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機能やモデルが多すぎて悩む「電気調理鍋」の選び方を【家電のプロ】に聞きました

こんにちは、家電ジャーナリストの岩崎です。2020年まで“白物家電”専門サイト『家電 Watch』編集長を務めており、さまざまな家電製品に触れる機会がありました。この連載「家電のプロに聞く!失敗しない家電選び」では、家電を選ぶ時にチェックしておきたいポイントを詳しくお伝えしていきたいと思っています。

今回は、電気調理鍋の選び方についてお話しします。

電気調理鍋のメリットは、なんといっても「放ったらかし調理」ができる点です。食材と調味料を入れてボタンを押せば、あとは出来上がりを待つだけでよいので、調理以外に時間を使えて忙しいときには重宝しますね。また忙しくない日も「自分の時間」を作ることができます。

今回は、ご家庭用ということで約2L以上の容量のモデルの選び方のポイントをご紹介します。選び方としては、まずは容量と設置場所の問題がありますが、それ以外についてはお好みで優先順位をつけて選びましょう。今回の選び方のポイントは、以下の通りです。

  • 容量(設置場所)
  • 圧力、無水、低温、スロー、発酵調理の有無
  • 撹拌機能の有無
  • 調理メニューの数やレシピの好み
  • 洗浄や手入れ
  • 安全面とフタの開閉方式
  • 自動調理以外の加熱や、その他の機能

容量(設置場所)~家族の食べる量はどのくらい?~

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まず最初に考えるのは、やはり容量です。基本的に家族が食べる量をベースに考えましょう。また数日分の料理を作り置きしたいという場合は、より大きなモデルを考えるのもいいでしょう。

とはいえ、電気調理鍋のサイズは容量の「L」で書かれ、一般的な鍋のサイズは直径の「cm」で書かれていますので、容量と言われてもピンとこない人もいるかもしれません。

以下に、一般の鍋の容量を挙げておきます。普通の鍋は正面から見たときに、横長のもの(ここでは両手鍋)と、およそ正方形のもの(ここでは寸胴鍋)がありますので、参考にしてみてください。また今回の直径は内寸法ですので、多重構造などで鍋本体に厚みがある場合などは、注意してください。

・両手鍋20cm:約3L  (目安として1~2人分の調理が可能)
・両手鍋22cm:約3.8L(2~3人)
・両手鍋24cm:約4.5L(2~4人)
・寸胴鍋20cm:約6L(2~4人)
・寸胴鍋22cm:約7.6L(5~6人)
・寸胴鍋24cm:約9L(7~8人)
※両手鍋は深さ10cm、寸胴鍋は深さ20cmの場合。すべて満水容量

どこに置くかで、サイズ選びも変わる

「満水容量」と「調理容量」の違いにはご注意を。電気圧力鍋「Re・De Pot(リデポット)2L」は満水容量2L、調理容量1.2Lです。

電気調理鍋は機械や保温機能がある分、同容量の普通の鍋と比べるとサイズがかなり大きくなります。実際の外寸も注意して見るようにしましょう。設置場所という意味では、製品を正面から見たときに、横長(底面積が広め、高さが低め)のものと、縦長(底面積が狭めで、高さが高め)のものがありますので、置き場所に応じて選びましょう。

容量を検討するときに、1つ注意点があります。例えば製品の容量が“1L”の場合、その容量は“満水容量”か“調理容量”かという点です。満水容量は鍋の上端スレスレまでの容量で、調理容量は実際に調理が可能な最大容量です。普段使っている鍋でも、上端スレスレまで中身を入れて調理しないことと同じで、調理鍋も実際には“調理容量”で使います。現在入手できる最大の電気調理鍋は、満水容量が6Lです。

メーカーによって、カタログやWebサイトに書かれている容量が“満水容量”のときと、“調理容量”のときがありますので、注意しましょう。

圧力、無水、低温、スロー、発酵調理の有無~自分の調理にどの機能がマスト?~

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次に、圧力調理、無水調理、低温調理、スロー調理、発酵調理の有無です。

まず圧力調理ですが、この機能があると食材に早く火が通るため、調理を時短できて便利ですよね。共働きで、帰宅後に調理を開始することが多い場合には特に便利です。あった方がいい機能ですが、ない方が製品の価格が安い傾向があります。ですので、朝の出勤前など時間に余裕をもって、食材を鍋に入れられるなら、なくても良いと考えることもできます。

無水調理は、野菜などから出た水分を利用して、煮物やカレーなどを作る調理方法で、食材本来の旨味を引き出しながら、栄養を逃さずに食べられる点などがメリットです。水蒸気を逃さないように鍋フタがきっちり閉まる必要があります。

低温、スロー、発酵調理は、鍋が温度を一定に保つ機能を利用したものです。低温調理は、鶏ハムやローストビーフ、コンフィなど、肉や魚を加熱しすぎずにしっとりと仕上げられるため、人気の調理法です。またスロー調理は、沸騰よりやや低い温度で長時間煮込んで仕上げる調理法で、食材が煮崩れしにくく、味が染み込みやすいというメリットがあります。発酵調理は、例えば米と麹から甘酒を作ったり、ヨーグルトなどを作れるほか、パン生地などを発酵させることができます。

2L以上のモデルでは、無水調理、低温調理、スロー調理、発酵調理は対応しているものが多いです。圧力調理は、あるモデルとないモデルがあります。自分の使い方や、他の機能のあるなしも含めて、お好みに応じて選びましょう。

sirocaの電気圧力鍋シリーズ「おうちシェフ」。

撹拌機能の有無~あれば調理の幅は広がりそう~

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鍋の中に“ヘラ”を搭載し、中身をかき混ぜながら加熱できる“撹拌機能”を搭載するモデルがあります。このタイプならではの調理メニューには、以下のようなものがあります。

  • 野菜などを煮たあとに潰してポタージュスープを作れる
  • 食材を焦がさずに炒め物を作れる
  • あめ色玉ねぎを作れる
  • ホイップクリームやメレンゲを作れる

これらのモデルは、もちろんヘラをセットせずに加熱し、食材を潰さずに調理することもできます。また自動調理メニューのなかには、煮込み料理でもヘラを使う場合があります。この場合は、一定時間に1度かき混ぜることで、食材の味ムラをなくすために使われます。ヘラは底側についているモデルと、フタ側からぶら下がっているモデルがありますが、ヘラのついている場所による大きな差はありません。

また鍋を少し傾けた状態で固定したうえで、鍋自体を回転させ、食材を撹拌しながら加熱するモデルもあります。こちらはメレンゲなどは作れませんが、業務用の鍋を参考に作られたため炒め物が得意です。撹拌機能は、ごく一部のモデルにしか搭載されておらず、またあると価格は高くなってしまいます。

自分がどんな調理をしたいかによって、優先順位をあげるといいでしょう。もし「炒め物を電気鍋で作る予定はなく、ポタージュスープだけを作りたい」のであれば、ポタージュスープメーカーという加熱機能のあるミキサーのような形状の製品もあります。

パナソニック「オートクッカー ビストロ」の撹拌機能で、あめ色の玉ねぎも簡単に作れます。

調理メニューの数やレシピの好み~便利な自動調理メニュー~

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電気調理鍋は、メニューの食材と調味料を入れて放っておくだけで調理できる点が一番のメリットです。そのため搭載する自動調理メニュー数が多い方が便利ですが、多すぎると覚えられないこともあるでしょう。また自分が作らない料理のメニューが多くても、あまり嬉しくありませんね。

実は2L以上モデルでも、自動調理メニューを50以上搭載しているモデルは半分以下しかありません。自動メニューが多いモデルを探しているのであれば、その時点である程度モデルが絞られてきます。またスマートフォンを経由してネット接続することで、自動調理メニューをダウンロードして追加できるものもありますし、また有名料理店などの監修メニューが入っているモデルもあります。

自動調理メニューが多いモデルでは、メーカーのWebサイトで「調理メニュー一覧とそのレシピ」をダウンロードできることが多いです。大抵は、製品ページからたどれる“取扱説明書”の周辺でPDF形式で公開されています。

公開されているメニューやレシピで、以下を見てみるといいでしょう。

  • 自分が作りたい、食べたいメニューがあるか
  • 分量は自分が作っているものに近いか
  • 味付けが自分の好みに近いか

味付けの好みが合うレシピブックがあれば最高

自動調理機能がある、パナソニック「オートクッカー ビストロ」。

もちろん食材の分量や味付けは実際の調理時に調整できますが、食材の分量を増減すると自動メニューの加熱では過不足が出てしまい、結局は自分で加熱時間を設定しなければならないことも。完全に放ったらかし調理ができるという意味では、やはりメニュー通りに作る方が手軽です。

また調味料の量も加減できますが、例えば食材を柔らかくする効果のある砂糖・酒・みりんを減らしすぎると、出来上がりの肉が硬くなるといったこともありますので、自分好みの味付けの製品があれば、それが一番おすすめです。

自動調理メニューが少ないモデルでは、「炊飯、肉じゃが、豚の角煮などの基本メニュー」や「炊飯、焼く、煮る、蒸すなどの調理モード」が調理メニューになっているものが多いです。調理方法別メニューの場合は、調理機能を活用できるレシピブックが付属しているかも注意して選ぶといいでしょう。

洗浄や手入れ~強いニオイも問題ない?~

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ニオイが気になる調理No.1はカレー。写真は「家族が喜ぶ【野菜たっぷりキーマカレー】ママ料理家 楠さんちのホットクックレシピ Vol.29」より。

調理家電は毎日のように使うものなので、お手入れの手軽さも重要なポイントですね。電気調理鍋のだいたいのイメージは炊飯器と同じですので、内鍋や裏ブタ、蒸気を溜める汁受け、撹拌に利用するヘラなどは、手軽に取り外して洗浄できるようになっています。圧力機能があれば、圧力ピンも洗浄可能です。またこれら部品を、食器洗い乾燥機で洗浄できるモデルもあります。

しかし炊飯器とは違い、カレーなどのニオイの強い料理を作ることもあるでしょう。炊飯器調理などをしたことがある方ならお分かりかと思いますが、ニオイが強い料理の後に炊飯すると、ニオイが気になる場合があります。またフタを密閉するために使われる、パッキンなどの樹脂素材は、比較的ニオイが取れにくいものです。

ニオイ消しに便利なのが、自動洗浄モードです。水を入れてスイッチを入れると、蒸気でニオイを消すことができます。水と一緒に重曹やレモンを入れて使うモデルもあります。せっかくの電気調理鍋ですので、いろいろな料理を作りたいという場合には、便利な機能です。

安全面とフタの開閉方式~小さい子どもがいる場合は安全性を確保~

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加熱中の鍋は大変熱くなっていますから、特に小さいお子さんがいる家庭などでは、鍋の転倒には気をつけたいものです。電源コードと本体の接続部がマグネット式になっているものは、万が一コードに足を引っ掛けても鍋が転倒しにくいので、コンセントと鍋の間に距離がある場合には検討するといいでしょう。

またフタの開閉方式も、小さいお子さんがいる場合には、優先順位を上げて検討した方がいいかもしれません。フタの開閉方式は、ボタンを押すとフタが開閉するプッシュ式と、フタやツマミなどをひねったりスライドさせて開閉するスライド式があります。

プッシュ式はフタの開閉がしやすい点がメリットですが、小さいお子さんでも簡単に開閉できてしまうため、注意が必要です。スライド式は、プッシュ式より開けにくいぶん小さなお子さんの事故にはつながりにくくおすすめです。ただしどちらの開閉方式であっても、圧力調理の最中にフタを開けると沸騰中の飛沫が一気に鍋の外へ飛び出してしまい大変危険ですので注意しましょう。

また電気調理鍋の中には、フタを完全に取り外した状態で加熱でき、卓上での鍋料理などで使えるグリル鍋にもなる製品があります。置き場所の意味などでもメリットがありますので、検討材料に加えてもいいでしょう。

自動調理以外の加熱や、その他の機能~蒸し器やスマホ連携など~

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食材の分量を変えて調理したいときや、冷めた料理を再加熱したいときなど、自動調理メニュー以外で加熱を行うこともあります。またタイマーで調理を開始したり、料理を保温したいこともあるでしょう。手動調理や再加熱、タイマー調理や保温機能は、ほとんどの2L以上の家族向けモデルに搭載されていますが、ないものもありますので、注意してください。

また搭載されているモデルは少ないですが、蒸し器のような専用のザルをセットして2段を同時に調理できるモデルは、付け合わせなどを調理するのに便利です。

そのほかにも、スマートフォンと連携することでメニューの追加以外に、外出先から操作できるものや、音声案内機能、スマートスピーカーとの連携機能をもつモデルもあります。

2段調理といえばシャープの「ホットクック」。蒸しトレイを使って上段で蒸し物、下段で煮物やスープなどの調理が同時にできます。

今回もいろいろなポイントをお伝えしましたが、容量や設置のポイントと、圧力調理と撹拌機能があると価格が高くなる点以外は、お好みで優先順位を上げ下げしましょう。自分の調理スタイルなどにあった、使いやすいモデルを選べるといいですね。

岩崎綾
岩崎綾

家電ジャーナリスト、フリーランス編集者。2020年まで“白物家電”専門サイト「家電 Watch」編集長を務め、独立。以降、さまざまな編集やコンサルティング等で活躍中。https://iwasaki.works/

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