あったら便利だけど置き場所はどうする?2台目冷蔵庫ニーズを掘り起こすデザイン家電
あったら便利だけど置き場所はどうする?2台目冷蔵庫ニーズを掘り起こすデザイン家電冷蔵庫は高機能・大容量化が進み、価格も家電製品のなかでは高額商品に該当する商品です。買い替えの頻度も多くなく、また比較検討できるようなタッチポイントが非常に少ない中で、メーカーも「どうやったら2台目需要を喚起できるのか」という悩みがあるといいます。
そこで、家電メーカーの「AQUA(アクア)」が「家具のような冷蔵庫」という新発想で現代のライフスタイルに合わせた使い方ができる製品を開発。発表会が都内某所の有名建築家の設計によるテラスハウスで行われました。
「日本の総世帯が大体約5500万世帯、そのうちその3割程度が1人暮らし、残りの過半数が夫婦、夫婦プラス子世帯といわれています。『アクア』にも小型冷蔵庫はたくさん商品がありますが、今のライフスタイルの多様化に対応できていません。 どうしても1人暮らし用の冷蔵庫を買ってしまうと、置き場所やデザインの制約があります。ニーズも複雑化しているところもあり、0からこの商品を考えました。この商品のターゲットは、全てのお客様になるのではないでしょうか」(AQUA 商品本部 冷蔵庫企画グループ ディレクター 山本陽護さん)
例えば、あまり自炊しない単身赴任や単身世帯の必要最低限のものが入る小さめ冷蔵庫。はたまたこういうデザインの商品があったらいいなと思ってる若い世代。メインの冷蔵庫を持っているけれど、週末に夫婦やファミリーでリビングなどで飲み物やアイスを楽しむときに必要なものだけ入っている2台目の冷蔵庫。高齢の両親と同居している人の、自分専用の冷蔵庫。2台目の需要に合わせるのではなく、それぞれが求めるライフスタイルにこのデザイン家具のような冷蔵庫「LOOC」を合わせて使ってもらいたいと考えているそうです。
フラットなドア、天板はまるでチェスト!リビング、ベッドルームにも設置しても違和感なし
フラットなドア、天板はまるでチェスト!リビング、ベッドルームにも設置しても違和感なし今回の冷蔵庫の名前「LOOC」は冷蔵を意味する「COOL」から。家具を冷蔵庫にするという、発想を逆転させたことから「COOL」を逆にした「LOOC」と名付けられました。
デザインでは、冷蔵庫感を一切廃し、いかに家具に見えるかに重きに置いています。
「最大の家具感をたらしめるポイントになっているのが、この脚の部分かなと思います。ハイタイプの脚をつけると約9センチ上げることができるのですが、この脚をつけることでより家具感が出ます。さらに、床との空間が生まれることでお部屋が広く見えるような視覚的な効果も生まれます。 ロボット掃除機が足元に入る高さに設定しているので、掃除のときも便利です」(アクア 商品本部 冷蔵庫企画グループの杉本優輔さん)
インテリアに溶け込むデザインとして、サイズ感にもこだわっています。
「『LOOC』は幅が60cm、奥行きが45cmで作られていますが、デザインで一番参考にしたのがチェストです。他の家具と一緒に並べたときに表の面が合うような仕様になっていて(冷蔵庫としては)非常に薄型で、リビングに置いていただいても違和感のない商品になってます」(杉本さん)
コンパクトサイズの冷蔵庫では左右どちらかのみの開きが一般的ですが、「LOOC」はチェストのような両開きのフレンチ扉を採用。これによって大きく開いても周囲の邪魔にならず、使い勝手にも配慮されています。
インテリアスタイリストから見た家具冷蔵庫「LOOC」の魅力
インテリアスタイリストから見た家具冷蔵庫「LOOC」の魅力発表会の会場となったのは、インテリアスタイリストの窪川勝哉さんが所有する「白鷺の家」。建築家・前川國男設計のテラスハウス内に4つの「LOOC」を設置。リビング、ダイニング、階段上のスペース、ベッドサイドと4つのシチュエーションでのコーディネートを提示。
窪川さんは「LOOC」を見て、現在のトレンドとして見ても家具のデザインとしてできあがっていることと、冷蔵庫なのにヒンジやロゴなどの表示が表に見える部分にないことに驚いたそうです。
「ちょっと欲張って、この屋内に4台の『LOOC』を置いてみました。リビングではサイドボードのようなスタイルで、ダイニングではテーブルのそばのちょっとしたドリンクステーションとして。寝室では脚をロータイプにして、ベッドサイドに置いて水が飲みたくなったときに。そして、上にミラーを置いて、ドレッサーのようにも使ってみました」(窪川さん)
ここ最近のインテリアでは、ニュートラルカラーといわれるグレー系のものや、モルタルなどを使ったグレイッシュの空間づくりというのがトレンドの1つ。今回の「LOOC」にも取り入れられているナチュラル系の「グレージュウッド」はグレー系の空間やナチュラルな感じを足した空間にも合うそうです。一方の「ブラウンウッド」は、現代的なダークブラウンを使ったスタイリッシュなマンションをはじめ、シュッとした空間にも合うカラー。今回の会場となった、建築から68年経ったレトロな雰囲気も併せ持つテラスハウスにもマッチしています。
「LOOC」のデザインを担当したハイアールアジア R&D イノベーションデザインセンター所属の渡邊悠太さんは、部屋に馴染むことをずっとこだわり続けたといいます。
「やっぱり部屋に馴染むことがとても大切。ブレずに、色やデザイン、サイズにこだわる。一方で、冷蔵庫としてヒンジやパッキンなど、デザイナーの本音としてはなくしたいけれど、なくせないものもある。通電した状態で使うものなので、壁に接した状態で置くことが一番ベストだと思い、キャビネットを参考にデザインしました。今回の展示でサイドボードのように飾っていただけたのは、狙いでもあったので、嬉しいですね」(ハイアールアジア R&D イノベーションデザインセンター所属の渡邊悠太さん)
開発期間は4年!コンパクトなボディに冷凍・冷蔵を左右に同居させた機能性にも苦心
開発期間は4年!コンパクトなボディに冷凍・冷蔵を左右に同居させた機能性にも苦心冷蔵庫の歴史を遡れば、ドアが木製のものだった時代はあるものの、ここまで家具そのもののデザインのものは多くありません。消費者は、冷蔵庫としての機能が標準的であるのはもちろんのこと、よりよいものを求めてしまうのは当たり前。
こだわりの外観、そして機能を両立させるため、なんと開発には4年もの歳月がかかったそうです。
「一番苦労したのは、やはりこのコンパクトなボディのなかに、冷凍と冷蔵を両立させることでした。冷蔵庫は、食品を保管するための収納庫。庫内は広くないと使い勝手は悪くなってしまいます。しかし、冷蔵庫には裏側にコンプレッサーなど冷気を循環させるための機構が詰まっています。右に冷蔵、左に冷凍という構造の冷蔵庫は、海外では大きいサイズで存在し弊社でも販売しています。その開発経験があったことが活かされています」(杉本さん)
キッチン以外の場所に置いた場合に気になる作動音ですが、そちらももちろん配慮済。インバーターコンプレッサーを搭載し、音が静かなだけでなく、省エネも実現。確かに、ちゃんと中は冷たいのに、音がしないのです。冷蔵・冷凍の温度も5段階の温度調節機能がついているので、自分の使い方に合わせて選べる仕様なのもうれしいポイント。
「この『LOOC』を通して、その方のライフスタイルや家での過ごし方が豊かになるように使っていただけることが一番嬉しいですね」(杉本さん)
家具冷蔵庫「LOOC」は、主要家電量販店およびECサイトなどで予約を開始していて、2024年9月上旬から販売開始の予定。2台目冷蔵庫やオシャレな冷蔵庫をお探しの方、要チェックです。
大阪生まれ。IT系出版社に勤務後、「女性にもITをもっと分かりやすく伝えたい!」とIT系編集・ライターとして独立したはずが、生来の好奇心の強さとフットワークの軽さから、気が付けばトレンドライターとして幅広いジャンルを取材・執筆するように。商業施設や店舗の出店や話題の新商品など、時流にまつわるできごとをさまざまな切り口で伝えています。