まずは「ウスターソース」と「中濃ソース」について調べてみると…
nullウスターソース
野菜や果物の搾り汁や煮だし汁に、砂糖・酢・食塩や香辛料を加えて調整し、カラメルなどを加えて茶褐色にした液体調味料。英国の旧ウースターシャー州で創製。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
中濃ソース
濃度が、ウースターソースよりも濃く、濃厚ソース(とんカツソース)よりも薄いソースをいう。
【出典】日本国語大辞典 小学館
つまり「ウスターソース」と「中濃ソース」の違いって?

2つの大きな違いは、ズバリ、味と濃度。
ウスターソースはスパイシーで適度な辛さがあり、サラリとした口当たりが特徴です。
一方、中濃ソースはやや甘めな味わいで、トロリとした粘度があります。
どちらも家庭の食卓には欠かせないソースですね!
「ウスターソース」は料理の隠し味に大活躍
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ちなみに時吉さんは、ウスターソースを使用することが多いそう。家に常備しているのは、イギリス製の『リーペリン ウスターソース』とのこと。英国では王室御用達ブランドとして有名です。
「ウスターソースはスパイシーな味わいが何といっても魅力的。さまざまなスパイスがバランスよく配合されているので、料理の隠し味に使うと、味に深みが出て引き締まります。私はソースとしてかけて使うというよりも、調味料として重宝していますね。
たとえば、ハンバーグに少量練り込んだり、ビーフシチューやカレーに加えたり、サラサラした液状なので、ソース焼きそばを作る時にも使います。水の代わりにウスターソースで麺をほぐして、仕上げに中濃ソースも少し加えるとコク深い味わいに。タコスの隠し味にもぴったりで、少量加えるとひき肉の臭みが和らぎますよ」(以下「」内、時吉さん)
ウスターソースは味が強いので、入れすぎるとウスターソースの味が前に出過ぎてしまいます。なので、隠し味として使う場合は、小さじ1など、少量加えるのがポイントだそうです。
「中濃ソース」は揚げ物との相性抜群!
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一方、中濃ソースは、ウスターソースほど調理には使わず、普通に料理にかけることが多いと話します。
「中濃ソースは粘度と糖分が強めなので、料理の隠し味というよりは、とんかつやえびフライなど、できあがった料理にかけて食べることが多いですよね。トロリと粘度があるので衣の上にソースがとどまるため、揚げ物のカリッ、サクッとした食感をキープしながら美味しく食べられます。
一方、ウスターソースはサラッとした液状なので、衣にどんどんソースが染みますよね。うちの夫はあえてソースを染み込ませた衣が好きなので、ウスターソースがいいと言います。家族の好みに合わせて、2種類あると便利です」
同じソースでも味と粘度が異なるので、上手に使い分けるのがポイントですね。
「中濃ソース」は2大ソースの「中間」として誕生
null時吉さんの話を聞くうちに、そもそもなぜ「中濃」なのか疑問に思い、調べてみました。
明治時代以降、洋食文化の普及に伴い、英国発のウスターソースが日本に浸透。一方、とんかつやフライなどの洋食を食べるようになり、濃厚なとんかつソースも市場に出回っていきました。
当時の日本では、関東地方ではウスターソースが、関西地方ではとんかつソースが親しまれており、どちらの地域でも受け入れられやすいよう、ちょうどその「中間のソース」を作ろうと新しく開発したそうです。

1964年にキッコーマンから「中濃ソース」が発売された時の広告。画像:『キッコーマン 中濃ソーズ』リリースより
1964(昭和39)年、東京オリンピック開催の記念すべき年に、キッコーマンが日本で初めて「中濃ソース」を発売。ウスターソースのように流れ落ち過ぎず、とんかつソースのように重過ぎないという絶妙な「中間」のバランスが好評で、さらに関東と関西という地域の味の壁を乗り超えることにも成功。全国の家庭の食卓で歓迎され、今や「中濃ソース」は定番ソースとして愛され続けています。
知ると奥深いソースの世界。ぜひ、かけるだけでなく、料理の隠し味など、いろいろ使ってみてください!
取材・文/岸綾香
料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」「黄
Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。













