知っておきたいぶりの基礎知識
null地域によっても呼び名が変わる出世魚
ぶりは成長によって呼び名が変わる「出世魚」です。地域によっても変わるため、多くの呼び名が存在します。代表的なものを紹介します。
関東では、わかし(20cm前後)→いなだ(30~40cm前後)→わらさ(60cm前後)→ぶり(80~1m以上) と変化します。
関西では、もじゃこ(稚魚)→わかな→つばす(10~20cm前後)→はまち(30~40cm前後)→めじろ(50~60cm前後)→ぶり、と呼び分けています。
その他、地方によって様々な呼び名があります。
成長の度合いによって脂の乗り方や味わいにも違いがあるため、あえて呼び分けることで、よりおいしさを楽しめる工夫をしているといえるのかもしれませんね。
「アニサキス」などの寄生虫に注意!
天然のぶりにも寄生虫が存在するため、注意が必要です。特にアニサキスは、刺身の中に生きている状態で潜伏していることがあります。
生きた状態で食べてしまうと、アニサキスが胃壁や腹壁を噛むことによる腹痛や、アレルギー反応の症状が出てしまうという危険性が指摘されています。
刺身は養殖のものや一度冷凍したものを選ぶ、加熱するなどの対処法があります。
その他、ぶりには「糸状虫」と呼ばれる寄生虫がついていることもあります。糸状虫はアニサキスと違って、誤って食べてしまっても特に問題はないといわれています。
ぶりの栄養情報
nullぶり(生)100gあたりに含まれる栄養素
・エネルギー:222kcal
・たんぱく質:21.4g
・脂質:17.6g
・ビタミンB1:0.23mg
・ビタミンB2:0.36mg
・ビタミンB6:0.42mg
・ビタミンB12:3.8μg
・ビタミンD:32.0μg
・カルシウム:5mg
・カリウム:380mg
・EPA:940mg
・DHA:1700mg
それぞれの栄養素の働きをみていきましょう。
健康な血液作りに役立つDHA、EPA
ぶりに豊富に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(イコサペンタエン酸)は不飽和脂肪酸の中でもオメガ3系に分類される必須脂肪酸です。必須脂肪酸は人の体内で合成できないため、食物から摂取する必要があります。
DHAは人の脳や網膜の構成脂質であり、直接脳内に入って効果を発揮する成分として注目されています。EPAは血液をサラサラにする作用や生活習慣病予防に効果があるとされ研究が続けられています。
ビタミンD
体内で活性型ビタミンDとなりカルシウムとリンの吸収を促進する、骨の形成には欠かせないビタミンです。ビタミンDが不足していると、たとえカルシウムの摂取量が十分であったとしても、カルシウムの吸収が悪くなってしまいます。
たんぱく質
ぶりには、良質なたんぱく質が豊富に含まれています。
たんぱく質とは、筋肉や内臓などの体の構成や、ホルモン・酵素・抗体などの体調節機能の成分であり、体内では絶えず合成と分解を繰り返し、一部は体外に排泄されるため、食物から補給しなければなりません。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、たんぱく質摂取の推奨量は、12歳以上の男性が60~65g/日、女性が50~55g/日に設定されています。
ぶり100gには21.4gのたんぱく質が含まれているため、1食分としては十分の量のたんぱく質が摂れることになるといえます。
ぶりに期待できる効果効能は?
nullぶりの脂は健康にお役立ち!
ぶりは冬が旬の魚です。寒い時期のぶりは特に「寒ぶり」と呼ばれ、脂ののったおいしさが格別です。
ぶりに含まれている主な脂質は、血液サラサラ効果や生活習慣病予防、認知症予防などの好影響があると言われているEPAやDHAなどのオメガ3系の多価不飽和脂肪酸です。
EPAやDHAは非常に酸化しやすいといわれる脂質ですが、ぶりにはビタミンEが含まれており、脂質の酸化を抑える作用も有しています。
丈夫な骨や歯を形成する際に必要なカルシウム自体はそれほど含まれていませんが、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが豊富なため、子どもや骨粗しょう症予防が気になる人は、海藻、牛乳などのカルシウムの多い食品とともに食べると良いでしょう。
きれいな肌や髪を育てる栄養がたっぷり
ぶりに含まれる栄養素は、健康面だけでなく美容面でも力を発揮してくれます。例えば、ぶりの主な脂質であるEPAは、血液をサラサラにする作用があるといわれており、肌をはじめとする全身の組織に栄養素が届きやすくなると考えられます。特にダイエット中の人に避けられがちな脂質ですが、細胞やホルモンなどの構成成分であり、不足すると肌はカサつき、髪もツヤがなくなってしまいます。
もちろん摂りすぎはよくありませんが、良質な脂質を適量摂取することはとても大切です。ぶりにはオメガ3系不飽和脂肪酸であるDHA・EPAが含まれているため、良質な脂質を効率的に摂れ、美容にも役立つというわけです。
また、「美容ビタミン」と呼ばれるビタミンEや、貧血予防に欠かせない鉄分など、肌のくすみ予防でも知られる栄養素が多く含まれています。
糖質代謝や脂質代謝にかかわるビタミンB1をはじめとするビタミンB群も多く含んでおり、エネルギーを効率よく作り出し、ダイエットなどにも効果が期待できます。
撮影:黒石 あみ(小学館)
【参照】
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
・「日本全国お魚事典」山田吉彦著 海竜社
・「旬を味わう魚の事典」 坂本一男監修 ナツメ社
・「からだによく効く旬の食材 魚の本」講談社
・「旬の野菜と魚の栄養事典」吉田企世子/棚橋伸子 監修 X-Knowledge
・「食材図典Ⅲ」小学館
・厚生労働省「e-ヘルスネット」ビタミン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
・厚生労働省「e-ヘルスネット」カルシウム
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-042.html
・水産庁「水産物に含まれる主な機能性成分」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/sankou_6_3.html
・海と魚がもっと好きになるウェブマガジン umito.(R) ぶり
https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article56/
(最終参照日2022/7/26)
管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。大学卒業後、食品メーカー勤務を経て管理栄養士の道に進む。
食の大切さを伝えるため、コーチングを取り入れたバレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、親子クッキングや離乳食講座などの料理教室、レシピ・コラムの提供、栄養講座、研究機関協力など幅広く活動。
現場の生の声から多くを学びながら、おとなと子どもの食育サポートに力を注いでいる。