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キノコの旬は秋じゃない!? 野菜の目利きに聞く「秋冬が旬の美味しい野菜」

秋になるとジャガイモやサツマイモ、キノコ類といった野菜が旬。さらに冬になると、今度は大根などの根菜類やほうれん草といった葉物野菜も旬になるイメージがあります。その一方で最近は旬に関係なくいつでも安定して野菜を栽培できる工場野菜や冷凍野菜なども注目を集めており、それぞれうまく有効活用したいところ。
そこで今回は野菜の旬についての情報や工場野菜、冷凍野菜などの野菜に関するさまざまな情報についてのお話を、東京大田市場で仲卸業を営む野菜のプロ、本多 諭(ほんだ さとし)さんに伺いました。

サツマイモやカボチャ今が旬!一方ジャガイモや大根は年明けがオススメ

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秋から冬にかけてさまざまな野菜が旬を迎えます。秋といえばキノコやジャガイモ、カボチャなどの根菜類、冬といえば大根やカブといったイメージを持っている人が多いと思いますが、実際のところ、これらの野菜は本当に今の時期に旬なのか? 本多さんによると、実は必ずしもそうではないそうです。

「例えばジャガイモは秋野菜のイメージが強いですが、日本一の産地である北海道でジャガイモが収穫されるのは8月です。しかしすぐに出荷するわけではなく、貯蔵庫といわれる部屋で氷温帯のまましばらく保管し、翌年のゴールデンウィーク時期までに少しずつ出荷していきます。

採れたてのものが美味しい野菜はたくさんありますが、ジャガイモやサツマイモ、カボチャなどの根菜類は貯蔵することで甘味が増す性質を持っています。そう考えるとジャガイモが美味しい時期は秋ではなく1月から2月。農家さんによっては冬を越して、もうひと冬貯蔵するみたいなケースもあるくらいです」(以下「」内、本多 論さん)

9月から10月にかけて北海道産のカボチャ出荷が始まるので価格が安定。甘みも増しておいしくなるのでまさに旬をたのしむ野菜としておすすめ!(写真提供 キユーピーサラダファーストプロジェクト)

ちなみにサツマイモやカボチャは9月に収穫しますが、実際に出荷されるのは11月以降。つまり今が食べごろです。一方冬野菜の代表格である大根やカブは採れたてが美味しい野菜ですが、最近は暖冬の影響によって年明けに収穫するケースも増えているといいます。

「大根やカブ、さらには冬に旬の葉物野菜もそうですが、寒さにしっかりあたったほうが美味しいんです。でも近年は暖冬の影響で、12月だと早すぎる。そうなると12月くらいが一番の旬といえます。

また冬はブロッコリーも旬ですが、年末が近づくとクリスマスの影響によって、需要が高まります。そうなると必然的に価格も高くなるので、食べるなら値段が安定している11月から12月中旬ごろがおすすめ。年が明けるとまた値段が安定するので、それ以降に食べてもいいですね」

大根がより美味しくなるのは年明け!

キノコは秋が旬ではなく、1年を通して安定している工場野菜の代表格

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また秋の味覚といえばキノコも代表的です。しかし日本のキノコ類は現在、全体の9割以上が工場で環境を管理しながら栽培を行う「菌床栽培」(※)。季節はほとんど関係がないのです。

※農林水産省 林野庁「用林産物の生産動向」より(https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/tokusan/

「菌床栽培は天候の影響をまったく受けないので、計画的に安定して栽培できるのが最大のメリットです。価格も安定しているので、ほかの野菜が高騰している時などは上手に取り入れるといいと思います。これからの季節は鍋料理でも大活躍しますし、夏場はマリネにしてサラダに入れてもいいですね」

キノコは菌床栽培により、1年中価格も品質も安定しています。

もちろん現在、工場で作られている野菜はキノコだけではありません。

「最近はレタスなども工場で作られる品種が増えています。ただ現在のところは普通の露地栽培のものと比べると、平均価格でいうとまだまだ割高。ただキノコと同じく天候にまったく影響を受けないので、夏でも冬でも例えば200円だったらずっと200円です。逆に露地栽培だと150円のときもあれば、250円になる可能性もある。ですから、一概に工場野菜が高いともいえません」

冷凍ほうれん草を活用するのもアリ。

さらに本多さんは野菜の価格が高騰した場合は工場野菜とともに、冷凍野菜を効果的に使うこともオススメだと言います。

「野菜には旬がありますが、今の時期でも夏野菜が売られていますし、夏でも冬野菜はあります。でも野菜はやっぱり旬の時期が一番美味しいし、栄養素も高い。例えばほうれん草は冬野菜ですが、夏の時期に旬ではない生のほうれん草を食べるのと、冬の旬の時期に収穫したほうれん草を冷凍して夏に食べるのは、どちらがいいのか? どちらが正解という話ではないですが、ちゃんとした冷凍技術があれば、冬のほうれん草を冷凍して夏に食べた方が、場合によってはいいかもしれません」

本多さんによると冷凍技術の進化は目覚ましく、現在は旬のまま栄養素を壊さずに冷凍する野菜も増えているそう。もちろん野菜によってはまだ難しいものもありますが、冷凍に向いている野菜を効果的に活用すれば、野菜が高騰した場合の節約にも役立ちます。

これから何かと物入りな季節。食費を節約したいなら、工場野菜や冷凍野菜をうまく活用するのも重要となりそうです。

撮影/小倉雄一郎(小学館)

本多 論さん。

【取材協力】

大田市場 大治(だいはる) 本多 諭(ほんださとし)さん

大学卒業後、株式会社紀ノ国屋に入社。2年間正社員として働いた後に、大田市場で野菜の仲卸業を70年以上営む家業の大治(だいはる)に入社。平成28年に代表取締役社長に就任し、「東京野菜」ブランドを推進する東京野菜普及協会の代表理事としても活躍。青果物の流通のプロとして産地の開拓など「質の良い野菜」にこだわり、旬野菜やトレンド野菜についても広い知見をもつ。

株式会社大治

高山恵
高山恵

東京都出身、千葉県在住。短大の春休みより某編集部のライター見習いになり、気が付いたら2022年にフリーライター歴25年を迎えていた。現在は雑誌『DIME』(小学館)、『LDK』(晋遊舎)などで取材・執筆を行うほか、『kufura』などWEB媒体にも携わる。

執筆ジャンルは、アウトドアや子育てなどさまざま。フードコーディネーターの資格も持つ。

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