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世界が注目する日本の「発酵」文化、新年は「パタゴニア」の自然環境に配慮した日本酒で祝ってみませんか

「パタゴニア」といえば、環境に配慮したものづくりを行うアウトドアブランドとして広く知られていますが、実は食品も展開しているんです。食品部門「パタゴニア プロビジョンズ」では、自然環境に配慮した自然派ワインと日本酒を展開しています。日本酒は、その土地の自然を反映して造られることから「自然酒」と名づけられています。

今回、この自然酒に年号入りのオリジナル日本酒が新登場。一体どのようなお酒なのか、また、お酒造りに欠かせない「発酵」の魅力について勉強会でうかがいました。

ワインのような「その年の味の変化」を日本酒の世界にも

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年号入りの“自然酒”の日本酒が登場。Taro Terasawa(C)2023Patagonia, Inc.

自然酒とは、その土地の土壌や天候、植物相(その地域に生息する植物すべてのこと)、動物相(その地域に生息する動物の種類組成のこと)といった自然環境を守りながら作るお酒のこと。日本酒の分類上では種類区分はありませんが、「パタゴニア プロビジョンズ」では2021年から、「自然酒」と名づけた日本酒を取り扱っています。

今回新たに登場したのは、自然酒造りを行っている「寺田本家」と「仁井田本家」が醸した「パタゴニア プロビジョンズ」オリジナル自然酒で、2023年の年号入りです。ワインはその年ごとのブドウによって味の変化を楽しむ習慣がありますが、日本酒では年号を入れてその年の味を楽しむ習慣がありません。そこで、ワイン同様にその年の味を楽しもうという試みです。お米もブドウ同様農産物、特に農薬や化学肥料に頼らず栽培された米を使い、蔵に棲みつく微生物で醸している自然酒は、その年のお米の出来や醸造期間の微妙な気候の変化などが味に反映されるようです。

お酒造りに欠かせない「発酵」の魅力

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発酵の魅力について語ってくれた発酵デザイナー・発酵デパートメントCEOの小倉ヒラクさん。

まずは、酒造りに欠かせない「発酵」の基本について、今回の自然酒造りにも携わった発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに教えていただきました。「パタゴニア プロビジョンズ」が自然酒を造るにあたって、自身がCEOを務める発酵デパートメントでのイベント開催のオファーがあり、もともとパタゴニアファンだったという小倉さんは喜んで引き受けたのだとか(イベントは2023年12月24日で終了)。

「発酵とは、人間にとって役に立つ微生物が働くプロセスのことです。我々の暮らしには味噌やパンなど、身近に発酵食品がありますよね。味噌を作るには大豆と塩、そしていい菌でおいしくなりますが、塩を入れないと腐敗します。つまり、いい菌だけを呼び込むのが発酵の基本です」(以下「」内、小倉さん)

大豆と菌だけでは、発酵してもいわゆる「腐敗」になります。そこに塩を入れることで微生物が利用できる水の割合を下げ雑菌の増殖を抑えることで腐敗を防ぎ、人間にとって役立つ発酵になるわけです。発酵と腐敗は、どちらも微生物の働くプロセスによるものですが、人間にとって有益であるかどうかという大きな違いがあります。

発酵食品は健康効果が期待できるなどの理由で、10年ほど前から世界的にブームになっています。日本で古来、発酵の文化が根付いているのは、菌が多いことも要因なのだそう。日本では当たり前のように発酵の恵みを享受しているからか盛り上がりに気づきませんが、海外の方が発酵のトレンド熱が高く、日本の発酵食にはプロも注目しているとか。ただ、国内はいい菌も多いかわりに悪い菌も多いため、腐敗には気をつけなければいけないという注意点もありました。

あまりにも身近にありすぎて、その恩恵が当たり前のように感じていましたが、お酒、味噌、納豆など発酵食品によって、日本の和食文化は発展していると言えそうですね。

2023の年号が記された自然酒

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自然酒をよりおいしくいただけるようにと、発酵料理研究家の寺田聡美さん考案のプロビジョンズ製品も使用した「発酵おつまみプレート」。すべてに発酵食品が使われていました。

自然酒に合うプロビジョンズ製品を使用したという発酵料理研究家の寺田聡美さん(寺田本家)考案の「発酵おつまみプレート」と共に、2つの自然酒を試飲しました。それぞれご紹介していきましょう。

繁土 バンド 2023(寺田本家)

繁土 バンド 2023 容量 720mL アルコール分 15% 2,178円(税込み)

「繁土 バンド 2023」は、酒米ではなく食用米を使用した自然酒です。寺田本家の自社で栽培された千葉錦と兵庫県豊岡の坪口農事未来研究所による「コウノトリ育む農法」によるコシヒカリ米の2種のお米を木桶で仕込んでいます。ほとんどの酒蔵ではステンレスタンクで仕込まれますが、昔ながらの木桶で仕込みを行っています。

「木桶で仕込むことで、多くの酸素に触れます。また、食用米を使っているため、おにぎりっぽいというかお米っぽい味がするのがわかると思います」

確かに、お米の甘さがしっかり残っていました。「コウノトリ育む農法」の田んぼは水をはりっぱなしにし、そこに微生物や虫が育ち、その虫を目当てにコウノトリが戻ってくるようにと自然に近い米づくりを行っています。そのままおにぎりにして食べてもおいしいお米を、発酵の力を使い、酒として新たなおいしさを生み出しています。お米の甘さと酸味のバランスがよいお酒です。

しぜんしゅ‐やまもり 2023(仁井田本家)

しぜんしゅ‐やまもり 2023(仁井田本家) 容量 720mL アルコール分 13% 2,310円(税込み)

「しぜんしゅ‐やまもり 2023」は、仁井田本家で栽培した農薬・肥料不使用の酒米の雄町を使用して造られています。雄町は、現在酒米として有名な山田錦などのルーツとなった酒米で、古くからある品種です。仁井田本家では、他から何も持ってこず、その土地にあるもののみで酒造りを行っていて、こちらも木桶で仕込んでいます。

この木桶には福島にある自社の山の木を使い、桶を固定するために周囲に巻くタガも、近くの竹林から竹を切りだして使用しています。農薬や肥料を使っていないため、田んぼには虫を食べてくれるカエルが欠かせません。そういった背景から、ボトルのキャップにはカエルが描かれていました。

「飲んだ後、ビターな感じがあり、お米の特質が感じられますよ」

どちらの自然酒も、燗酒にして、寒い時期のアウトドアで飲むのもおすすめだそう。

人と地球が健康でいられるために

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「パタゴニア プロビジョンズ」ディレクターの近藤勝宏さん。

ほんとうに地球を守るなら「食」に取り組まなければ、とスタートしたのが「パタゴニア プロビジョンズ」です。

「パタゴニア プロビジョンズ」の近藤勝宏さんも、「食べることで、地球の生態系を守り環境も人も健康になることを目標にしています。原材料から私たちに届くまでのつながりがわかりやすいのが日本酒だと思います」と話します。

農薬や化学肥料を使わずに栽培された、力のあるお米は吟醸酒のようにお米の大部分を磨き削るのではなく、5割以上を残した純米酒のときにポテンシャルがあがるそうです。今回の自然酒もお米の恵みたっぷり。自然酒のおいしさをじっくり堪能したくなりました。ご紹介した自然酒は、パタゴニア直営店とオンラインストア、発酵デパートメントで販売中です。

【取材協力】
パタゴニア プロビジョンズ

林 ゆり
林 ゆり

ロハスジャーナリスト/フリーアナウンサー。関西を中心にテレビ、ラジオ、舞台などで活動後、東京に拠点を移し、執筆も始める。幼いころからオーガニックに囲まれて育ち、『MYLOHAS』に創刊から携わる。LOHASを実践しながら、食べ物、コスメ、ファッションなど、地球にやさしく、私たちにもやさしいものについてWeb媒体やブログで発信中。

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