革の寿命は5〜10年。お手入れ次第でそれ以上も
nullレザーバッグの寿命は使用頻度や状態によって変化しますが、毎日のように使った場合、一般的に5年〜10年が一つの目安。ただし、お手入れ次第で10年、20年と使い続けることも可能です。
「『土屋鞄製造所』では、レザーバッグは基本的に捨てるのではなく、補修しながら使い続けていただけたら、という想いで製品を作っています。使用している中でほつれや汚れが発生してしまった場合は、その製品のメーカーや街の修理店に持っていくと、対応してくれるケースもあります。なおメーカーによっては修理を受け付けていないので、事前にご確認ください。『土屋鞄製造所』でも直営店で弊社製品の修理を承っており、ファスナー交換・持ち手交換・金具交換などに対応。料金・修理期間はバッグの状態によります」(高橋さん)
また、使用頻度が少ない場合は、母から娘、娘から孫へと受け継がれるように、レザーバッグは何十年に渡って受け継がれることもあります。お気に入りのバッグの寿命を延ばすためは、週5回の使用から週2回にするなど、頻度を少なくするのも一つの方法です。
「連続して使用するよりも、複数のバッグを交互に使用した方が、革が長持ちします。あるお客様は晴れの日にレザーバッグを、雨の日にナイロンバッグを使用し、使い分けているという方もいらっしゃいました」(村松さん)
基本的は2〜3カ月に1回のケアでOK!寿命の延ばし方
null寿命を延ばすためには、正しいお手入れが大切です。レザーソムリエの村松さんに教えていただいた4ステップがこちら。各スプレーやクリームは3〜4年は使えるため、意外とコスパも◎です。
- ブラシをかけて、埃などの汚れを落とす。
- クリーニング用レザーソープをクロスに付けて、汚れを拭き取る。
- 革が乾いたら、オイルクリームを少量ずつ取り、素早く塗る。
- バッグ全体に、防水スプレーをかける(屋外で30cm以上離して噴射)。
「スキンケアで例えると、レザーソープはメイク落とし、オイルクリームは保湿の役割。頻繁にケアする必要はなく、レザーソープやオイルクリームは2〜3カ月に1度で大丈夫です。防水スプレーだけは2週間に1度の頻度でかけていただけると効果的です」(村松さん)
レザーソープやクリームを使う時のポイントは、「少量を、うすくのばすこと」。ベタッと一部分に付けてしまうと、それがシミの原因になることもあります。また、レザーソープは汚れが目立つ一部分だけ使いがちですが、バッグ全体に使うことが大切。皮脂汚れなど、見えない汚れも取ることができます。
夏は要注意!日焼け止めや汗・皮脂汚れが大敵
null基本的に、レザーバッグのお手入れは2〜3カ月に1回のケアで問題ないのですが、例外として汚れがついた時は即座にお手入れするのが大切。特に夏は日焼け止めでレザーバッグが白くなってしまったり、汗・皮脂汚れがレザーに染み込んでしまったり、汚れがつきやすい季節でもあるのです。日焼け止めは放っておくと白いまま残り落ちにくくなるので、ついてしまったその日に先に紹介した方法でお手入れしましょう。
「日焼け止めや皮脂汚れが気になる時には、その状況に応じてお手入れすることをおすすめします」(村松さん)
意外とバッグに付着しがちで汚れのもとになってしまう日焼け止め、夏場は特に気を付けたいものですね。
ランドセルの汚れは中性洗剤を薄めたもので落とす
null自分用のバッグだけでなく、汚れが気になるのが子どもの「ランドセル」。防水加工が施されている本革のランドセルは先にご紹介したお手入れは不要ですが、絵の具や墨など汚れてしまった時には水拭きもしくは中性洗剤を薄めたものですぐに落としましょう。
「それでも落ちない時には、防水加工のランドセルに使える『TSUCHIYA KABAN』の『皮革用クリーナー(1,650円)』を使うのもおすすめです。この強力なクレンザーは色落ちする可能性があるため、防水加工していないほかのレザーバッグでの使用は推奨できません」(村松さん)
レザーバッグの捨てるタイミング、捨て方は?
null長年使用し続けられるレザーバッグですが、補修ができないような状態になったら寿命です。廃棄せざるを得ない時には、
「極度のひび割れ、擦れや色落ち、変形など、ひどい損傷が目立つ時は手放すタイミングです」(高橋さん)
損傷は目立たないものの、結婚・出産といったライフステージの変化やキャリアチェンジで使わなくなるバッグもありますよね。そういったバッグは廃棄せず、フリマアプリやリユースショップで販売したり、リサイクルセンターなどに寄付したり、新しく別の人に使ってもらうというサステナブルな方法もあります。
「弊社製品限定にはなりますが、『TSUCHIYA KABAN』では2024年7月と10月に引き取りキャンペーンを実施します。顧客さまが使わなくなった鞄や革小物を引き取り、クリーニングや保革、補色といったメンテナンスなどを施し、味のある一点物の貴重な製品として売り出します」(高橋さん)
卒業後のランドセルはリメイクで、新たな命を吹き込む
null基本的には6年で役割を終える子どものランドセル。しかし、ランドセルは子どもが使うことを想定して作られているためとても丈夫で、卒業後に廃棄してしまうのはもったいないことです。ランドセルは先に紹介した土屋鞄をはじめ、全国のさまざまな工房がリメイクサービスを行なっています。
例えば兵庫県豊岡市『コニー株式会社』の『恩返し工房 REBACK』もその一つ。『コニー株式会社』は老舗のバッグメーカーで、ランドセルを日常生活で大人も使えるようなショルダーバッグやリュックにリメイクできるのが特徴です。
「『恩返し工房REBACK』は豊岡鞄鞄認定企業の『コニー株式会社』が運営しています。1975年創業の鞄OEM会社として幅広いモノづくりの技術と経験を活かし、2022年10月にランドセルリメイク事業部を立ち上げました。鞄作りのプロフェッショナルがリメイク作業にあたりますので、安心してお任せいただけます」(東さん)
例えばリメイクしたショルダーバッグは、ランドセルを買ってくれたおじいちゃん・おばあちゃんへの恩返しとしてプレゼントするという方法も。ランドセルはどのメーカーでもOKです。
「ランドセルを購入してくれた祖父母、両親に恩返しとして6年間使用したランドセルを特別な思い出に作り替え、感謝の気持ちを伝えるお手伝いをします。こだわっているのは、6年間使用したランドセルの素材を可能な限り生かすこと。小さな傷やシミなど使い込んだ風合いを生かし、6年間の思い出を感じさせる商品になっております」(東さん)
ランドセルリメイクの目安の推奨年数は、新品購入後(使用開始後)およそ10年。つまり、小学1年生から使っていた場合は、卒業後4年頃までにリメイクすることがおすすめです。
「ランドセルのコンディションによっても変動します。使用開始10年が経過していたとしても、リメイク可能なものもありますのでご相談ください」(東さん)
リメイクが難しいランドセルは、革が大きく損傷しているもの。特に「ひび割れ」が発生しているものは縫製や裁断に影響がでるため、リメイクができない場合もあります。
「人工皮革は加水分解により表面のベタツキ、ひび割れなどが発生します。また天然皮革であっても硬化してひび割れなどでリメイク不可能なものもあります。アイテムによっては可能な場合もありますのでご相談ください」(東さん)
リメイクの流れは注文手続き後、まずランドセルを『恩返し工房 REBACK』へと発送。もし、ランドセルがリメイクできないと判断された場合は返却されます。工房に直接持ち込み、持っているランドセルがリメイクできるかどうか、相談することも可能(事前予約制)。リメイクが決定したら、約3~6カ月後に完成品が指定の場所へ届く流れです。ランドセルをリメイクしたバッグは、通常のレザーバッグと同様のお手入れをすることで、より長く使えます。
「リメイク後の製品に関しては直射日光を避け、雨など水滴はふき取って、風通しの良い場所で保管する事が望まれます」(東さん)
実際にリメイクした人たちからは、「素敵に仕上がっていて、家族そろって大喜びしました。実際に作業していただいた職人さんにも感謝です」「思い出のランドセルを素敵なボディバッグに作り替えていただきありがとうございました。息子は大変喜んでおります」など、感動の声が。思い出のランドセルを、小学校卒業後も大切に使える喜びのコメントが『恩返し工房 REBACK』に届いています。
お手入れや使用頻度に気をつけることで、より長く、使うことができるレザーバッグ。自分が使わなくなったバッグは捨てずに循環させれば、限られた資源の有効活用にも繋がります。まずはレザーソムリエの村松さんが教えてくれた方法を参考に、自分が持っているレザーバッグをお手入れしてみてくださいね。
【取材協力】
土屋鞄製造所、恩返し工房 REBACK
【教えてくれた人】
『TSUCHIYA KABAN 』日本橋店スタッフ
村松姫奈さん
株式会社土屋鞄製造所 コミュニケーション本部 店舗統括部。2022年に新卒で入社後、「TSUCHIYA KABAN」日本橋店にて接客やVMD・顧客管理などを担当。レザーソムリエ資格保有。
『土屋鞄製造所』ランドセルPR担当
高橋夏生さん
同社ランドセル事業推進本部 販促企画課PR担当。土屋鞄のものづくりに共感し2020年に入社後、「時を超えて愛され価値をつくる」のブランドミッションのもと、ランドセルブランドの広報PR業務に従事。レザーソムリエ資格保有。
『コニー株式会社』OEM事業部、恩返し工房REBACK事業部
東 誠さん
生地屋のプレイングマネージャーを経て得意先であった同社に2020年に入社。OEM事業部の営業業務に従事。2022年10月より新事業としてランドセルリメイク「恩返し工房REBACK」担当を兼務。
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