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日本は世界一のティッシュ大国!なぜ2枚組み?使用期限は?意外と知らない「ティッシュQ&A」

鼻をかむとき、口を拭くとき、掃除をするとき、トイレのとき、料理のとき……日常生活のあらゆるシーンにおいて、なくてはならないティッシュやトイレットペーパー、キッチンペーパーなどの紙製品。多くの人が毎日のように使っているにもかかわらず、「いつからある?」「どうやって造られている?」「水に溶けるものと溶けないものの違いは?」など、意外と知らないことが多いと思いませんか?

そこで、3回に分けてさまざまな紙製品に関する素朴な疑問や意外な活用法などを紹介していきます。1回目となる今回は、鼻かみや口拭き、化粧用など、最も用途の広いティッシュについてクローズアップ! 1979年から『エリエール』ブランドとしてティッシュの製造販売を開始した総合製紙メーカー『大王製紙』ファミリーケア・ブランドマーケティング部の“紙博士”こと森脇哲平さんに、詳しいお話を伺いました。

日本人のティッシュ使用量は世界随一!

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いまや日常生活において、なくてはならないティッシュですが、実は世界的に見ても日本人のティッシュ使用量はダントツに多いんです。2022年のデータによると、国別の1人当たりのティッシュ使用量は、世界平均の5倍! 1年間に1人約3㎏(『エリエール』180組入り15箱分に相当)ものティッシュが使われているのだとか。

グラフ:大王製紙の資料をもとに編集部で作成

その理由について、「日本人の気質と日本の気候が関係している」と森脇さんは言います。そもそもティッシュはいつから日本にあるのでしょうか。

「“紙”自体の歴史は古く、Paperの語源となったパピルスは、紀元前3000年代から書写材料として使用されてきました。現在、私たちが日常的に使っている形態のティッシュは、1914~1918年の第一世界大戦下、戦場での外科治療の際に必要な脱脂綿(コットン)の代用品として、アメリカの会社で開発されました。木材繊維を原料にした“セル・コットン”が由来となっていて、その後の1924年には、化粧落としの用途で世界初のティッシュが発売されました」(以下「」内、森脇さん)。

日本では1950年代に販売が開始され、1964年、十條キンバリー株式会社(現・日本製紙クレシア株式会社)が『クリネックスティシュー』を、同年に山陽スコット株式会社(現・日本製紙クレシア株式会社)が『スコッティ・ティシュー』をそれぞれ発売したことで普及していきました。

「当時は日本でも、化粧落としやパフの代わりという役割で紹介されたものの、高価なうえ、用途が限られていたため、あまり普及しませんでした。その後、各製紙会社の企業努力の末、薄くても破れにくく、吸水性の高いティッシュを安価で製造できるようになり、化粧用だけでなく、鼻かみや口拭き、身の回りの掃除やちょい拭きなど、さまざまな用途で使用できると認知され、徐々に普及していきました。

日本人はもともときれい好きのため、ちょっとした汚れを拭く機会が多く、ティッシュはその用途にうってつけでした。

さらに、日本は花粉症大国。全国どこででも花粉が飛んでおり、花粉症アレルギーの患者数は世界随一。そのため、お肌に優しい特別な素材のティッシュ(たとえば、保湿ティッシュやローションティッシュ)なども開発され、製品開発技術も世界トップレベルを誇るようになりました」

こうして日本は、世界有数のティッシュ大国となったのです。

「ティッシュ」と「ティシュー」違いは何?

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ところで、「ティッシュ」商品の裏面を見たことがありますか? 「ティッシュ」ではなく、「ティシュー」と表記されている商品を多く見かけます。「ティッシュ」と「ティシュー」どちらが正式名称なのでしょうか?

「大王製紙では、『ティシュー』の表記を使っていますが、実は、『ティッシュ』でも間違いではありません。そもそもティッシュはアメリカで生まれたもので、語源である英語のつづりは『tissue』。そのため弊社の商品にはすべて、英語の発音に近い『ティシュー』とつけ、パッケージにもそのように表記しているのです」

日本の業界団体では「ティッシュ」と表記していますし、発音しやすい方を自由に使ってよさそうです。

ティッシュはどうやって造られる?

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日本のティッシュ製造技術は世界でもトップレベルと前述しましたが、そもそもどのように造られているのでしょうか。ここからは、意外と知らないティッシュにまつわる素朴な疑問について紹介していきます。まずは造り方から!

「大王製紙の場合、ティッシュの製造工程は大きく分けて3つあります。(1)パルプ工程 (2)製紙工程 (3)加工工程です。

原料となるチップ(木の木片) 写真提供:大王製紙

(1)パルプ工程

紙の原料となるチップ(木片/針葉樹と広葉樹があり)を、主に南米など海外の植林地などから取り寄せ、大きな釜の中に薬品とともに加えて170℃の高温で熱処理します。

こうしてできたパルプは品質を安定化させるため何度も検査され、製紙工程に送られます。

ジャンボロール 写真提供:大王製紙

(2)製紙工程

パルプをパルパーと呼ばれる機械に入れ、水を加えて繊維をほぐし、商品ごとの特性に合わせて調合します。たとえば、肌触りのいいティッシュは、この工程で柔軟成分などが配合されるというわけです。

調成された液状の原料をワイヤー(網)の上に均一に噴射し、乾燥装置で瞬時に乾燥させ、紙にします。和紙作りの際の紙すきの工程に該当します。ここでできた紙は、大王製紙の場合、幅4m、直径3m。巻の長さはなんと80kmもあります。

1枚ずつ取り出せるよう折りたたみながら積み重ねるインターフォルダー 写真提供:大王製紙

(3)加工工程

最後に巨大な紙を既定のサイズにカットし、紙が一枚ずつ取り出せるよう折りたたみながら積み重ね、箱詰めします。保湿ティッシュに含まれる保湿成分は、箱詰めする手前で加えています」

こうして、私たちが普段よく目にする箱詰めのボックスティッシュが完成するというわけです。

箱詰めされた枚数は150組?200組?違いはなぜ?

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ティッシュは(3)の加工工程で折りたたまれた紙が箱詰めされるわけですが、その量が150組、160組、180組、200組とバラバラなのをご存じですか? なぜ、1箱に詰められる紙の量がまちまちなのでしょうか。年々1箱当たりの組数が減っているので、物価の高騰に関係しているような気もしますが……。

「実は、1箱に何組ティッシュを詰めるかは、工場の機械に入る箱のサイズで逆算的に決められています。確かにこれまで、150組、160組、180組、200組が一般的ではありましたが、世の中の動向も踏まえ、現在は、1箱150組か160組が主流になっています。

持ち帰りやすさ、保管のしやすさから5箱セットでの販売が主流に。

ちなみに、ドラッグストアなどではたいてい、5箱パックがセットで売られていることが多いですが、これにも理由があるとか。

「1980年代まで、箱入りのボックスティッシュは1箱ずつ売られていたのですが、家庭でのティッシュの使用量が増えたため、まとめ買いしても持ち帰りしやすく、保管する際にかさばりすぎない箱数はいくつかと検討が重ねられ、その結果、5箱が適当ということになり、現在に至っています」

ボックスティッシュは150~160組×5箱パックが主流というわけです。それ以上入っているものもないわけではありませんが、見つけても飛びつくのは要注意。コスパを考えるなら、1組当たりいくらになるか、計算してみるのがいいかもしれませんね。

必ず2枚重ねなのはなぜ?はがして使ってもいい?

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2枚重ねでこそティッシュの本領発揮。

ボックスティッシュの1箱には150~160組詰め込まれていると前述したので、お気づきのかたもいるかもしれませんが、ティッシュの数は1枚2枚……ではなく、1組2組と数えます。というのも、ティッシュは2枚重ねが一般的だから。これはなぜなのでしょうか?

「紙を重ねると、間に空気の層ができて柔らかくフカフカした感触になるからです。また、ティッシュはある程度水分を吸収しないといけませんから、厚みも必要。柔らかいけれど吸水力をもたせるために、2枚重ねにしたのです

海外製のティッシュは3枚重ねや4枚重ねのものもありますが、そうなると1箱に入る枚数が少なくなり、価格も高くなってしまうそう。海外ではそれほどティッシュを使わないので、それでもいいのですが、日本人は大量に使うので、2枚重ねがちょうどいいということになったそうです。

「節約のためにと、1枚ずつはがして使う方もいるようですが、それはおすすめできません。2枚重ねだからこそ機能するように造られていますから、吸水性や耐久性が落ちてしまいます。それに両面表になるよう重ねられているので、はがすとザラザラした手触りの裏面が出てきてしまいます」

よく見るとティッシュの端には型押しが。

ティッシュの両端には重ねた紙がはがれたり、ずれたりしないよう、型押しが施されています。

ですから、わざわざはがす方が手間ですし、吸水性などが落ちれば、枚数を多く使わなければならなくなり、結果的に消費量は変わらなくなります。2枚重ねのまま使う方が賢い選択と言えそうです。

ティッシュ1組の大きさは?箱の底のミシン目は何?

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広げると両手のひらよりやや大きいくらいのサイズ。これにも理由が!

ティッシュの大きさは、どのメーカーのものもほぼ一緒の正方形のように見えますが、実はこれにも理由があるのだとか。

「大王製紙のベーシックなティッシュ『エリエールティシュー』の1組のサイズは197×217mmです。これは両手のひらをくっつけた面積よりひと回り程度大きなサイズ。約95%の日本人にとって鼻をかむのにちょうどいいサイズなんです」

節約のため、半分に切って使う方もいるようですが、鼻のかみやすさや汚れを拭きとる際の吸水性を考えた末の大きさなので、この場合も、紙を1枚ずつはがすのが御法度なのと同様、本来の機能が失われるのでおすすめしないといいます。

普段何気なく使っていたティッシュですが、大きさにもこだわりがあったんですね。こだわりといえば、日本人らしいきめ細かい配慮が箱の底にも施されているのをご存じでしょうか?

箱ティッシュの底にあるミシン目の正体は……
内側に折り込むことでティッシュの底上げに!

「箱の底のミシン目を箱の内側に押し込むことで、残り少なくなったティッシュが持ち上がります。その結果、引き出しやすくなって、最後の1組まで快適に使えるのです」

箱の底のミシン目の形は各メーカーで違い、それぞれ工夫されていて、特許をとっているメーカーもあるのだとか。使いやすさを比べてみるのも、おもしろいかもしれませんね。

NGな使い方は?ティッシュをトイレに流してもいい?

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ティッシュは鼻水や水汚れなどを拭くためのものですから、トイレットペーパーと違い水に溶けないように造られているのだそう。では、トイレに流してはいけないのでしょうか?

「トイレットペーパーは、100秒以内に水に溶ける(繊維がほどける)よう日本産業規格(JIS規格)に決められているため、水でパルプの繊維がほどけやすい加工が施してあります。一方ティッシュは、水に溶けないよう、製造工程でパルプの繊維をつなぐ薬品を入れています。ですからトイレに流すのはおすすめできません。詰まる原因になります」

ちなみに、小さなお子さんやペットがティッシュを食べてしまった場合、水に溶けにくいので、のどに詰まってしまう可能性があるのだとか。原料が木なので人体に害はない、胃酸で溶けるだろうと思わず、口にしないよう注意してあげましょう。

「花粉症患者の増加で、ティッシュを持ち歩く習慣ができたことで開発された『ポケットティッシュ』の中には、“水に流せる”という表記のあるものがあります。これは、トイレットペーパーとして使える構造になっています。

トイレットペーパーよりしっかりしているので鼻水などで溶けることはありませんが、ティッシュよりも水で繊維がほどけやすい加工をしてあるので、トイレに流せるのです」

普段使いもできトイレットペーパーとしても使えるのは便利ですが、少々お値段が高め。用途に合わせて使い分けましょう。

使用期限やベストな保管方法ってあるの?

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ティッシュに使用期限はあるのでしょうか?

基本的に、2~3年の保管期間を想定していますが、何年保存していただいても使用できます。保湿ティッシュやローションティッシュなどのように肌触りをよくするための成分(グリセリンやヒアルロン酸など)が含まれている商品も同様です。

ただし、香り付きのティッシュは、香りの成分が飛んでしまうことがあるので、密閉した状態で保存するか、袋を開封したら、早めに使い切ることをおすすめします」

香り付きティッシュは、箱に香りを付けているものと、紙自体に香り付けしているものがあるそう。いずれにせよ、香りは飛んでしまうので、早めに使い切る方がいいですが、香りがなくなっても気にならないようなら、紙自体の品質は変わらないので、使うのに問題はないようです。

「ボックスタイプ」と「ソフトパックタイプ」の違いとは?

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ティッシュというと、箱に詰められたボックスタイプを想像しがちですが、実はいま、フィルムで包装されたソフトパックタイプの人気が急上昇しているのをご存じですか?

形状別販売金額シェア(大王製紙の資料をもとに編集部で作成)

「2022年度のティッシュ市場全体から見る形状別の金額シェアはボックスタイプが77.7%、ソフトパックタイプが18.9%、ポケットタイプが3.5%と、おなじみのボックスタイプが圧倒的な人気を誇っています。ところが、ソフトパックタイプのシェアが、2019年度から2022年度のわずか4年で10.5%から18.9%に拡大しているのです

ソフトパックタイプは紙箱をなくしたコンパクトな設計で、キッチンや洗面台などの水回りや車の中などの狭い場所でも使いやすく、ごみの減量にもなることから、人気が高まっています。

また、花粉症のせいで、いつでもどこでもティッシュが手放せない人たちからの需要も高まっています。というのも、ポケットティッシュでは枚数が足りないからです。ソフトパックタイプなら、コンパクトで持ち運びしやすいのに、ボックスタイプ並みの組数が入っているため、重宝されているようです」

最近では、詰め替えや買い替えの手間を軽減する大容量タイプの需要も増えているといいます。

大王製紙でも2023年1月4日から「i:na(イーナ)ソフトパックティシュー 200組6個タイプ」を全国発売(北海道を除く)。売り上げを伸ばしているとか。しかも、ボックスタイプより価格も少々リーズナブル。ティッシュ自体の品質はボックスタイプと同じですし、もちろん、肌触りの良い保湿ティッシュやローションティッシュにもソフトパックタイプがあります。今後ティッシュといえば、ボックスタイプではなくソフトパックタイプが主流になる日が来るかもしれませんね。

 

以上、ティッシュについて、さまざまな知識が身についてのではないでしょうか。

さて、次回は「トイレットペーパー」について詳しく紹介していきます。


【教えてくれた人】

森脇哲平さん

大王製紙株式会社
グローバルマーケティング本部
ファミリーケア・ブランドマーケティング部

主にトイレットペーパー、ティシュー、キッチンペーパーなどにおいて、「エリエール」をはじめとする各ブランドの提供価値を高めるため、商品のコンセプト・企画立案から、パッケージ開発・商品開発・プロモーション展開までのブランド戦略を一貫して管理・実行している。

大王製紙 エリエールブランドサイト

嶋田久美子
嶋田久美子

エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。

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