後編のテーマは「理想の中古住宅と出会うには」。数ある物件の中から自分の希望を満たす住まいに巡り合うためには、入念な“下準備”が必要だといいます。
住まいを購入することが「ゴール」ではない
nullカウカモは一般的な不動産検索サイトとは異なり、物件ごとに丁寧な取材をしたうえで、物件情報を事細かに伝えている物件情報サイトです。物件ページを見終えると、まるで実際に内見をしたかのような満足感が。このような記事にしている理由について、村島さんは次のように話します。
「住まいを選ぶうえでは、築年数や広さなども重視すべき要素ですが、物件の中身も非常に重要です。中古物件は、一点もの。数ある物件の中から『理想』の住まいと出会っていただくため、できる限り詳細に物件の情報をお伝えしたいと考えています。
物件のメリットだけでなく、見方によってはデメリットとなり得る部分も包み隠さず書くようにしています」(以下「」内、村島さん)
カウカモのもう1つの特徴が、周辺環境の情報も豊富なこと。「駅から何分」「スーパーまで何分」といった情報だけでなく、近くの商店街や公園の雰囲気、注目のスポットなどが物件ページで紹介されています。
「住まいを購入することが『ゴール』ではないんですよね。住まいを購入した後に、そこでの暮らしがスタートします。私たちは、お客様がどういった暮らしがしたいのかを考えて物件を紹介させていただいています。『暮らす』にあたって、周辺環境というのは非常に重要な要素になるのではないでしょうか」
自分たちの希望を「棚卸し」して、優先順位をつけておく
nullツクルバでは、物件探しに悩む人にカウンセリングやセミナーといったサービスも提供していますが、そこでも最も重視しているのは「住んだ後にどういう暮らしがしたいか」に目を向けてもらうことだといいます。
「いきなり間取りや駅などの“条件”から決めるのではなく、“どんな暮らしをしたいか”を、まずは話し合ってみてください。今のお住まいで改善したいところなどもヒントになると思います。
希望を膨らませたあと、叶えるために必要な要素を洗い出して、条件に落とし込んでいくイメージです。
とはいえ、すべての希望を満たす物件にはなかなか出会えません。立地は良いのに予算オーバー……なんてこともあるでしょうから、希望を棚卸ししていった後に『優先順位』をつけてみてください。
たとえば『予算4,000万円は譲れない』『駅徒歩5分はマスト』といったことを決めていき、市場の中に条件の合う物件があるのか擦り合わせていく。こういった“下準備”に時間をかけることをおすすめしています」
まずは、自分たちのニーズと向き合うことが大切になってくるということですね。希望を棚卸ししていく作業に時間をかける理由は、中古物件特有の事情にもあるようです。
「内見した後にゆっくり検討できればいいのですが、その間に他の方が購入を決めてしまうこともあります。中古物件は一点ものなので、新築マンションのように『この部屋がダメなら別の部屋』というわけにもいきません。内見する段階で自分の希望を明確にしておいた方が、スムーズに意思決定をできるのです」
希望に合致する物件がいつ売りに出されるのかわからないのも、中古物件の特徴の1つ。「理想」に出会う前に、まずは自分たちの理想を明らかにしておく必要があるのですね。
そして忘れてはならないのが、資金計画を立てておくということ。希望に合致していたとしても、いざ購入して「返済が辛い……」といったことにならないよう、購入した後のことを考え、自己資金はいくらあるのか、いくら借り入れるのかを検討しておくことも大切になってくるでしょう。
「『借りられる金額』と『返していける金額』は異なります。同じ年収であっても、家族の趣味もお子さまの教育にかける費用も異なるからです。どれくらいの金利で、いくら借り入れることができるか明確にするため、事前に住宅ローンの仮審査を受けておくのもおすすめです」
資金計画については最終的に自分たちで決めなければなりませんが、判断に悩むようであればファイナンシャルプランナーや金融機関に相談してみましょう。ツクルバでも、個別相談を受け付けているそうです。
【まとめ 理想の中古物件を手にいれるために準備しておくこと】
1:自分たちが「叶えたい暮らし」の要素を洗い出してみる
2:洗い出した要素に優先順位をつけておく
3:資金計画を立てておく(事前に住宅ローンの仮審査を受けるという方法も)
必ずしも「終の住処」になるわけではない
nullひと昔前まで、マイホームといえば「終の住処」というイメージが強いものでしたが、村島さんによれば、最近では住み替えを前提として住宅を購入される方も増えているといいます。
「終の住処という前提で住まいを購入するとなると、将来の家族構成や収入・支出に加え、老後のことまで想定しなければなりません。
でも、ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、住み替える可能性も視野に入れておくと、直近の自分たちの叶えたい暮らしを元に、条件が絞りやすくなったり、優先順位をつけやすくなります。
例えば、将来家族が増えることを見越して、広めの住まいを希望する場合、予算内で条件に合う物件がなければ、エリアや築年数などを広げて探すケースがほとんどです。
でも、家族が増えたタイミングで住み替えることを視野に入れると、今希望するエリアでの住まい探しも叶えることができるかもしれません。
住み替えを前提とする場合は『リセールできるか(売れる物件なのか)』が重要な要素になってきます。希望の棚卸しをする中で、将来的に住み替える可能性があるのであれば、価値が落ちにくい需要の高い立地や間取りを選んでおくといったこともできるでしょう」
中古マンションを購入してリノベーション!実例をご紹介
nullカウカモで一点ものの住まいに出会い、リノベーションしたファミリーの事例をご紹介。理想だった「アイランドキッチン」「ワークスペース」「土間」のすべてを実現されたそうです。
<ご家族のプロフィール>
名前:Tさん(ご主人) / Hさん(奥さま) / Yくん
年齢:30代
職業: 会社員
趣味:自転車、コーヒー / 断捨離、花瓶集め
結婚して子どもができたのを機に、家を探し始めたというご家族。購入したエリアは、二人の職場に行きやすいこと、そして美術館や広い公園があって子育てにも良さそう、ということが決め手に。またターミナル駅や空港への交通の便がいいことも、今後「リセール」する際の価値を考えて大切にされたそう。
最初はリノベーション済み物件を内見していたけれど「アイランドキッチン」や「ワークスペース」など、自分たちの理想を叶えようと思ったら、「中古住宅購入+フルリノベーション」という選択になったとのこと。
築45年のこのマンションに決めた理由は、
・角部屋で周りに高い建物もなく、日当たりも風通しもいいこと。
・共用部は古いけれど、オートロック、24時間ゴミだしができること。
だそう。16軒ほど内見した中で、他の物件はどこかしら足りない部分があったそうですが「この物件は全然不満がなかったんです」と。
リノベーションでこだわったポイントは「見せる収納と隠す収納のメリハリをつけたこと」と教えてくれました。妻のHさんは断捨離好きで「なるべく物を出しておきたくない」派。でも夫のTさんは 「見せる収納派」なので、二人の折り合いがつくよう、相談しながら進めたそう。
例えばキッチン。「乱雑になりがちな手元は腰の高さまである壁でしっかり隠すけれど、壁に備え付けの収納棚でお皿は見せる、みたいな感じです」と。たしかに隠す部分と見せる部分のバランスが素敵です。
こだわったキッチンに加えて「ワークスペースや自転車などを置いている土間も、造ってよかったです」と夫のTさん。
購入した家をフルリノベーションをしたことで「家を自分たちで造った」という意識が芽生え、家に置くものひとつひとつを丁寧に選ぶようになった、というHさん。
これからは子どもの成長に合わせて、インテリアを買ったり追加リノベで間取りを変えたりと「家を更新していくことが楽しみです」と話してくれました。
村島さんもおっしゃっているように、理想の中古住宅と出会うには、まずは自分たちの希望の棚卸しをしておくこと。そして購入した家を「終の住処」と決めつけず、自分たちの暮らし方に合わせて家を更新していくくらいのつもりで物件選びに臨むことも、大切なようです。
取材・文/亀梨奈美