現在、展覧会のために来日している山崎さん。家族と暮らすハワイ・モロカイ島での生活は、とてもナチュラルなもので、食べるものから着る服、過ごす時間などはまったく日本と異なる、ゆっくりとしたものだそう。自然の中で過ごす豊かな時間が、インスタグラムにあげられた写真からも伝わります。
そんな山崎さんが、「お気に入り」として紹介してくれたのは『ロレックス』の時計とダイヤモンドの指輪でした。
自分に繋がる家族の思い出
null「『ロレックス』は私が高校生の時に、今は亡き父から譲り受けたものです。父が海外で若い頃に買ったもので、男物の時計で少し大きいのですが、それがカッコよかった。振れば動くのですが、しばらくつけていなかったから振らなくちゃ(笑)。
普段のハワイの生活ではつけていません。でも、来日するときは必ずつけていますね。
指輪は夫の母から、遺品として譲り受けました。84歳で亡くなったんですが、わざわざこの指輪を私に譲ると言ってくれたんです。もともと義理母の祖母の姉のもので、それを彼女が譲り受けて、私のもとにやってきた。この指輪も100年くらいの歴史を背負っているんじゃないかな。義母が毎日つけていた指輪だったので、なおさら嬉しかったです。
デザインは昔のものですが、これらは私にとって宝物やお守り的な存在。つけていると父や義母から、見守られているような気がします。
ハワイにはohana(家族)を大事にする文化があります。私はハワイに住んで20年近いのですが、島の長老に口伝でいろいろなことを教えてもらいました。娘たちをハワイの現地小学校に通わせたとき、授業で家系図を暗記して発表するというものがあったんです。それだけ、家族を大事にしているということ。
今、自分が存在しているのは、先人たちの存在のおかげ。そういう謙虚な気持ちっていうか。亡くなった父も、義理の母も自分をつくってくれた人たち。その思いを時計や指輪を通して感じるんです」(以下「」内、山崎さん)
ハワイでの子育て
nullハワイのモロカイ島で子育てをしてきた山崎さん。家族から遠く離れた場所での育児は、気軽に親兄弟に子どもの面倒を見てもらうことができないので、最初は大変だったそうです。
「どうやって“お母さん”になればいいのかもわからない、子どもをどう育てようかと考えたとき、私はお年寄りの集まるところに子どもを連れて行っていました。ハワイには毎週ウクレレやフラを踊ったりする場所があるんです。そこでお年寄りとコミュニケーションをとって、自然と子どもたちも親しくなっていきました。島がひとつの家族みたいなんですよ。子どもたちにはフラも覚えさせました」
核家族での子育てに危機感を覚え、ハワイのお年寄りたちに飛び込んだことで、娘さんたちは周囲の愛情を受けてすくすくと成長したそうです。
壁をつくらない
nullとはいえコミュニケーション能力が高くないと、なかなか仲間に入れないものですが、山崎さんは「壁をつくらないこと」を心がけているといいます。
「私は常に壁をつくらない、ジャッジをしない、偏見をもたないようにしています。どんなに悪評の高い人でも、実際にかかわってみないとわからない部分もありますよね」
壁をつくらないことは、山崎さんの絵画の世界に通じるものがあります。山崎さんの絵画には、なんとも言えない光のグラデーションで空と海、水平線が描かれています。そこには区切りはあるようで、ありません。
「自分が理解している世界があって、それを描いているから。私の世界の見方で、そういう世界を描いている。水平線って、線は現実にはないんですよ。
線があるということは、別々であるということ。あなたと私は別々。でも本当は全部同じ材料があるだけ。同じ原子と電子があるだけなんです 」
山崎さんの絵画の世界は現在、東京・表参道『Spiral』の展覧会で観られます。気になった人は、足を運んでみて。
山崎美弥子展「DAWN−kind of blue YAMAZAKI MIYAKO with /360° 2023」
2023年9月15日~10月1日まで、東京・青山『Spiral』(東京都港区南青山5-6-23)にて開催中。絵画作品に加え、同じテーマを元に総勢9組の作家やクリエイターとのインスタレーションも展示。無料。11:00~20:00
https://www.spiral.co.jp/topics/spiral-garden/dawn-kind-of-blue