2038年には3軒に1軒が空き家になる!?
nullいつまでも健在だと思っていた親が急に亡くなる。――あまり想像したくありませんが、誰にも起こりうることです。
悲しみにくれる間もなく降りかかるのが、物が溢れかえった状態の実家をどうするのか、の問題。しかし亡くなった親の意向もわからず、兄弟で意見もまとまらず、とりあえず一周忌が終わったら、三周忌が終わったら、子どもがもう少し大きくなったら……とずるずる先延ばしにして、気づいたら10年。
その間、固定資産税や庭の剪定などの管理費は、発生し続けています。やらなければいけないことに手をつけられない自分に、後ろめたい気持ちも増していく一方です。
結局すべて処分し、売ることに。しかし遺品整理や片付けだけで、気の遠くなるような作業です。業者に頼もうと見積もりを出してもらったら100万単位に……。
このように家族の心がなかなか決まらず、放置されて空き家になってしまう例が全国的に増加していると和田さんは言います。
「野村総合研究所が2022年に発表したレポートでは、2038年の国内の空き家総数は2,300万戸を超える可能性が高いとシミュレーションされています。
なぜ今、空き家が増え続けているのか。理由の一つは、日本人の“新築信仰”がいまだ根強く、人口減少にもかかわらず新築物件の数が増え続けていることが影響していると私は思います。特に今は団塊世代の相続が進んでいるタイミング。団塊世代の子どもも別に家を持っているケースが多いので、親の世代が建てた家にはあまり戻りません。これが空き家が急速に増加している理由です。
もう一つ、実は一番多く見られる放置の理由は『手をつけるのが面倒だから』。兄弟や親戚間で意向がまとまらず、何かすると揉め事になってしまうから手をつけられないケースもあります」(以下「」内、和田さん)
こうした理由から約10年後には、3軒に1軒が空き家という時代がやってくるというのです。
放置した結果2,000万円の出費という例も…「一刻も早く動き出すべき」
nullしかし、そもそも、なぜ空き家を放置してはいけないのでしょうか。
和田さんによると、主に金銭面と治安面で放置のデメリットがあるとか。
「まずは金銭面について。誰も住んでいなくても、物件維持にはお金がかかります。月々だとさほど気にならなくても、累積すると500万、1,000万といった金額に。10年以上放置した結果、トータル2,000万円かかったという例も珍しくないのです。
さらに家は住む人がいないと、どんどん傷んでいきます。雑草が生え樹枝が伸び切るなど景観悪化にもつながり、イタチやハクビシンなどの獣害も。治安悪化から近隣住民にも迷惑をかけることになります」
先延ばしにすればするほどお金がかかるし、周りの人たちに迷惑もかける。だからこそ、実家については「相続したらなるべく早くに動き出したほうがいい」と和田さん。
「相続した日が一番家がきれいで、資産価値も高いからです。
どれほど決断を先延ばしにしようが、結局いつかは実家を売ることになります。処分を終えた家の所有者さんは大体晴れやかな表情をしていて、必ずといっていいほど“もっと早く手をつければよかった”と言います。ただ放置しておくだけでは一生、心の整理はつかない。だから一刻も早く動き出す必要があるのです」
とはいえ、親を亡くしてすぐのタイミングでは心も落ち着かず、なかなか動き出せないでしょう。だからこそ親が元気なうちに、実家が空き家になる日に向けての心構えや準備を始めるのが良いと語る和田さん。
では親が健在なうちから、どのような準備をしておくべきなのか? 後編でお伺いします。
取材・文/塚田智恵美
【取材協力】
和田貴充
空き家活用株式会社 代表取締役CEO。
1976年生まれ。24歳で不動産業界へ飛び込み、2015年には空き家活用株式会社を設立。自社で空き家調査を行い16万件のデータを収集。そのノウハウを活かし、自治体サポートサービスを開始。自治体が自ら空き家を調査し閲覧・管理ができるアプリケーション「アキカツ調査クラウド」を提供。YouTube「ええやん!空き家やんちゃんねる」では空き家情報を発信し利活用希望者とマッチングを実現している。空き家の相談専門カウンター「アキカツカウンター」も運営。
【参考】
『今すぐ、実家を売りなさいー空き家2000万問題の衝撃』
著/和田貴充
(光文社)
ライター/編集者。ベネッセコーポレーション『進研ゼミ』の編集を経て独立。学習雑誌、児童書、教育コンテンツ、保護者向け記事などを中心に、取材・執筆・編集を行う。料理とお酒が好き。