まずは「桜餅」と「道明寺」について調べてみると…
null桜餅
小麦粉を水に溶いて薄く焼いた皮で飴を巻き、塩漬けにした桜の葉で包んだ菓子。もとは小麦粉の皮に小豆餡を包み、塩漬けにした桜の葉でおおって蒸した。
【出典】日本国語大辞典 小学館
道明寺
道明寺粉を材料として作った和菓子。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
つまり「桜餅」と「道明寺」の違いって?
桜餅には関東風と関西風の2タイプがあります。
小麦粉を水で溶いて薄く焼いた生地に餡を包み、それを塩漬けした桜の葉でくるんだのが関東風。
一方、生地に道明寺粉(もち米を蒸して乾燥させ粗挽きしたもの)を用いるのが関西風で、「道明寺」として親しまれています。つぶつぶとした食感が特徴で、形もおまんじゅうのようにまるっとしているのが主流。
関東風と関西風とでは、生地の原料と見た目に違いがあるんですね。
“桜餅”と言っても、思い浮かべる姿は地域によって異なるようです。
東の長命寺、西の道明寺…桜餅の起源は?
null「桜餅について、“東の焼き桜 西の道明寺”なんて言ったりもするようです」と料理研究家の時吉さん。
「関東の桜餅は、1717(享保2)年、江戸向島にある長命寺の門番・山本新六という人物が考案したと言われています。
向島は桜の名所で大量に落ち葉が出るため、どうにか活用しようとしたのが始まりなんだとか。塩漬けにした葉で餅を包んで売り出したところ、名物になったそうです。
その山本新六を創業者とする『山本や』が、現在も長命寺桜もちを販売しているんですよ。生地は着色されていない白色で、桜の葉が3枚巻かれているのが特徴です。
関東では、桜餅のことを“長命寺”と呼ぶところもあるようです」(以下「」内、時吉さん)
元祖桜餅、食べてみたくなりますね!
「関西風桜餅の“道明寺”に使われる道明寺粉は、大阪・藤井寺市にある道明寺という尼寺に由来します。
この寺では、もち米を蒸して干した“道明寺糒(ほしい)”が作られていました。水やお湯を注ぐだけで柔らかくなることから、保存食として重用されたようです。その糒(ほしい)を砕いたものが道明寺粉です。
主に関西風桜餅の材料として使われますが、この他にも、冬に食べられる“椿餅”や、衣に用いて揚げる“道明寺揚げ”などにも使われるんですよ」
和菓子の道明寺って、なんでお寺の名前なんだろうと思っていましたが、その原料が作られたお寺の名前にちなんで呼ばれていたんですね。
「“粉”とあるので粒子の細かなものを想像されるかもしれませんが、かなり粒感があるんですよ。半分の大きさに砕いたものは2つ割、1/3の大きさに砕いたものは3つ割という感じで、数字が大きくなるにつれて粒は細かくなります。
一般的に和菓子の道明寺に使われるのは、適度な粒感ともっちりとした食感から5つ割の道明寺粉が多いようです。
おうちで作る時、もし、口当たりを滑らかにしたい場合は、より細かく砕かれた道明寺粉を選ぶ……といった具合にお好みで選んでみてくださいね」
粒の粗さの選び方、勉強になりました!
時吉さんが代表を務める「クッキングクロッカ」のYouTubeチャンネルでは、2つの桜餅(道明寺と焼き桜)の作り方が紹介されています。おうちで作る際は、こちらをぜひご参照ください!
桜の葉って一緒に食べていいの?
null関東風、関西風問わず、桜餅は塩漬けされた桜の葉にくるまれていますよね。
「塩漬けにした葉でくるむのは、“乾燥を防ぐ” “桜の香り付けをする”といった理由のためです。適度に塩味がつくのにも一役買っていますよね。
桜餅に使われる葉は、主にオオシマザクラという品種のもの。塩漬けにすることで生まれる“クマリン”という芳香成分を多く含んでいて、葉も大きめなので使われるようになったんだそう。そのほとんどが伊豆地方で栽培されているそうです」
そうだったんですね! 知りませんでした。
「桜餅を食べる時、葉も一緒に食べていいのかどうかは迷うところかもしれませんね。葉は食べることができますが、一緒に食べねばならないなんて決まりはありませんのでどうぞお好みで。
生地や餡の素材の美味しさを味わいたい場合や、葉の筋がかたい場合は葉を外して。塩気やより強く香りを楽しみながらいただきたい時は、一緒に召しあがってはいかがでしょうか」
ちなみに、桜の葉を3枚使っている長命寺桜もちでは、桜の葉を外すことを推奨していました。お店によっておすすめの食べ方もありそうですね。
以上、「桜餅」と「道明寺」の違いでした。あなたが馴染み深いのは、どちらの“桜餅”でしたか?
構成/kufura編集部
料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。
Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。