ポイント経済圏とは、同じ企業グループや提携グループのサービスで共通のポイントを貯め、お金代わりに使えるシステムのことで、ドコモ、au、PayPay、楽天、イオンが5大ポイント経済圏と言われていましたが、今年はさらなる“ポイント経済圏”の話題が続々と登場しています。
「Tポイント」と「Vポイント」が統合して「青と黄色のVポイント」のサービスが開始、ドコモはAmazonとdポイントで連携し、JR東日本グループブランドのネットバンクサービス「JRE BANK」が新たに誕生し「JRE POINT」が付与されると発表、今年の12月頃に楽天ペイと楽天ポイントがアプリ統合することを発表など、今後、各社のポイント経済圏競争は激化することが予想されます。
どのポイント経済圏を選べばお得なのか、ポイント経済圏で得られるメリット、ポイントを活用した資産運用「ポイント投資」について、SBI証券の稲場浩紀さんにお聞きしました。
「ポイント経済圏」はひとつにまとめた方がいい?それともいくつか併用した方がお得?
nulldポイント、Pontaポイント、PayPayポイント、楽天ポイントなど複数のポイントを使っている人も多いかもしれません。
ポイントはひとつにまとめた方が早くポイントが貯まるのか、いくつか併用した方が様々なサービスが受けられるのか、迷うところです。
「ポイントを貯めるのだったらひとつに集約した方が効率は良いといえますが、ひとつの経済圏だとサービスが終了して使えなくなるといったことが起こりうるかもしれませんし、半永久的にずっと同じ条件が続くと断言できません。
複数あることによってこれは○○で、あれは××で貯めようと目的ごとの設定ができるので、管理しやすい3つほどを使い分けてもいいと思います」(以下「」内、稲場さん)
ポイ活の基本となるのがキャッシュレス決済。クレジットカードや○○ペイなど、ポイント還元や様々なキャンペーンでポイントが貯めやすくなります。
キャッシュレス決済に切り替えるときに必要なのが、引き落としをする銀行口座です。以前は登録できる銀行が限られていましたが、今はネット銀行など登録できる銀行が増えてきて自身の経済圏に合った銀行口座で登録することが可能となりました。
「銀行口座を作るのも手間がかかり一定のハードルがあります。クレジットカードもそうですが、数が多すぎると管理が難しくなります。口座もカードも先ほどお話しした経済圏同様に、3つ程度にしておくなど、自身で管理できる範囲が望ましいかと思います」
自分に合ったポイント経済圏を選ぶには?
nullどのポイント経済圏を選んだら良いのかも迷ってしまうところですね。自分に合ったポイント経済圏を選ぶ基準はあるのでしょうか。
「使っている携帯キャリアはポイント経済圏を選ぶ際の大きな基準になります。ドコモのdポイント、auのPontaポイント、ソフトバンクのPayPayポイント、楽天モバイルの楽天ポイント、この4つはスマホを利用している限り確実に貯まります。
これらは金融機関と連携しており、dポイントは三菱UFJ銀行のdスマートバンク、auじぶん銀行、PayPay銀行、楽天銀行と、携帯キャリアと銀行は大きな要素になります。
その他には交通系のような、自身の生活圏を基準に選ぶのも良いかと思います。交通系ICと一体型クレジットカードならよりお得に貯めることができます。また、水道・光熱費といった固定費の支払いもクレジット決済にしてポイントを貯めるというような、生活に結びつけることで、毎月一定のポイントを貯めることができます。
自身の生活圏と照らし合わせて、同じポイント経済圏に収まれば効率よくポイントを貯められるのでひとつでも十分です。ポイントのために無理をして別のポイント経済圏を新たに作る必要はないと思います」
どこがねらい目?今春新たにスタートした各ポイントサービスの特長とは?
null青と黄色のV ポイント
2003年に国内で初めて共通ポイントサービスの業界標準を作ったのが「Tポイント」。今年4月に三井住友カードが提供する「Vポイント」と統合し、ポイントと決済が融合した「青と黄色のVポイント」になりました。
提携先の店頭でVポイントが貯まるカードやアプリを提示するとポイントが付く「ショッピングポイント」、Visa加盟店で対象の三井住友カードやアプリで決済をすると貯まる「決済ポイント」がVポイントの貯め方です。
「Tポイントは、ポイントプログラムでは日本で最初に全国に広がり、知名度、加盟店数でも規模が大きかったのですが、母体がレンタル業のみで、後発の携帯キャリアや、楽天、リクルート系のサービスといった後ろ盾がなかったことが弱点でした。
統合で、後ろ盾となる銀行系のVポイントが付いたことで、知名度のTポイントと三井住友グループの資金力を背景としたVポイントは、他にはないポイントプログラムになったのではないかと思います。
もともとVポイントは、コンビニやファストフードでのポイントアップも行っており、ライトユーザーにはポイントが貯まりやすいカードとして知られていました。TポイントをVポイントが補完して、新Vポイントは普段使いする買い物で使えることが増えました」
Amazonと協業を発表したドコモ
今年4月から、dポイントクラブ会員はAmazonが運営するオンラインストアのAmazon.co.jpでdポイントを貯めたり、使えるようになりました。Amazon.co.jpでの買物で、他社のポイントを獲得、かつ利用もできるのは今回が初めてです。
「Amazonという巨大ECサイトと携帯キャリアのdポイントの協業は、とても大きなニュースです。Amazonが自社のAmazonポイントではなく、dポイントに還元するというのは他の経済圏にとっても脅威となり、特に母体が同じECサイトの楽天は警戒していると思います。
しかも、ポイントが貯まるだけじゃなくdポイントで支払えるという点も大きな利点です。他の携帯キャリアのような銀行やECサイトの後ろ盾がなかったドコモですが、その部分が拡充されたことで、ドコモユーザーにとっては大きなメリットになりました」
JR東日本グループブランドの金融サービス「JRE BANK」
今年5月からスタートしたのが、JR東日本グループブランドのネットバンクサービス「JRE BANK」。ビューカードが楽天銀行を所属銀行としたサービスで、受付開始当初は申し込みが殺到して、口座開設受付を中止したことでも話題になりました。
乗車券が4割引になる「JRE BANK優待割引券」、モバイルSuica限定の「Suicaグリーン券」、JR東日本がおすすめする4つの駅のどこかに新幹線で行ける「どこかにビューーン!」の2000ポイント割引クーポンなど、鉄道会社ならではのサービスが充実しています。
「利用者が非常に多いJR東日本という大きなインフラである鉄道会社が、新しく銀行を付加したポイントサービスを開始したのは衝撃的でした。他のポイント経済圏もライバルになるのか、共存できるのか、まだ探っている段階かと思います。中でも一番警戒しているのは航空会社系かもしれません。
JRE BANKは銀行取引でもJREポイントが貯まるようになり、ポイントは現金同様にSuicaのチャージにも使えるので、普段JR東日本を利用している人にとっては、さらにポイントのお得感が生まれると思います」
5月末には、ICカード「Suica」、クレジットカード「ビューカード」、インターネット予約サイト「えきねっと」など、今までは別々になっていたJR東日本グループの会員IDを統合することが発表されました。2025年度末までの共通化を目指しているとのことで、利用者の利便性を高めて、JR東日本グループ経済圏の拡大を図る狙いがあるとみられています。
それぞれのポイント経済圏がサービスでしのぎを削る“ポイント経済圏戦国時代”に突入しつつありますが、生活の中で一番身近に使っているキャッシュレス決済は何かを考えて、ポイ活をするのが基本といえそうです。
【教えてくれた人】
稲場浩紀さん
SBI証券 戦略事業推進部 兼 サービス開発部 部長。2級ファイナンシャルプランニング技能士、経営学修士(MBA)。アライアンス企業と協業しSBI証券とシナジーのあるサービスを創出(クレカ積立、ポイントプログラム導入)・ビジネスの上流工程を整理する戦略事業推進部に所属。担当するサービス開発部はSBI証券リテール関連全般のシステム開発を一括して管理している。
取材協力:SBI証券
取材・文/阿部純子