かんぱちの基礎知識
null名前がいろいろ変化する魚です
かんぱちは、眉間の模様が「八」の字に見えることからこの名前で呼ばれるようになったといわれていますが、「出世魚」の代表格であるぶりと同様、成長につれて呼び名が変わります。また、地域によっても違った呼び方をされることから、名前は数多く存在します。
たとえば関東では、小型のものを「シオッコ」や「ショゴ」と呼び、60cmを超えたものを「カンパチ」といいます。
特に高知県では、呼び名が幼魚「ネイリコ」→小型魚「ネイリ」→中型魚「ニイリ」→大型魚「シオ」→特大魚「オーシオ」と変化します。
ほかには、ぶりに比べて赤みが強いことから、「アカハナ」「アカアナ」「アカヒラ」などと呼ばれることも。
かんぱちは全長1.5mほどにまで成長し、ぶりの仲間では最も大きくなる魚です。成長に伴って食感や味わいも変化するため、そのおいしさの違いを名前でも区別できるようになっているのですね。
かんぱちは赤身魚!?白身魚との中間とされることも
かんぱちはアジ科に属するブリの仲間です。かんぱちの身が赤みがかった色をしていることや、真っ赤な血合いを持つこと、ミオグロビンやヘモグロビンの含有量が高めなことなどから、イワシ類やニシン、サンマ、アジ類、サバ類のような赤身魚に属している青背の魚同様、かんぱちも赤身魚と分類されることも多いです。
しかし、白身魚の特徴もあわせてもっているため、白身魚や、白身魚と赤身魚の中間魚に分類されることもあります。
生のかんぱち(三枚おろし)100gあたりに含まれる栄養素
・エネルギー:119kcal
・たんぱく質:21.0g
・脂質:4.2g
・ビタミンB1:0.15mg
・ビタミンB2:0.16mg
・ビタミンB6:0.32mg
・ビタミンB12:5.3μg
・ビタミンD:4.0μg
・カルシウム:15mg
・カリウム:490mg
・EPA:190mg
・DHA:730mg
「ぶり」とは栄養面ではどう違う?
かんぱちとぶりは同じ仲間なので見た目はかなり似ていますが、栄養的には少し違いがあります。
ぶり(生)100gあたりに含まれる栄養素
・エネルギー:222kcal
・たんぱく質:21.4g
・脂質:17.6g
・ビタミンB12:3.8μg
・カルシウム:5mg
・カリウム:380mg
比べてみると、かんぱちはぶりと比べて低脂質で低カロリーなことが分かりますね。神経・血液細胞の健康やDNA生成にかかわるビタミンB12や、カルシウム、カリウムの含有量も高いといった特徴があります。
背側の身は、脂ののった腹側よりも脂質・カロリーともにさらに低くなっているので、カロリーや脂質が気になる方には背側がおすすめですよ。
不飽和脂肪酸EPA&DHA
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(イコサペンタエン酸)は不飽和脂肪酸の中でもオメガ3系に分類される必須脂肪酸。必須脂肪酸は人の体内で合成できないため、食物から摂取する必要があります。
かんぱちは、他の青背魚に比べて脂質が少なめのため、DHA、EPAともに白身魚に近い含有量となっていますが、低脂質ながらDHA、EPAの摂取をすることができます。
ビタミンB12&ビタミンDを含む
かんぱちは特にビタミンB12やビタミンDを多く含みます。ビタミンB12は貧血の一種である巨赤芽球性貧血の予防に役立つビタミンです。かんぱちには鉄分も含まれているため、貧血全般の予防や改善におすすめです。
ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を促進する、骨の形成には欠かせないビタミンです。ビタミンDが不足していると、たとえカルシウムの摂取量が十分であったとしても、カルシウムの吸収が悪くなってしまいます。成長期や骨粗しょう症予防にも活用したいですね。
かんぱちに期待できる効果効能とは?
null低脂質高たんぱく!ダイエットや体作りにも
かんぱちは低脂質高たんぱく。100gあたり119kcalとエネルギー量は低めながら、たんぱく質21.0gを含みます。
たんぱく質は、筋肉や内臓などの体の構成だけでなく、ホルモン・酵素・抗体などの体調節機能に必要な成分です。体内では絶えず合成と分解を繰り返し、一部は体外に排泄されるため、できれば毎食適量を食物から補給したいもの。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、たんぱく質摂取の推奨量は、12歳以上の男性が60~65g/日、女性が50~55g/日に設定されています。かんぱちに含まれているたんぱく質は、1食分としては十分な量であるといえるでしょう。
低脂質で高たんぱくのかんぱちは、ダイエット中のたんぱく源としてもおすすめですよ。
DHA・EPAとカリウムで血液を元気に
かんぱちに含まれている多価不飽和脂肪酸であるDHA・EPAは、血液をサラサラにするなど、生活習慣病予防にも効果を発揮する成分として注目されています。
さらに、余分なナトリウムを排泄し血圧を正常に保つ働きのあるカリウムの含有量は、魚類の中でもトップクラス。高血圧予防にもひと役買ってくれるでしょう。
かんぱちは、血液の健康を保ち、生活習慣病予防にも活躍してくれそうですね。
撮影:黒石 あみ(小学館)
【参照】
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・「日本全国お魚事典」山田吉彦著 海竜社
・「旬を味わう魚の事典」坂本一男監修 ナツメ社
・「からだによく効く旬の食材 魚の本」講談社
・「旬の野菜と魚の栄養事典」吉田企世子/棚橋伸子 監修 X-Knowledge
・「食材図典Ⅲ」小学館
・厚生労働省eJIM「ビタミンB12」
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/07.html
(最終参照日 2022/10/24)
管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。大学卒業後、食品メーカー勤務を経て管理栄養士の道に進む。
食の大切さを伝えるため、コーチングを取り入れたバレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、親子クッキングや離乳食講座などの料理教室、レシピ・コラムの提供、栄養講座、研究機関協力など幅広く活動。
現場の生の声から多くを学びながら、おとなと子どもの食育サポートに力を注いでいる。