これまでの3回の連載で、「生活費は支出の頻度が高く、“管理のためのタスク”を増やすと疲れてしまうことがある」ということがわかってきました。とはいえ、無計画な“ザル家計”も避けたいですよね。できるだけ小さな労力で、生活費を無理なく把握するためにはどうしたらいいのでしょうか。
―そんなテーマで編集部内で話し合っていたところ、1つの“仮説”が話題にのぼりました。それは「部屋の整理整頓と、生活費の管理は地続き」ではないか、ということ。どちらも、根を詰めると疲れ果て、何もやらないと散らばって全容が見えなくなる……共通点が多そうですよね。
というわけで今回、取材をお願いしたのは「kufuraメンバーズ・プロ」(=kufura公式アンバサダー)の、のぞみさんです。
整理収納アドバイザーとしての知見を活かし、心地よい生活空間を無理なくキープするための”ちいさな仕組み“を発信しているのぞみさんは、「ファイナンシャルプランナー(FP)」の資格も保有しています。
取材依頼の際「FPの資格は持っているだけで、お金まわりの特別なことはしていません。そんな私がお金のことを語って大丈夫でしょうか……」と不安そうにしていたのぞみさんでしたが、実践中の生活費の管理法には、ためになる話が満載でした!
物もお金も!節約上手のコツは、自分が管理できる「快適量」を見極めること
null現在、首都圏で4人暮らしをしているのぞみさん。小学5年生と中学3年生のお子さんを育てています。
のぞみさんが整理収納アドバイザーの資格を取得したのは、下の子が活発に動き出したころ。増え続ける物の管理に追われ、強いストレスを感じたことがきっかけだったそう。
整理収納の知識を身に着けて、実生活に取り入れることで、少しずつ心地よい生活空間ができあがっていきました。
「新しく収納場所を作って、たくさんの物をきれいに収納する」ではなく、既存のスペースに収納する「快適量」を見極めることで、物の管理のストレスが激減したといいます。
のぞみさんの生活費管理の方法は?
さてさて、そんなのぞみさんの生活費管理のお話。
「以前は、家計簿をつけていました。“そういうもの”だと思っていたからです。でも、現金支払いのほかに、購入から引き落としまでに時間差があるクレジットカードの支払い金額、キャッシュレス決済の金額を細かく管理することに疲れてきて、別の方法に切り替えました」(以下「」内、のぞみさん)
のぞみさんは「どうしたら疲れずに生活費を管理できるか」を思案し、支出の流れをシンプルにして支出額を把握しやすくするための管理方法を編み出しました。
まず、食費・日用品は、現金割引のある近所のスーパーマーケット「オーケー」で現金購入。(それまで家計簿をつけていたことで、月に必要な予算は把握できていたそう。)
それ以外の買い物(通販含む)は、クレジットカードとキャッシュレス決済を利用します。
複数のカードや決済サービスを使うと、お金の流れが複雑になるので、管理の合理化のため『楽天』のサービスに統一。家計簿をつけなくても、利用明細を見れば、何にどれだけ使ったかが一目でわかるようになりました。
のぞみさんが普段使用しているお財布を見せて頂きましたが、とにかくシンプル&ミニマル。
財布にはたくさんのカードが入る“収納性”が重視される傾向がありますが、のぞみさんが使っているのは、ポケット数が少ない小さな財布です。
中身は、現金、クレジットカード1枚、スーパーのポイントカード1枚、保険証だけ!
定期的にカードの利用明細をチェックして、月々に使った生活費が予算内に収まればOKという考え方。超過したら次の月でバランスを取るようにしています。
「あれを買わなければよかった」と後悔をしないためにできること
nullあたらしいやり方で生活費管理の負担が軽減したというのぞみさん。以前は、お金の使い方で自己嫌悪に陥った時期もあると振り返ります。
「自宅の整理整頓を進める過程で、たくさんの物を捨てました。雑貨も服も日用品も収納用のケースも。“なんでこんな物を買ったんだろう”“なんでこんなお金の使い方したんだろう”と後悔することもありました」
切っても切れない“部屋の整理”と“生活費の整理”。
収納スキルを身に着けたものの、自身のお金に知識について自信がなかったのぞみさんは「お金の基礎を学んで生活の中で実践できることがあれば」と考え、5年前にファイナンシャルプランナー(FP)の資格も取得しました。
「資格を取得してある程度の知識を得ましたが、相変らずお金のことは得意分野ではありません。手持ちのお金を増やすための“攻めの支出”も苦手です。だから、今は私の得意なことで家族のためにできることをしています」
さまざまな経験を経て、お金の使い方は、昔と比べると着実に変わったと言います。
「片付けができていなかった頃は、まだ日用品のストックがあるのに買ってしまうことがありました。でも、今はどこに物があるか、何がどれだけ必要か、常にクリアになっていて、物を買い足す適度なスパンが把握できています。
“安いものを無理してでもたくさん買う”ことはなくなり、“ちょうどいい”が見極められるようになったと思います。
以前、たくさんの物を捨てた経験から、今は本当に必要なものを事前に調べて、家族と相談しながら、多少値が張っても満足できるものを買うようになりました」
さらに、以下の心がけで「なんでこれを買ってしまったんだろう」と後悔する買い物が減ったそうです。
・戸棚や引き出しは、何が入っているのか一目見てわかるように収納することで、買い物の“重複購入”や“廃棄”を避けられる。収納用グッズは中身が見えるものを選ぶ
・収納グッズを“なんとなく”買わない。前もって何を収納するか決め、収納場所のサイズを測ってフィットするものを選んでから買うようにする
むやみに収納を増やすと「まだ物を増やせる」という油断から、ムダづかいが増えてしまうことも。自分が管理できる「快適量」を保有するのが大切とのことでした。
部屋とお金の整理整頓を通じて、心も穏やかに
null暮らしまわりを整えたことで、昔のようにイライラすることがなくなったというのぞみさん。最近は、新たな変化も実感しています。
「子どもが小さい頃は、私が一生懸命、片付けをしていました。でも今は違って、子どもたちが自分の部屋を自分で片づけられるようになったんです。
2人ともそれぞれの趣味を楽しんでいて、自分の部屋には趣味の物もありますが、それぞれのスペースのなかで、きれいに収納しています。私のやり方を日々見ていることもあってか、“収納の容量は増やさない”、“出したら元の場所に戻す”、“自分の物は自分の部屋で管理する”といった習慣が身に着いているよう。
お金の使い方については、お小遣い制ではなく“子どもが必要な分を申告して、その分を渡す”というやり方をしていて、今はうまくまわっています」
こんなふうに、子どもの成長とともに、物とお金の管理をそれぞれの自主性にまかせられるようになり、命令形の声かけをする機会はほとんどなくなったそうです。
日々、心地よく暮らすための工夫を重ねているのぞみさん。
子どもの成長やその時々の生活に合わせて、生活費管理のやり方をアップデートしてきたのぞみさんから学んだ心得は、以下の5つ。
のぞみさんの【生活費管理のくふう】をおさらい!
1:お金の動きをシンプルにして、支出を把握しやすくする
2:日常的に使用するクレジットカード・ポイントカードは数を絞る
3:「必要な物」を管理できる分だけ買う
4:物の購入の際には、自分が納得できるものを選ぶ
5:収納場所をむやみに増やさない
「物やお金の管理のためのタスク量を自分の許容範囲内におさめることで、日々、心穏やかに暮らせています」と、のぞみさん。
現代では、あちこちで“お得”で“便利”な情報が手招きしています。本当に必要なものをえり抜くことで、物が増えることを防ぎ、物の管理にとらわれる時間を減らし、“ムダづかいが減る”という副次的な効果にもつながるのかもしれませんね。
構成・文/北川和子
撮影/横田紋子
【教えてくれた人】
のぞみ さん
シンプル志向の整理収納アドバイザー・ライターとして、WEBマガジン等で記事を執筆。ファイナンシャルプランナー、クリンネスト1級の資格も持つ。kufuraメンバーズ・プロ。
暮らしもこころもかろやかに、ものとじぶんとゆっくり向き合える、続けやすい暮らしのちいさな仕組みを発信中。
→Instagram(@non.karoyakani)