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何を基準に選べばいい?「スティック掃除機」の選び方を【家電のプロ】に聞きました

こんにちは、家電ジャーナリストの岩崎です。2020年まで“白物家電”専門サイト『家電 Watch』編集長を務めており、さまざまな家電製品に触れる機会がありました。この連載「家電のプロに聞く!失敗しない家電選び」では、家電を選ぶ時にチェックしておきたいポイントを詳しくお伝えしていきたいと思っています。

今回は、スティック掃除機の選び方をご紹介したいと思います。ご紹介するポイントは、以下のとおりです。

  • ゴミ集じん方式(サイクロン、紙パックなど)
  • バッテリーの寿命と価格
  • 重量感
  • お手入れとフィルター
  • ヘッドの特徴
  • 付属ノズルの種類

それぞれについて、選ぶ際に考えたいポイントや注意点などを説明していきますので、重視したい点や気になる点、あまり気にならない点など、自分なりの優先順位をつけて、選ぶといいでしょう。

スティック掃除機が流行った背景

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私たちが子どもの頃、掃除機と言えば“キャニスター型掃除機”(以下、キャニスター掃除機)でしたが、いまやすっかり“スティック型掃除機”(以下、スティック掃除機)が主流になりました。

年間の出荷台数で、スティック掃除機がキャニスター掃除機を上回ったのは2018年のことです(※1)。ちょうど5年前で、これ以降はスティック掃除機の方がたくさん販売されています。

キャニスター掃除機は、重さなどから持ち運びしにくく、また電源コードがあるため移動の自由度が低いため、あっという間にスティック掃除機が主流になりました。

スティック掃除機の代名詞といえば“『ダイソン』のコードレススティック掃除機”ですが、実は『ダイソン』の日本上陸以前も、スティック掃除機は国内で販売されていました。しかし、バッテリーが長持ちしない、吸引力が弱いといった課題があり、それほどポピュラーにはなっていませんでした。

スティック掃除機が現在のように流行った背景は、大きく2点あります。1つはバッテリーの大容量・低価格化、もう1つがモーターの小型・低価格化です。これらの進化によって、掃除機の駆動時間(動かせる時間)が伸び、吸引力を維持しながら、本体重量を抑えられるようになったのです。

※1 調査会社「GfKジャパン」調べ https://www.gfk.com/ja/insights/1904ceandha

スティック掃除機の代名詞的存在の『ダイソン』。

4つのゴミ収集方式

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掃除機選びのなかで最初に浮かぶのは、サイクロン式か紙パック式かというゴミ収集方式だと思います。掃除機のゴミ捨ても毎日の暮らしの中では意外と重要で、ホコリが舞うのがストレスという人もいるのではないでしょうか。

従来のサイクロン(ダストカップ)式と紙パック式に加えて、最近はダストステーション式という新しいタイプもありますので、それぞれの特徴を見ていきましょう。

サイクロン式

サイクロン式は、ダストカップの中にホコリなどがそのまま入っている状態ですので、捨てるときにどうしてもホコリが舞ってしまいます。ホコリにアレルギーがある方などは、避けたほうが良いかもしれませんね。

ただし一部のモデルでは、ダストカップ内に気流を発生させることで、ホコリを毛玉状に丸められるものもあり、こちらはホコリが舞わない点が特徴です。

紙パック式

紙パック式は、ゴミ捨ては楽ですし、捨てたあともゴミが袋に集まっていてよいのですが、紙パックのランニングコストがかかってしまいます

また、このあと詳しく書きますが、排気をキレイにするための“フィルター”の役割を紙パックの袋自体が兼用していることも多いです。

フィルター兼用

フィルター兼用の場合は、利用頻度にもよりますが、紙パックの中身が一杯になる前に、袋が目詰まりしてしまい吸引力の低下を感じることがあります

とはいえ最近は紙パック式も進化していて、ゴミと空気の通り道を分けることで紙パックの袋が目詰まりしにくいように改良されたタイプも発売されています。

ダストステーション式

ゴミ捨てという視点でもっとも新しいのは、ダストステーション式です。これは、掃除機の充電台に、掃除機の中のゴミを吸い出して溜めておくダストボックスを備えたもので、ゴミ捨ての回数を減らすことができます。現在販売されているモデルでは、約1〜1カ月半のゴミを溜められるとしています。

ダストステーションのゴミを捨てるときは、紙パック式のものと、ステーションのダストボックスを取り外してゴミを捨てるタイプのものがあります。

パナソニックのセパレート型コードレススティック掃除機は、ダストステーションタイプ。

バッテリーの寿命はどのくらい?

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スティック掃除機選びでは、バッテリーもかなり重要なポイントです。そして実は“電源コードあり”タイプのスティック掃除機もあります。電源コードがあるために移動の自由度は減りますが、バッテリー式と違って電池持ちを気にせずにパワフルな吸引ができる点はメリットです。

バッテリー式の場合は、やはり電池持ちが気になりますね。バッテリー式の掃除機では、多くの場合、吸引力を大・中・小といった具合に調整できるようになっています。これはカーペットなどと比べると大きな吸引力がいらないフローリングの住宅が増えたこと、また限られた電池を有効に使うための工夫です。

実際に購入するときは「1回の充電で◯分稼働」とカタログなどに書かれていると思いますので、大・中・小のどのモードでの稼働時間かをよく見るようにしましょう。メーカーによって意外と異なるので注意が必要です。

現在の主流バッテリーはリチウムイオン二次電池

現在、スティック掃除機に搭載されるバッテリーは、リチウムイオン二次電池(以下、リチウムイオン電池)と呼ばれるタイプのものです。スマートフォンなどと同じなので皆さんもよくご存知かと思いますが、リチウムイオン電池を始めとする“充電式電池”は、長期間使うほど電池持ちが悪くなってしまいます。そして充電式電池の寿命は、基本的に充電(=放電)回数で決まってきます

「1回の充電と放電のセット」を「1サイクル」と呼ぶのですが、リチウムイオン電池のおよその寿命は、約500~1000サイクル程度と言われています。スティック掃除機の場合、「1日に1回充電して毎日掃除する」となると、約1年半〜3年程度で寿命が来ることを知っておきましょう。これは「掃除は3日に1度しかせず、充電は掃除ごと」という場合には、電池が寿命を迎えるまでに約8〜10年弱かかるということです。

では、掃除機の買い替え頻度はどのくらいなのでしょうか。内閣府の調査によると平均使用年数は7.5年という結果が出ています。

もしも7.5年間に1つの掃除機を使い続ける場合、2日に1度以上掃除をする(充放電がある)なら、買い替えまでの間に1回以上は電池交換をすることも視野に入れておきましょう。ですので、購入時の価格と一緒に「バッテリー交換にかかる費用」の1~2回分を見込んで、購入価格を見極めることがおすすめです。

バッテリー交換は自分?メーカー?

バッテリー交換はおよそ3タイプがあります。バッテリー自体をすぐに取り外して交換できるモデル、ドライバーなどを使えばユーザーでもバッテリーを取り外して交換できるモデル、メーカーへ本体を送ってバッテリーを交換してもらうモデルです。

ユーザーが自分でバッテリーを交換できるタイプであれば、バッテリー単体の価格を調べましょう。メーカーへ送ってバッテリーを交換してもらうモデルの場合、バッテリー交換にかかる料金が公表されていない場合もあります。このようなときは、体験者の口コミがないか調べてみるといいでしょう。

リチウムイオン電池は寿命がきたら、大手家電量販店や地方自治体、メーカーの回収サービスを使って処理しましょう。気軽に捨ててはいけません。

「重すぎる」「大きすぎる」を防ぐ

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スティック掃除機のユーザーから「本体が重くて、電池が切れるまで使えなかった」「本体が長すぎて、操作しにくい」という声を耳にしたことがあります。

最初に重さですが、スティック掃除機はモーターやバッテリーなどの全てのパーツを片手で支えることになるので、キャニスター式と比較するとどうしても重い印象があります。腕力に自信がない方はできるだけ軽いモデルを選びたくなってしまいますね。

スティック掃除機で、重さに大きく関係ある主な部品は、やはりバッテリーとモーターです。いずれも小型・軽量化は進んでいますが、やはりバッテリーは大きい方が電池持ちが良いですし、モーターも概ね大きい方が吸引力が高いです。本体重量が軽いモデルは、それらが大きくて重いモデルと比較すると、基本的には、電池持ちや吸引力が少ない場合が多いです。

自走式、バランス感に注意!まずは試して

しかし、スティック掃除機の重量感は実際の本体重量だけでは判断できない点も、注意してほしいポイントです。

手首や肩にかかる重量「感」では、実は以下の2点が重要です。

・本体の重心がどこにあるか、重さがどこに偏っているかといった、本体全体の重量バランス(本体設計)
・使用者の身長や腕の長さという身体的要素と、本体長さの関係(使用者と製品との関係)

加えて、ヘッドが自走式であれば重量感は軽減されます。これはヘッドの引っかかりの問題ですので、例えば自走式であっても、カーペットはフローリングよりも引っかかりが大きい分、重く感じてしまいます。

いまは1つのメーカーでも、重量はあるもののパワフルで電池持ちの良いモデル、電池持ちやパワーよりも軽快な操作感を目指したモデルなど、複数をラインアップしていることが多いです。重量感は使用者の身長や腕の長さにも関係しますので、自分にあった重量感や大きさは、やはり実際に店頭で試してみるのが一番です。電源を入れて自走式ヘッドが回転している状態で、お宅の床と似た素材の床で試せるとベストだと思います。

床材、カーペットの有無によって、感じる重さは変わります。

お手入れしやすいモデルが増えている

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先程、紙パック式のところで“フィルター”の話が出ましたが、フィルターも重要です。掃除機が排気する空気はやっぱりキレイな方が良いですよね。私は子どものときからホコリアレルギーがあるのでなおさらです。掃除機には2つのフィルターがあり、それぞれの素材も大きく2種類があります。

掃除機は、例えると大きな筒のようなもので、筒の中にあるモーターで空気を一方方向に送っています。入口にあるゴミを吸い込んで、まずダストカップや紙パックに入ったゴミと空気を分けるフィルターがあります。

紙パック式の場合は紙パックの袋がこのフィルターの役目をしている場合がありますし、サイクロン式のモデルには、このフィルターがなく空気の力でゴミと空気を分離しているものもあります。

そして筒の最後に、掃除機からの排気をキレイにするために、もう一度フィルターで空気を濾して排気します。このフィルターがないモデルもあります。

フィルターの素材、お手入れも重要です

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フィルターの素材は、布のような素材でできていて洗浄して繰り返し使えるタイプと、ろ紙のような繊維でできていて洗浄できず、一定期間で交換するタイプがあります。そしてどちらのフィルターも、汚れると排気が汚くなる以外に、吸引力も低下してしまいます。フィルターが目詰まりすると、空気の出口がふさがった格好になるために、本来モーターが持っているパワーで空気を吸って送り出すことができなくなってしまうのです。

ですので、掃除機が持つ本来の吸引力を維持するためには、フィルターの清掃や交換は実は重要です。水洗いできないフィルターの場合、一定期間での交換が必要になりますので、こちらも購入時には交換期間をよく見て、買い替え費用も購入価格に盛り込んで選ぶと良いと思います。

また掃除機は、やはり掃除の道具である以上どうしても汚れてしまいます。とはいえ、やっぱり清潔な方が嬉しいですね。

先ほどお話した通り、洗浄できるフィルターもありますし、ゴミを溜めておくダストカップはいまや洗浄できるモデルの方が多いです。また、ヘッドに内蔵されているブラシも洗浄できるものが多いのですが、なかには、これらが洗浄不可のものもあります。ですので、清潔さが重要な方は購入前にきちんと調べておきましょう。

定期的にダストカップもお掃除しましょう。

便利機能のついたヘッドが増えています

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またヘッド関連も重要な要素です。先ほど、自走式ヘッドの方が軽快に操作できるとお話したとおり、軽い操作感を求めるなら、自走式ヘッドは欲しい機能です。

また最近は、床のゴミ残りを検知する機能が搭載されたモデルも多いです。このタイプは、まだ床にゴミが残っている状態だと赤色等のランプが点灯し、床のゴミがなくなるとランプが消えるか、緑など別の色で点灯して知らせてくれます。掃除機がけは、床のゴミを吸い取り切れているか判断しにくいので、うれしい機能です。

さらにヘッドの中のブラシに特徴があるモデルもあります。フローリングの微細なゴミを効率よく吸い取るなら、ブラシはカーペットのような毛羽立った素材のものがおすすめ。逆に、カーペットなど毛羽立った床素材の奥のゴミを効率的に掻き出す場合は、硬めの素材のブラシがいいでしょう。また髪やペットの毛が絡みにくいブラシを搭載した製品もあります。これまで毛絡みをハサミでカットしていたというような方には助かりますよね。

その他には、ヘッドに灯りがついてソファやベッドの下を照らしてくれるものなどがありますので、お好みに応じて優先順位をつけましょう。

スティック掃除機は家中どこでも持ち運べるのが魅力です。

毎日使うからこそ、付属ノズルも大切

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実際に掃除機を購入するとなると、掃除機の先端につけるノズル類も実は重要だと思います。欲しいノズルがあるか、また不要なノズルが入っていることがコスト面でのストレスになることもありますね。

国内大手メーカーのスティック掃除機で一般的な付属パーツのうち、以下はだいたい付いていると思います。
・カーペットからフローリングまでを掃除できる自走式ヘッド
・細口ノズル(すきまノズル)
・ブラシのついた円形ノズル

そのほか製品に付属するノズルには、以下のようなものがあります。
・布団用ノズル(布団の張り付きを軽減しながらホコリやダニを吸い取る)
・角度調整ノズル(ブラシのついたノズルに角度変更できる箇所があり、家具の上などをブラッシングしながら掃除できる)
・とても毛が長いブラシノズル
・ブラシつきすきまノズル

・中間ジョイントとしての角度調整パイプ
・中間ジョイントとしてのジャバラホース
・中間ジョイントとしてのソフトで曲げられる管

そのほか、ホームセンターや100均などに掃除機の先端用ノズルがたくさんありますから、これらを利用するのも手です。とはいえ、付属品以外のノズルなどはできるだけ多くの掃除機に合うよう作られているために、手持ちの掃除機にフィットしにくい場合があることに注意しましょう。

特に接合(ジョイント)部がブカブカのときは、そこから空気が漏れて吸引力が低下してしまいます。また接合する箇所が多いと、どうしても継ぎ目から空気が漏れてしまうので、吸引力が低下してしまいます。できるだけ、接合の回数が少なくなるといいでしょう。

 

【参考】

「消費動向調査」(内閣府経済社会総合研究所 景気統計部・令和4年3月実施分)」

 

岩崎綾
岩崎綾

家電ジャーナリスト、フリーランス編集者。2020年まで“白物家電”専門サイト「家電 Watch」編集長を務め、独立。以降、さまざまな編集やコンサルティング等で活躍中。https://iwasaki.works/

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