子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

絶対失敗したくない!「冷蔵庫」の選び方を【家電のプロ】に聞きました

初めまして家電ジャーナリストの岩崎です。2020年まで“白物家電”専門サイト『家電 Watch』編集長を務めており、さまざまな家電製品に触れる機会がありました。この連載「家電のプロに聞く!失敗しない家電選び」では、家電を選ぶ時にチェックしておきたいポイントを詳しくお伝えしていきたいと思っています。

家電には、高価なものも比較的手軽に買えるものもありますが、最も高価な家電のひとつが冷蔵庫ではないでしょうか。今回は、最新のものに買い替えるタイミングや、おすすめの機能など、冷蔵庫を選ぶときのポイントについてご紹介します。

冷蔵庫の買い替えタイミングは?

null

冷蔵庫は、8年から10年で買い換えるのが一般的だと言われていて、2021年の内閣府の消費動向調査(※1)でも、冷蔵庫の平均使用年数は12.9年という結果が出ています。

つまり冷蔵庫は、今後約10年間の家族の変化と暮らしをイメージして選ぶ必要があるのです。

例えばいま6歳のお子さんがいるご家庭なら、次に冷蔵庫を買い替えるのはお子さんが16歳、高校1年生のときになります。単に10年経つだけでも何倍も食べるようになりますね。

加えて高校生は毎日お弁当が必要な場合が多いですし、もしも運動部に入っていたら、予想以上の量を食べるかもしれません。逆にお子さんが現在高校生なら、いまが一番食べる時期かもしれませんし、10年後は独立して一緒に住んでいないこともあるでしょう。

冷蔵庫の容量は「約10年間で冷蔵庫に入れる食材が最も多い時期」を想定して選ぶと、失敗を減らせると思います。

※1(内閣府「消費動向調査 令和3(2021)年3月実施分」https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/honbun202103.pdf)

子育て中は食材ストックもたくさん必要になります。

必要な容量は、どう考えたらいい?

null

では、どのくらいの容量が適当なのでしょうか。いま使っている冷蔵庫を基準に「もっと大きい方がいい」と考えるのも、もちろん正解です。自分が考えている容量に自信がないというときは、大手家電メーカーなどが運営する日本電機工業会が目安となる容量を公開しています。(※2)

・家族2人まで:360〜410L(410〜460L)
・家族3人:430〜480L(480〜530L)
・家族4人:500〜550L(550〜600L)
・家族5人:570〜620L(620〜670L)
()内は、スペースに余裕がある場合のおすすめ容量

とはいえ、共働きなどで買い置きや作りおきが多く、冷蔵庫にたくさんの食品を保存している方は、もっと大きな容量を検討したいところです。また、先ほどの計算式はコロナ禍以前に作られたものです。コロナ禍以降「夫が在宅勤務になった」「子どもに在宅学習の日がある」など、家での食事回数が増えている場合なども、大容量を検討すると良いでしょう。

また冷蔵庫は、冷蔵室、冷凍室、野菜室で構成されますが、冷凍室と野菜室のどちらの容量が大きいモデルが欲しいかも大切です。実は、このどちらが大きいかを決めるだけで、ある程度モデルを絞り込むことができます。

このとき注意したいのが、製氷室が単体で引き出しになっている「独立製氷室」の容量です。この容量が冷凍室の容量に入っている場合もありますので、注意してください。

※2 日本電機工業会「ご家族の人数にあった冷蔵庫の容量をチェック」
https://www.reizoukonohi-cp.jp/

サイズは「設置場所」で決まってしまう!?

null

ほしい冷蔵庫の容量が決まっても、キッチンの設置場所に入るサイズかどうかも重要です。設置するにあたってチェックしておく必要があるのはこの4つ。

1:キッチンの奥行きを調べる

国内大手メーカーが販売している家庭用の現行モデルの冷蔵庫は、450~550Lでは横幅が60、65、68.5cmのいずれかとなっています(一部メーカーや一部のモデルを除く)。

しかし奥行きは機種ごとに異なっており、上記のモデルで、63~74.5cmと10cm以上の幅があります。また一般的なキッチンの奥行きは60、65cmの場合が多いため(一部は55cm)、冷蔵庫の奥行きを調べないで購入してしまうと、冷蔵庫だけが飛び出してしまうということも。

キッチンを一列に揃えたい場合や、冷蔵庫の出っ張りを減らしたい場合などは、先に冷蔵庫の奥行きを決めてから選んでもいいでしょう。

2:放熱スペースの正しい確保

もう一つ設置場所関連で大切な要素として、放熱スペースの確保があります。冷蔵庫がきちんと放熱できないと、食材を効率良く冷やすことができないばかりか、冷蔵庫の故障の原因にもなりますので、放熱スペースを正しく確保しましょう。

現行の450~550Lモデルは、天面から放熱しているものがほとんどですので、冷蔵庫の上に物を置かず空けておきましょう。ただし一部、背面や側面から放熱を行うモデルもあり、その場合は背面や側面にメーカー指定の空きスペースを確保する必要があります。購入前にきちんと調べて、放熱面を把握し、設置スペースとの兼ね合いを検討しましょう。

3:ドアの開き方の確認

またキッチンの通路の幅によって、ドアの開き方も大切です。キッチン通路の幅が狭いのに片開きタイプのドアを選んでしまうと、場合によってはドアを全開できない場合もあります。ドアを開けたときに、他の家族が通路を行き来することが多いのであれば、フレンチドア(観音開き)を選んでおくのが無難です。

4:搬入経路を調べる

サイズの問題で、忘れがちなのが搬入経路の確保です。冷蔵庫の容量、幅、奥行きが決まったら、その冷蔵庫が玄関や庭の窓などから入るのか、また入り口から設置場所までに家具などの障害物などがないかも確認しましょう。前のモデルよりも大きい冷蔵庫を購入したものの、家の中に入れられず、返品交換となった事例もあります。気をつけてください。

冷蔵庫は容積が大きいので、インテリアに与える影響も侮れません。

大切な「使い勝手」はぜひ実物で確認を

null

冷蔵庫は、やはり高価な買い物ですので、ほしいモデルをいくつかの候補まで絞り込んだら、ぜひ店頭で実物を見てみましょう。そのときに、確認しておきたいポイントを3つお伝えします。

1:ドアポケットの形状

まずはドアポケットのトレイのレイアウトを見てみましょう。ポケットは主にペットボトル、調味料といったボトル類を入れるかと思いますが、入れておきたい物がぴったり入るとやはり便利です。またドアポケットは、普段はあまり冷蔵庫を使わない家族が物を出し入れしやすい場所でもあるので、上手に活用できるといいですね。冷凍室、野菜室のトレイ類も、深さやレイアウトが自分にとって使いやすいかどうかも見ておきましょう。

2:冷凍室、野菜室の位置

レイアウトという視点では、冷凍室、野菜室のどちらが下なのかという点も使いやすさに関わってきます。この上下は好みで決めて問題ありませんが、それまでとは上下が逆のモデルに変えたい場合には、店頭で利用シーンをイメージをしながら、ドアを開け閉めしたり、中の物を出し入れする動作をしてみるといいと思います。

3:庫内の最上段の奥に手が届くか?

また冷蔵庫に入れた物を忘れがちな場所が、最上段の段の奥です。「いつ買ったのか分からないジャムの瓶がずっとある」といった経験はありませんか。450~550Lのモデルですと最上段はかなり高く、さらに奥となると手が届きにくいため、物を出し入れしにくいものです。ですので、その場所にアクセスしやすいかを試してみましょう。この点、冷蔵庫に必要な部品を最上段の奥に配置して、もともと奥が出っ張っている作りになっているモデルなどもあります。

そのほかにも、注意したいポイントが!

null

野菜室・チルド室など…用途によってチェックを

冷蔵庫と野菜室では、保存温度が異なることをご存知でしょうか。メーカーによって若干温度は異なりますが冷蔵庫はおよそ3~6度C、野菜室は約3~8度Cで、野菜室の方が保存温度が高めです。また冷凍室はおよそマイナス18度Cで、これはJIS規格(日本工業規格)で定められています。実は、冷蔵庫の「チルド」「パーシャル」の保存温度も、JIS規格で定められているのです。

チルドは約0度Cで、食材が凍る寸前の温度です。冷蔵庫より低い温度で保存することで、より長期な保存を実現します。冷凍させたくないチーズや納豆などの保存に適しているといわれています。

パーシャルは約マイナス3度Cで保存しますので、肉や魚などはやや凍りはじめますが、完全には凍っていない状態です。完全に凍っていないため、カットや調理がしやすい状態で保存でき、肉や魚の保存に適しています。

製氷機の機能と使い勝手も大切

製氷関連の機能は、重要視するご家庭もると思います。水タンク式の自動製氷機能はもちろん、製氷機の温度を一時的に下げることで素早く氷を作れる即氷機能などがついたモデルもあります。例えば氷をたくさん使うご家庭なら、タンクの水が切れたときに「どんなお知らせをしてくれるか」も大切ですね。

「食材保存」のための各種技術も調べておきたい

またメーカー各社が食品をより長く保存するために、温度管理、真空、湿度調整などの技術を投入しています。食品ごとに最適な温度で保存したり、食品周囲の空気減らして腐敗を防いだり、湿度を調整することで野菜の水分を保つといった工夫が盛り込まれています。

最近ではイオンを利用して、カビなどを防ぐ除菌機能もあります。これらの機能は実際に使ってみて初めて実感できるもの。ですので、購入前はパンフレットやWebサイトなどを良く読んで、気になる機能があれば、店員さんに質問したり、ネットで口コミを検索してみるのがおすすめです。

ファミリー向け冷蔵庫に製氷機能はデフォルトで付いているものが多い。

セカンド冷蔵庫or冷凍庫という選択肢

null

大型の冷蔵庫がほしいと思っても、住宅の冷蔵庫スペースに入らないという場合は、2台目の冷蔵庫を導入するという選択肢もあります。コロナ禍以降、外出制限と家食が増えたことで食品の買い置き需要が高まり、セカンド冷凍・冷蔵庫を導入するお宅が増えています。

2台目用途の小型モデルは、冷蔵庫のみ、冷凍庫のみ、冷凍冷蔵庫から選ぶことができます。

内部のレイアウトは、冷蔵室は従来の棚タイプが多いですが、冷凍専用庫は使いやすい引き出しタイプが増えています。容量にもよりますが、約100L前後のものはおよそ50cm四方の床面積に設置できますので(放熱スペース、ドア開閉スペースを除く)、検討してみてはいかがでしょうか。

冷蔵庫は、選ぶ際に気をつけたいポイントが、実はたくさんある家電です。

最も重要なのが、設置場所に入るかどうか、搬入できるかどうかですので、ここは最優先で考えましょう。それ以外は、みなさんのお好みを尊重しつつ、大切なポイントや気にならない点など、優先順位をつけて検討するのがいいのではないでしょうか。

岩崎綾
岩崎綾

家電ジャーナリスト、フリーランス編集者。2020年まで“白物家電”専門サイト「家電 Watch」編集長を務め、独立。以降、さまざまな編集やコンサルティング等で活躍中。https://iwasaki.works/

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載