「モツ」と「ホルモン」の違いって…
nullどちらも内臓だということは分かりますよね。じつは特定の部位のことだったりして!? なんて思いながら調べてみると……。
「モツ」は内臓全般のこと
モツは臓物(ぞうもつ)の“もつ”に由来し、内臓のこと。食用では肝臓、心臓、肺、腸のほか、舌や血液など広範囲のものを指します。
内臓のことで、臓物の略語。食用とする内臓は肝臓が代表で、心臓、腎臓{じんぞう}、 肺臓、脾{ひ}臓、胃、腸、そのほか脳髄、舌、足、尾、性器、耳、血液など広範囲のものを含んでいる。
【出典】日本大百科全書(ニッポニカ) 小学館
食用肉の内臓を「ホルモン」と呼ぶ
ホルモンも食用にする牛や豚の内臓のこと。かつて、肉以外の部位は廃棄されていたことから、関西の言葉である「放るもの(捨てるもの)」が語源、という説もあるようです。
食用にする牛や豚などの内臓。焼いたり鍋料理にしたりする。 名は、かつては捨てていた部位であることから「放(ほう)るもん(捨てるもの)」に由来するともされる。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
で、つまり「モツ」と「ホルモン」の違いは…
呼び方が違うだけで、ともに同じ“内臓”を指していました。
調べてみると、とくに関東では「モツ」、関西では「ホルモン」と呼ばれることが多いようです。
また、モツ鍋やホルモン焼には牛や豚の腸が使われることが多く、狭義では、モツまたはホルモン=腸として定着している地域もあるようです。
「日本畜産副産物協会」によると、関西以南では牛、東京以北は豚の内臓が消費される傾向にあるとのこと。同じ料理を食べていても、地域によっては牛か豚かの違いあるかもしれないなんて、おもしろいですよね。
モツ・ホルモンは下処理が肝心!
nullこれまで何かしら違いのあるものばかりでしたが、呼称が違うだけで“同じものを指す”というのはシリーズ初ですね、と料理研究家の時吉さん。
「それでも、牛や豚の腸に限ってホルモンと呼ぶ地域がある……といった具合に、地域差がみられる食材です」(以下「」内、時吉さん)
心臓=ハツ、肝臓=レバーのように、臓器の呼び名はだいたい一緒なのに、“内臓”となると2通りの言い方があるのはおもしろいですよね。
これらをお料理に使う時は、どのような点に注意したらいいのでしょうか?
「内臓系はアクがあり臭みも強いので、何よりも下処理が大切!
しっかり洗ってから茹でこぼしていくのですが、この時にお酒やしょうがを入れることで臭みを取ることができますよ。
それでも、モツ鍋やモツ煮込みにはニラやネギがたっぷり入っていたり、しょうがやニンニクが利いていたりしますよね。これは、香味野菜には臭い消しの効果があってモツ・ホルモンと、とても相性がいいからなんです」
たしかに、モツ鍋にはニラがたっぷりのっていますし、モツ煮やホルモン焼も濃いめの味付けでいただくことが多いかも。
「相性のいい食べ物と組み合わせることで、“放るもん”も活かせる、というわけなんです。肉よりも安価なモツやホルモンを、いかにおいしくいただこうかと考えた時にたどり着いたのが、香味野菜だったんだと思います」
なるほど! いま私たちがモツ・ホルモン料理をおいしくいただけるのは、捨てられていた食材を無駄にすることなく、味や調理法を工夫した先人たちの知恵のおかげだったんですね。
【取材協力】
料理研究家 時吉真由美
(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍中。
楽天レシピに多数のレシピを掲載する他、YouTubeチャンネル「Clocca Cooking Channel」にて、語り継ぎたい伝統的な行事食を中心に、作り方やプチ知識を公開中!