とはいえ、仕事に家事に子どものケアに……と、常に複数のタスクを抱える生活を送っているときには、読書の時間を持つことが難しいときもありますよね。
それなら、“すきま時間”を使った短時間読書がおすすめ。
「忙しいからこそ短時間の読書に意味がある」と語るのは『明日の自分が確実に変わる 10分読書』(集英社)の著者である国語講師の吉田裕子さん。
今回は、読書の達人である吉田さんに忙しい女性が短時間の読書を楽しむコツや、読書習慣をつける方法についてうかがいました!
今こそ見つめ直したい「読書」の効能とは?
null―『kufura』の読者は育児中の女性が多く、読書をするためのまとまった時間を確保するのが難しい方も多いと思います。私自身、子育てで忙しいときには、インターネットでの情報収集ですませてしまうこともあるのですが、読書ならではのメリットはありますか?
吉田裕子さん(以下、吉田):限られた時間の中で、子どものケア、家事、仕事……など、やることがたくさんあるときは、息がつまってしまうこともありますよね。そんなときに、“違う世界に入り込むことができる”という点で、おすすめなのが読書です。
もちろん、映像やゲームを通じても違う世界に入り込むことができますが、本は自分の想像力を使って自分で自分を楽しくさせることのできる娯楽です。
自分のペースでどんどん読み進めることができる一方、“
本を読んでいる時間自体が短くても、そのときの“気づき”
―インターネットでの情報収集と読書(電子書籍含む)は、いずれも“文字を読む”という共通点がありますが、どんな点が異なりますか?
吉田:インターネットのニュースやSNSからの情報収集は、自分の興味がある分野の知識を深めるためには適しているのですが、どうしても情報の偏りが生じやすくなってしまいます。
特に今は不安になるニュースが多く、ネットで次々と情報を追いかけているうちに心が疲れてしまうこともあるのではないでしょうか。
―確かに。しかも、不安なときにインターネットを使うと不安を増長する情報ばかり読んでしまって、泥沼にハマることがよくあります。寝る前にコロナウイルスのニュースを読むと寝つきが悪くなったり……。
吉田:そういうときには、いったん情報の海から距離を置いて、本の世界に入ってみると、心が落ち着くこともあるかもしれません。
例えば、自分の心にじっくりとしみこむような物語や、胸のあたたまるエッセイなんかに触れてみると、長期にわたっていい影響を与えてくれることもあると思います。
すきま時間こそ読書が有効活用できる理由とは
null―読書をしたいけれど、家事や育児に追われてしまってなかなか時間がないという方も多いようです。忙しいときに読んでもなかなか頭に入ってこないということはありませんか?
吉田:むしろその逆で、活動的に動いているからこそいろんな情報を欲していて、必要としている情報がスッと入ってくる、というケースのほうが多いと思います。
職場でも家庭でもバタバタと忙しい日々を送っているかたは、
そういうときは情報に貪欲になっているので、いろんなところにアンテナが張り巡らされていて、情報の“吸収スイッチ”が入りやすい状態になっているのではないでしょうか。
―確かに! 生活をまわしていくためには、いろんな情報が必要なので、おのずと興味の幅が広がっているような気がします。
吉田:忙しいかたが多いと思いますが、読書の時間をまとまってとることができなくても、細切れでも楽しみやすいのが本のいいところです。今は、10分ずつでも楽しく読み進められるような本がたくさんありますから。
家事と読書ってちょっと似ていて、忙しいときほど効率的に進められることもあると思います。
短時間でも楽しめる本のジャンルは?
null―それでは、短時間でも読みやすい本は、どんなジャンルがありますか?
吉田:一口に読書と言っても、本の種類はさまざまですよね。ぎっしりと字の詰まった長編小説があれば、写真やイラストを多用しているフォトブックのような本もあります。
例えば、すきま時間で読みやすい本は以下のようなジャンルです。
・ビジネス書 ・自己啓発本 ・女性向けの美容本 ・フォトエッセイ ・生活実用書 ・大人向けの図鑑 ・雑誌…etc
読書習慣がない場合は、1つのトピックが4~20ページくらいにまとめられている本を選ぶと、移動時間や自宅での空き時間を使って読み進めやすいですよ。
著名な文学作品や、自分のためになる本を選ばなければ……などと気負ったりせず、今の自分のライフスタイルの中に心地よく溶け込む本がいいですね。
書店や図書館に足を運んでみたら、いろんなコーナーを回って、気になった本を手に取ることで、自分の価値観を広げてくれるような本との偶然の出会いがあると思います。
楽しく読書を習慣化!「芋づる式読書」のコツとは?
null―1冊の本を読み終えただけではなかなか読書習慣がつかず、本を頻繁に選ぶ時間もない方がいると思うのですが、楽しく読書を続けるためのコツはありますか?
吉田:時間がなくて、本屋さんに頻繁に通えない方にもおすすめなのが“芋づる式読書”です。
―“芋づる式読書”! 詳しく聞かせてください。
吉田:好きな本に巡り合えたら、その本をキッカケに読む本を広げていくという方法です。
同じ著者の本、本の中で紹介されている本、
「この本を読んでみたい!」と思ったら、スマートフォンや手帳にメモしておいて、通販で購入したり、図書館でリクエストする……ということをできるだけ時間をあけずにやっていくと、無理なく読書習慣が身についていくと思います。
そして、例えば図書館で本を5冊借りたら、そのうちの1~2冊読めればいい、途中で離脱してもいいと、ハードルを下げておいたほうが読書習慣は続きやすくなります。
―ダイエットをがんばりすぎると続かない、というのと似ていますね! がんばりすぎず、でも適度に続けられる方法を探るというのがよさそうですね。どうもありがとうございました!
今回は、国語講師の吉田裕子さんに忙しい女性におすすめの読書方法についてうかがいました。
吉田さんのお話を聞いて気づいたのは、「読書って自由でいいんだ!」ということ。
ななめ読みでも、細切れ読みでも、飛ばし読みでも、自分のライフスタイルに合った読み方はあるはず。インターネットの情報収集に少し疲れてきたら、寝る前や移動中などのすきま時間にお気に入りの本の世界に浸かってみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。