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「濃口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」の違いって?炊き込みごはんや煮物など、家庭で使い分けるコツを解説!

【食べ物の違い豆知識】を紹介するこちらのシリーズ。47回目は、日本料理にかかせない「しょうゆ」について。「濃口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」がありますが、その違いって一体? みなさん使い分けていますか? 2つの違いを料理研究家・時吉真由美さんに聞きました。

まずは「濃口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」について調べてみると…

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濃口しょうゆ

色の濃い、普通の醤油のこと。薄口醤油に対していう。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

薄口しょうゆ

色が薄い醤油。そのわりに塩分はやや濃い。関西風料理で多く用いる。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

つまり「濃口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」の違いって?

2つの違いは色の濃さと塩分濃度の違いでした。

濃口しょうゆはコクがあって黒に近い色、薄口しょうゆはほんのり薄い茶色。これは料理を作る際の仕上がりの色にも関係してきます。

ただし、塩分濃度は名前とは逆で、濃口しょうゆは約16%、薄口しょうゆは約18〜19%と、濃口しょうゆの方が塩分は控えめになっています。

しょうゆの使い分けで和食がもっと美味しく、美しく

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私たちの普段の生活で必要不可欠なのは、おそらく濃口しょうゆだと思います。九州では甘めのしょうゆだったりと、地方によって味わいに差はあれど、濃口しょうゆはどこの家庭にも必ず常備されている調味料なのではないでしょうか。

それに比べて、薄口しょうゆが常に置いてあるという家庭はなかなか珍しいかもしれません。では、薄口しょうゆはどこで活躍しているのかというと、日本料理の料亭や割烹などでは欠かせない存在です。

「京都の料亭などでは、料理の色を美しく仕上げるために薄口しょうゆは欠かせません。夏野菜の炊き合わせなど、野菜の色を鮮やかに見せたい時は、薄口しょうゆを使って、茶色くなりすぎないよう目にも涼やかに演出します。

例えば、せっかくの卵豆腐にかかっているおだしが、真っ茶色だと卵の黄色が活きませんが、薄口しょうゆだと淡くほんのりした黄色が美しい。

あんかけも同様で、夏は目にも涼やかな“銀あん”を薄口しょうゆで作ります。一方、秋冬は、濃口しょうゆで作るこっくりした色の“金あん”に。寒い時期は深みのある色の方が、温かみがあって美味しく感じます」(以下「」内、時吉さん)

家庭では、おせち料理の六方煮などは薄口しょうゆを使って、里芋の色を薄くきれいに仕上げたりしますね。茶碗蒸しやお吸い物、若竹煮なども淡い色だときれいですね。

「薄口しょうゆがなかったら、濃口しょうゆを少量入れて、塩を少量足し、色を薄くして使うこともできます。そういった点では、色を薄めることのできる濃口しょうゆの方が使い勝手がいいかもしれません」

「炊き込みごはん」で色の違いを試してみよう!

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特に色の違いを感じることができるのが、「炊き込みごはん」だと時吉さんは話します。

「今日はおかずが何もない……という時は、しょうゆを使った炊き込みごはんを手軽に作ります。1カップ(200ml)につき、大さじ1杯のしょうゆを入れ、その半量の酒とみりんをそれぞれ入れます。冷蔵庫にある油揚げやきのこを刻んで入れて炊けばOKです。

薄口しょうゆ、濃口しょうゆで炊いてみると、色の違いが歴然です。この時、薄口しょうゆの方が塩味が強いので、やや控えめに入れてください。夏場にとうもろこしごはんを作る時なども、薄口しょうゆで作るときれいですよ」

実際に作ってみたところ、色の違いにビックリ! こんなにも差が出るとは思いませんでした。夏だったら薄口しょうゆで淡く涼やかに、冬だったら濃口しょうゆでこっくりと温かみを添えて……。しょうゆを使い分けて炊くことで、その時季にあった色合いに仕上げることができるとは、何とも日本らしい繊細な感性ですね。

加熱すると焦げやすく、風味が飛びやすい問題を解決!

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また、しょうゆは焦げやすく、風味が飛びやすいのも特徴です。こんな悩みを解決する方法を、時吉さんが教えてくれました。

「肉じゃがを作る際は、加えるしょうゆの1/4程度を取っておき、仕上げに入れるようにしています。しょうゆは最後に加えることで、香りが引き立ちます。このひと手間でしょうゆの風味が活きてくるんですよ。

私はしょうが焼きを作る時も、焦げやすくなるので下味はつけません。下味をつけずに豚肉をこんがり焼いて、すりおろした生のしょうがをたっぷりと入れ、焼きながらしょうゆと砂糖を絡めます」

また、しょうゆの焦げた風味がアクセントになる場合も。チャーハンを作る時は鍋肌から回し入れ、焦がしじょうゆ風にして、焦げた風味を活かしますね。

さらに、しょうゆは旨味とコクがあるので、洋風のトマト煮込みやカレーなどにも意外と使えるとのこと。ちょっと加えるだけで、深みのある味に変わります。

よく使う調味料だからこそ、上手な使い分けを知っておくと、料理の幅が広がります。知識として知っておくだけでも、和食料理をいただく際に、「このしょうゆはどっちかな?」と、舌や目で楽しめそうですね。ぜひ、しょうゆの違いをチェックしてみてください。

取材・文/岸綾香

時吉真由美
時吉真由美

料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表

土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」金のワンスプーン!などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。

Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。

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