まずは「ミートソース」と「ボロネーゼ」について調べてみると…
null【ミートソース】
牛のひき肉にタマネギ・トマトピューレ・香辛料などを加え、煮込んで作ったソース。スパゲッティにかけることが多い。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
【ボロネーゼ】
イタリアの都市ボローニャの。ボローニャ風の。「スパゲッティボロネーゼ(ミートソーススパゲッティ)」
【出典】デジタル大辞泉 小学館
つまり「ミートソース」と「ボロネーゼ」の違いって?
どちらもメニュー名と思われがちですが、正式にはパスタの上にかかっているソースだけを指すんですね。
「ミートソース」には牛ひき肉やトマトピューレなど、いわゆる私たちがすぐ思い浮かべるような材料が使われるようです。
「ボロネーゼ」の項では「スパゲッティボロネーゼ(ミートソーススパゲッティ)」と記載が。つまり、ミートソースとボロネーゼって同じものって認識でいいの? イタリア・ボローニャ風って具体的にどういうもの?とギモンが……。
ポイントは、肉感・パスタの太さ・ソースの味付けの3つ!
null「ボロネーゼ」は肉々しさとパスタの形状に特徴あり
料理研究家・時吉さんによると……
「まず、“ボロネーゼ”はイタリア北部の古都、ボローニャが発祥です。
正式には、“ラグー・アッラ・ボロネーゼ”という名称なんですよ。“ラグー”とは粗挽き肉を煮込んだものを指す言葉で、肉のボローニャ風煮込みという意味になります」(以下「」内、時吉さん)
調べてみると、ボローニャは肉の集散地。生ハムやチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)といった畜産加工品が豊富で、食通の街として有名なんですね。
「そんなボローニャの街で生まれたボロネーゼに使われるのは、粗挽き肉。パンチェッタ(豚バラ肉の塩漬け)や玉ねぎ、にんじん、セロリ、フレッシュトマト、ブイヨンや赤ワインなどと一緒に煮込まれますが、粗挽き肉によるゴロゴロとした肉々しさが特徴なんです。
パスタにかけていただくときは、“タリアテッレ”という平打ち麺にあわせるのがボロネーゼの定番。肉のかたまりもしっかりと絡みやすく、相性がいいとされたのでしょう」
ボロネーゼは、トマトや野菜、赤ワインなどで味付けされた“お肉”を味わう料理なんですね。
「ミートソース」は、ボロネーゼがアメリカナイズされたもの!
「その“ボロネーゼ”がアメリカンにアレンジされたものが“ミートソース”だと言われています」
なるほど! 本場イタリアでは「ボロネーゼ」、それが伝わったアメリカでは「ミートソース」と呼び名が変わるんですね。
「変わるのは呼び名だけではないんですよ。
まず大きな特徴として、肉感の違いが挙げられます。ミートソースに使われるのは、一般的に粗挽き肉ではなく細かなミンチ状のお肉ですよね。しかも、牛肉オンリーではなく、合い挽き肉のミンチを使っていることが多いという印象です。
さらに、ソースはケチャップやウスターソースなどで煮込まれ、甘みがある味付けです。パスタを作る時にベーコンなどを入れることはあっても、最初からパンチェッタは入りません。
“ボロネーゼ”をもとに、より簡単に作れるようアレンジされたものが“ミートソース”なんじゃないかと思います。
ミートソースのパスタ麺は1.6mmくらいのものが主流。細かいひき肉には、幅の広いタリアテッレより、細い方がソースが絡みやすいですよね。麺の太さも違いと言えるのではないでしょうか」
お肉の大きさ、甘みがあるかないか、パスタの太さなど、両者には違いがあると言えそうですね。
どちらかというと、私たちに馴染み深いのはミートソースの方なのかも。そのミートソースとは、ボロネーゼがイタリアからアメリカに渡り、日本に伝わったものだったとは知りませんでした。
パスタ以外にも美味しく使いまわそう!
「ボロネーゼでもミートソースでも、どちらも“ソース”なのでパスタ以外の料理にも使えます。もし、おうちで手作りして余った時には、パンにのせてピザトーストのようにしても美味しいと思います。
私がよく作るのは、焼くや揚げるかしたナスをグラタン皿にしいて、余ったソースとチーズで作るナスのグラタン。ナスをズッキーニなどにかえたりしても美味しいですよ。
とにかく、何段階にも活用して使いまわせるのが両者のいいところです」
美味しそう~、これはあえて多く作っておきたくなります!
ぼんやりと認識していたボロネーゼとミートソース。両者の違いがサラッと言えたら、一目置かれるかもしれませんね。
構成/kufura編集部
【参考】
イタリア政府観光局 エミリア・ロマーニャ州 https://visitaly.jp/region/emilia-romagna/
料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。
Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。