016年、(株)マインドフルヘルスを設立。アンチエイジング医学、脳科学、マインドフルネス、コーチングを取り入れたセミナー、企業研修、健康コンサルティング等を行う。著書に『やせる呼吸』(二見書房)、『こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる』(共栄書房)、『死ぬまで若々しく元気に生きるための賢い食べ方』(あさ出版)、『悪習慣の罠』(扶桑社)。

『「やめられない」を「やめる」本-脱・依存脳-』

『「やめられない」を「やめる」本 -脱・依存脳- 』
著/山下あきこ(脳神経内科専門医) 発行/小学館 定価/1,650円(税込)ページ数/192P 

お酒、タバコ、ギャンブル、SNS、ムダ使いといった、やめたいと思いつつも、なかなかやめられない悪習慣への依存行為・行動。この「やめられない悪習慣」を「ゾンビ習慣」と呼び、25年間にわたり、脳神経内科医として約6万人の患者と向き合ってきた著者が、その正体や習性ついてわかりやすく解説。脳の仕組みを利用して良い習慣を上書きする新メソッド「エモーショナルシフト」を活用することで、今度こそ、ゾンビ習慣から確実に脱却するためのヒントとアドバイスを行います。

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