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多部未華子さん「明日やろうはバカやろう、って言うけど…別にいいんじゃないかなって」自分らしい“感情”との付き合い方

日本に先駆け全米はじめ世界各国で公開され、世界興行収入がアニメーション映画史上歴代世界1位を突破した『インサイド・ヘッド2』。8月1日(木)から、ついに日本でも公開され、早速話題を呼んでいます。声優を務めた多部未華子さんに、映画の魅力や、さまざまな感情とうまく付き合っていく方法について伺いました。

家族で気を遣い合い、ギクシャクするのはどこも同じ

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頭の中の“感情たち”の世界を描き、第88回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した映画『インサイド・ヘッド』の続編となる本作。前作を見ていない人も楽しめる作品になっています。

主人公は、ティーンエイジャーになり、ちょっぴり大人になった少女ライリー(声:横溝菜帆さん)。高校入学という転機を迎えたライリーの頭の中に、ある日、大人の感情たちが現れます。その中心となるキャラクターが、多部さん演じる〈シンパイ〉です。

多部さんが声を担当した新キャラクターの〈シンパイ〉。物語のカギを握る、コミカルで個性的なキャラクターを見事に演じきっています。

将来起こるかもしれない最悪の未来を想像し、必要以上に備えてしまう〈シンパイ〉。あたふたと動き回り、次第に暴走していく役柄ですが……その個性的な声の表現にびっくり!

普段の多部さんのお声とはまったく異なりますね、と聞くと「そうですね。ご覧になった方から“多部未華子だとはわからなかった!”と感想をもらいました。〈シンパイ〉という個性豊かなキャラクターをつくり上げることができたのかな、とちょっとホッとしますね」と微笑む多部さん。

US本社のオーディションを経て作品に参加したそうですが、この感情豊かな声の表現を、どのように模索されたのでしょうか?

多部未華子さん(以下、敬称略)「〈シンパイ〉は、物語を掻き回すキャラクター。最初はオーディションで送った声を思い出して進めていったのですが、少し収録したタイミングで

“正義感が強く、時にせかせかとして落ち着きがない個性的なキャラクターを反映して、もう少し癖のある声で表現したほうがいいのでは?”

と監督と話し合って。試行錯誤した結果、今回の声の表現に至りました」

「シンパイな感情とか、誰かを羨んだりとか。私自身も経験してきているし、共感ばかりで。どの感情になった自分も自分らしさに繋がるんだ、っていうことを作品から教えてもらいました」(多部さん)

そんな〈シンパイ〉をはじめとして、少しずつ大人になっていくライリーの頭の中ではさまざまな感情たちが躍動します。“誰もがかつて通った道”として、共感できる描写がたくさん。

しかし多部さんは、ライリーだけでなくライリーの両親たちの感情にも共感したのだそう。

前作では11歳だったライリーも、成長して高校入学を控える年齢に。ある時、頭の中に「感情の嵐」が訪れます。

多部「ライリーがイラっとしたときに、親たちが“とうとう思春期が始まった!”と身構える感じが、ああ想像できるなあって(笑)。

私はまだ思春期の子どもを育てているわけではないのですが、親としても“きっとこんな時がくるんだな”と感情移入してしまいました。私の親も内心動揺していたのかな、とも想像したりして。

子どもが成長していくと、家族でも少し気を遣い合うようになると思うんです。そのギクシャクがおかしくて、どの家庭でもきっと同じなんだな、とほんわかしました」

「自覚はないけど、もしかしたら私も思春期には、イライラした感情を親にぶつけたりしてたのかな……」と多部さん。

使わないキャンドルを旅先に持っていく“シンパイ”ぶり

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多部さん演じる〈シンパイ〉は、常に先回りして悪いことが起きる可能性を考え、まだ起きていないことに備えようとします。生きていく上では大切な感情ですが、暴走するとやっかいなことに。多部さんは日々の暮らしの中で、〈シンパイ〉が前面に出てくるような瞬間はあるのでしょうか。

多部「旅行に行くときは“何かあったときのために、これも一応持っていくか”とついシンパイになって、荷物がすごく多くなるタイプです。たとえば、宿泊先の部屋の匂いが自分に合わなかったらどうしよう、と考えて、重たいアロマキャンドルを持っていったことも。結局、使わなかったんですけど(笑)。

暮らしの小さなあれこれには、ついいろいろとシンパイしてしまいますが、仕事や人生については、あまり先回りして考えるタイプではないですね」

この日は、演じた〈シンパイ〉とおそろいのオレンジで。

声優に加えてナレーションなど、声のお仕事も増えている多部さん。これからやってみたいお仕事などは?

多部「声のお仕事は、とても難しいけれどやりがいがあります。映像の仕事とはまったく別物ですね。まだまだ学び途中ですが、お話をいただけたら、一生懸命に取り組もうと思います」

と答えたあとで「あ、でもせっかくだからやりたい仕事を言おうかな! 口に出せば、叶うかもしれないから」と笑顔に。

多部「美術館の音声ガイドをやりたいです。子どもが生まれてからは、なかなか行けなくなってしまったけど、もともと美術館に行くのが大好きなんです。特にフェルメールが好きなんですが、他にもいろんな展示をめぐりながら、作品解説を聴くのがいつも楽しみで。いつか私も挑戦してみたいです!」

予定を詰め込みすぎた結果〈ダリィ〉が登場!

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本作で新たに登場する感情たち、左からハズカシ、シンパイ、イイナー、ダリィ。

大人ならではの複雑な感情がたくさん登場する本作ですが、多部さんの頭の中には、どんな感情が一番よく出てきますか?と聞くと、「……うーん、ダリィかな」との回答。

〈ダリィ〉(声:坂本真綾さん)は、退屈で無気力な感情ですが……?

多部「ダリィは常に私の中にいますね(笑)。私、ほんとは家でじっとしていたいタイプなのに、好奇心も強いので行きたいところが多すぎて、つい予定を詰め込んでしまって。あれもこれもと予定を入れた結果、“入れすぎたな……。やっぱり家にいたい”と面倒になっちゃうんです。結果、行ったら楽しいんですけど(笑)」

仕事にプライベートにと忙しい毎日を送る読者のみなさんにも、きっと共感できるエピソードではないでしょうか。

毎日の暮らしにも、面倒なことはたくさんあるもの。頭の中をダリィに占拠され、やる気がなくなってしまったら、どんなふうに切り替えるべき?

多部「どう切り替えるか、そうだな……。

たとえば“明日やろうはバカやろう”という言葉がありますよね。でも、私、それなら別に“バカ”でもいいや、って思うんです。本当に疲れてやる気がなくなってしまったときは、“明日できることは明日やろう”でいいし、やりたいと思ったときにやればいい」

毎日、普通に暮らすだけで大変すぎて……という筆者に、「もうほんと大変です!」と強く同意してくれた多部さん。

多部「“明日やろうはバカやろう”は、明日何が起きるかわからないから、後悔しないためにも今日やれることは明日に引き延ばすな、という意味。

たしかに、明日何が起きるかは誰にもわからない。でも、きっと明日もちゃんと“今日の続き”ができると信じて、今日はだるいからもうおしまい、明日頑張ろう、と思う日があってもいいんじゃない?と思うんですよね。

それに、こんなに猛暑日が続くなかで働いたり生活したりしているだけで、私たち、もう十分に頑張っていますよ!」

と、元気が湧いてくるような言葉をくれた多部さん。飾らず正直に答えてくださる様子に、インタビュアーも取材スタッフも、みな心を掴まれていました。

 

カラフルな映像世界が楽しく、そして深いメッセージに大人もきっと涙してしまう『インサイド・ヘッド2』。ぜひこの夏、映画館に足を運んでみてください。

 

撮影/玉井美世子


【作品情報】

『インサイド・ヘッド2』

この作品を観たらきっと、どんな感情もあなたの宝物になるはずーー。

頭の中の〈感情たちの世界〉を舞台にした、世界中の誰もが共感でき、深く感動できる物語。少女ライリーを子どもの頃から見守ってきた、ヨロコビやカナシミら頭の中の感情たち。ある日、ライリーの中にシンパイ率いる〈大人の感情〉たちが現れる。

2024年81日(木) 全国劇場公開

監督:ケルシー・マン 脚本:メグ・レフォヴ 製作:マーク・ニールセン

声優:大竹しのぶ 多部未華子 横溝菜帆 村上(マヂカルラブリー) 小清水亜美 小松由佳 落合弘治 浦山迅 花澤香菜 坂本真綾

日本版エンドソング:「プレゼント」Performed by SEKAI NO OWARI
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

塚田 智恵美
塚田 智恵美

ライター/編集者。ベネッセコーポレーション『進研ゼミ』の編集を経て独立。学習雑誌、児童書、教育コンテンツ、保護者向け記事などを中心に、取材・執筆・編集を行う。料理とお酒が好き。

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