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猫沢エミさん「猫を飼ったら整えるべき3つ」は、信頼できる獣医・猫貯金・ペット保険

現在、2匹の愛猫とパートナーとともにフランスで暮らしている、ミュージシャンの猫沢エミさん。2021年に亡くなったイオちゃんの闘病と、揺れ動く心情を綴った『イオビエ』を上梓。前編・後編に分けてお話をうかがいました。後編は、猫沢さんの体験から得た、猫が病気になる前にやっておきたいことを教えてもらいました。

前編「猫沢エミさん“愛猫の死”を経てたどり着いたポジティブな心の残し方」はこちら

猫とともに最期まで幸せな時間を過ごすため、治療や費用の事前対策は万全に!

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ミュージシャン、文筆家、生活料理人、フランス語講師などいろんな顔を持つ猫沢エミさん。2022年にフランスに移住し、愛猫2匹(ピガピンジェリくん&ユピテルくん)とパートナーとともに日々を送っています。猫沢さんのインスタグラムから流れてくる写真と文章は、心に響くものばかり。

新著『イオビエ』の主役であるイオちゃんは、2019年8月に猫沢さんと出会い、2021年3月に生涯を閉じました。猫沢家に来たときはガリガリでボロボロだったイオちゃんですが、最期は猫沢さんと猫沢組の2匹に見守られて天国タクシーに乗りました。今ごろは「幸せな日々だった」とハワイで暮らしているかもしれません。

猫を飼うということは私たち飼い主に幸せをもたらしますし、私たちもできるかぎりの愛を猫に注ぎたい。けれど、もし長く生きられる望みのない病気や怪我をしてしまったとき、現実的な問題で思うような選択ができなくなることもあります。

「猫を飼い、元気なうちにやっておいてほしいことは、信頼できる主治医を見つけること、猫のために少しずつ貯金をしておくこと、ペット保険に入っておくこと。これがあるだけでかなり心強いです」(「」内、猫沢さん)

さっそく詳しくお話をうかがいます。

病気になった時、一緒に闘ってくれる信頼できる主治医を見つけておく

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イオちゃんの病気と闘おうと思った時、猫沢さんが心がけたことはありますか?

猫沢さん(以下、敬称略):まずはすべての情報をシャットアウトしました。たとえば、こんなサプリがいいとかこの治療法が効果的とか、そういう情報を入れてしまうと、先生が治療方針を立ててもそれがブレてしまうんです。藁をもすがる気持ちで調べてしまう気持ちはわかるのですが、やっぱりその子のことをいちばんわかっている主治医がベストなんですよね。

そうなってくると、主治医選びはとても重要ですね。

猫沢:とても大切で、それは妥協してはいけないところ。できれば病気になる前から信頼できる先生をとことん探して、いい環境を作っておくことをぜひやっておいてほしい。

診てもらった先生がちょっと信用できないな、別の先生に診てほしいなと思っても、闘病の渦中に入ってしまうとそこにエネルギーを使っている時間はないんですよ。もし猫が苦しい状況になった時も、この先生と一緒なら立ち向かえる!と全幅の信頼を寄せることができる先生は強い味方になってくれます。

健康診断に行ってみたり、家からちょっと離れていても気になる先生がいるなら一度診てもらうとか。先生とその子の対話の仕方を見ると、相性もわかります。一度その先生にお願いしちゃったから代えるのは悪いな……とか日本ではありがちですが、そんな遠慮はいらないです。

病気が発覚してから探すのは大変だと思いますが、そうなった時にいい先生の基準はありますか?

『イオビエ』より

猫沢:いい主治医かどうかを見極めるひとつの基準としては、自分の手に負えない病気だとわかった時に、潔く他の先生に渡してくれること。もっと生きる可能性がある道を探せる専門医を、スッと紹介してくれる先生がいいです。あと、セカンドオピニオン、サードオピニオンを取りたいと伝えた時に「すぐに取ってください」と言ってくれる先生。

「私の意見が信じられないんですか?」と、態度を変えたりする先生は止めたほうがいい。進行の速い病気の場合、そんなところに費やす時間がもったいないですから。

猫沢さんはサードオピニオンまで取ったんですよね?

猫沢:そうですね。病気がわかったらセカンドオピニオンは取ってほしい。あと、これは私と主治医の両方の意見なのですが、できたらサードオピニオンまで取るのがいいです。ふたつよりも3つあることで、ひとつの病気に対しての意見が立体的になりグローバルな視点が生まれてくるため、納得のいく選択ができると思います。

お金がなくて納得のいく治療ができないのは辛いこと。いざという時のための準備を

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サードオピニオンまで取り、その後の治療費も含めるとかなり高額になったのでは?

猫沢:イオちゃんは13歳と高齢なこともあり、保険が利きませんでした。幸いなことに少し貯金があったため、いけるなと。お金というのは、年をとってくると自分のためではなく、本当に必要なこういう時のために持っておかないといけないなとしみじみ思いますね。

猫を飼う時には万が一のことを考えて、猫口座を作って貯金も始められたらベストですね。月に1,000円でもチリツモだから。

ペット保険も入っておいたほうがよさそうですね。

猫沢:入っておいたほうがいいです。いろんなペット保険がありますから、補償内容をよく読んで吟味してください。月980円で通院・手術・入院をカバーと書いてあっても、ひとつの疾病に対して3回までしか通院を保障していないとか、条件はそれぞれ。毎日通院しなければならないような病気だと太刀打ちできませんよね。

大きな病気になったら出費を覚悟しなければなりませんね。

猫沢:お金がなくて治療を選べないことは、すごく辛いことじゃないですか。先代猫のピキの時に本当にお金がなく、しかも保険にも入っていなくて、でも治療をしないということはできなかった。カードで借金をしまくって、ピキが亡くなったあとには悲しみと借金だけが残りました。

イオちゃんの場合は費用周りのことが整っていたから、亡くなった後はお金を気にすることなく、いなくなったことだけを純粋に悲しむことができたんです。それって、悲しいけれど、幸せなことだなと思います。

ペットは家族の一員であるという認識が世の中の当たり前になるように

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イオちゃんの闘病期は、どんな看病をしていたのですか?

猫沢:私はフリーランスだったので、イオのガンの闘病期は、できるかぎり私が家にいて看ていました。

大変だったのは保護したばかりの頃。母の看護の最終期だったため、日中病院にいる時は友達やシッターさんにイオちゃんを頼み、17時くらいに帰ってきて、夜は私が看ていました。20時からにゃんフラ(フランス語講座)のリモートレッスンを行い、夜間吐くことが多かったイオを見守りつつ2〜3時間寝て、そして朝には母の病院に行くというハードな状況でした。

これを会社勤めの方がひとりでできるのかと考えると……難しいですよね。また、そろそろ危ないなという時、本当は病院に連れて行ってあげたいけれど会社に行かなければならなくて……という状況でも対応してくれたり、もうすぐ逝ってしまいそうな末期の子だけを専門に看てくれるシッターさんが、もしかするとこれから必要になってくるかもしれません。

動物看護師などの資格を持っていて知識があり、なにかあった時に対処ができたりとか。そういうネットワークがあるといいなと思います。

難しいところですよね。ペットを飼っている人からしてみれば当たり前に家族だけれど、なかなか理解されにくい部分が大きくて。

猫沢:動物というのはただのペットではなくて家族なんだということを、もっと社会の細かな部分にまで行き届くよう声高に広めていきたいですね。実際に活動している方もたくさんいて、どんどん広まってきている感じがします。けれど、飼ったことがある人と飼ったことのない人の温度差はどうしても生まれてしまう。それをどう打破していくか。もうちょっと考えていかなければならないですね。

猫(ペット)を飼うということは命を預かるということ。生きている間も亡くなってからも、必要なことを整えるのは飼い主の絶対的な役割です。そこから生まれるお互いの幸せは、きっとかけがえのないものになるに違いありません。

 

取材・文/斉藤裕子 撮影/浦田 拓


猫沢エミさん

ねこざわえみ/ミュージシャン、文筆家、映画解説者、生活料理人。2002〜2006年、一度目のパリ在住。
2007年より10年間、フランス文化誌『Bonzour Japon』の編集長を務める。超実践型フランス語教室《にゃんフラ》主宰。著書に『ねこしき』(TAC出版)、『猫と生きる。』『パリ季記』(ともに扶桑社)など多数。2022年2月より愛猫を引き連れ、二度目のパリ在住。
Instagram:@necozawaemi 

『イオビエ 〜イオがくれた幸せへの切符〜』

猫沢エミ著 TAC出版 1,980円(税込)

昨年大ヒットした前作『ねこしき』の著者・猫沢エミ氏による、待望の最新刊!
本書では、2019年に路上で保護した猫のイオちゃんとの出会いからお別れまでの1年半の物語を、イオちゃんが語る小説と、著者自身のSNSの日記を交えて綴ります。猫沢家の一員となったイオちゃんは、餓死寸前から奇跡の復活を遂げ、第二の豊かな猫生を送りましたが、急性の扁平上皮癌が発覚。1か月半の闘病の末、2021年3月にこの世を去りました。イオちゃんが天国へ旅立つまでの軌跡は、猫沢氏のSNSを通じて発信され、国内外問わず大きな感動を呼びました。
心温まる一人と一匹の愛の物語を、ぜひお読みください。
※前作『ねこしき』でも大好評だった猫沢家のレシピも多数収録しています。

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