老舗メーカーは、もともと明かりを灯すための「搾油業」からスタート
null近年、ごま油の市場は年々拡大しており、食用油の中でも特に成長が著しいと言われています。家庭用食用油のカテゴリーでは、キャノーラ油、オリーブオイルに次ぐ3番目に大きな市場となっているそう。
今回、お話を伺った『竹本油脂』は、「マルホン胡麻油」でおなじみの老舗ごま油メーカー。享保10年(1725年)に愛知県で創業し、なんと今年は300周年の節目の年!
その歴史は江戸時代に遡り、当時の三河国(愛知県)は、菜種や綿実の栽培が盛んだったことから、明かりを灯すための油を造る搾油業を営んでいたそうです。
ところが、時代が進み、電気が普及すると、明かりを灯すための油は不要になり、需要は減少……。そこで、油の圧搾技術を用いて、ごま油の製造を大正時代から本格的にスタートさせました。


マルホンの赤いマークが目印。
『竹本油脂』の最大のこだわりは、伝統的な圧力だけで搾る「圧搾製法」を今もなお、守り続けていること。同社の広報担当は、圧搾製法による美味しさについて話してくれました。
「ごまの中の油の割合は約5割。 “圧搾製法”だと、1粒から4割程度しか油は取れず、すべての油を取り切ることは難しいのです。でも、これこそピュアなごまの油。旨味とコクが強くて、生のごまを噛み続けているような奥深い味わいがありますよ」(以下「」内、『竹本油脂』広報担当)
ごま油といっても、さまざまな作り方があるのですね。他にも、ごま油に関する疑問を聞いてみました!
Q:茶色と白のごま油の違いって何?
nullA:茶色は焙煎したもの、白はそのまま搾ったもの。

同じごま油でも、まったく風味が異なる。
「茶色のごま油はごまを焙煎してから搾っているので、特有の香りやコクが特徴です。
一方、白いごま油はごまを焙煎せずに生のまま搾っているので、ほぼ香りがありません。こちらはいわゆる“太白”(たいはく)と呼ばれているごま油です」
最近では白いごま油は“太白”と呼ぶのが一般的になりつつありますが、実はこれは『竹本油脂』の登録商標とのこと。
「大正時代に料理人の方々の要望に応え、ごま油としては異例の“白いごま油”を商品化しました。“太白”とは古代中国の金星の呼び名で、“他よりも秀でている”という自信と“輝く金星”にちなんで、当時名付けたそうです」
太白ごま油は、すっきり軽やかなのに、ごま油本来の力強さもあり、料理の味を邪魔しない。そのバランスのよさが料理人の方々に愛され続けているようです。ごま油特有の香りや風味がないので、パンやお菓子作りにも使えます。

Q:茶色のごま油の色の違いって?
nullA:珈琲のように焙煎度合いで色の濃さが変化します。
「ごま油の茶色の濃淡は、焙煎度合いによるもの。珈琲と同じで、焙煎するほど深煎りになり、色が濃くなっていきます。特に深煎りのごま油は力強い香りと濃厚な味わいが際立つので、餃子やナムルなどに最適ですよ」

Q:日本のごま油の原料はどこから来ているの?
nullA:アフリカの国々が中心です。
「現在、日本で1年間に収穫されるごまは100tほど。我が社では1日に200t近くのごま油を使用しているため、国内生産の原料だけでは1日分にもならないんです。そのため、第三者機関による残留農薬の検査を行ったうえで、主にナイジェリアやタンザニアなどのアフリカの国々から、安全で高品質な原料を厳選して調達しています」


Q:消費期限はどのくらい? 長持ちさせるにはどうしたらいい?
nullA:開封後1〜2カ月を目安に使い切って。冷蔵庫ではなく常温で保存を。
「ごま油は酸化には強いのですが、最後まで美味しく味わうためには、開封後1〜2カ月を目安に使い切ることをおすすめしています。冷蔵庫で保管すると出し入れの際に結露が生じ、腐敗に繋がる可能性もあるので、開封後は常温で保存してください。遮光瓶に移し替えたり、ホイルで包んだりすると、さらに長持ちします」

『ごま油さえあれば さっぱりもコク旨も、いつもの家ごはん98』
著/沼津りえ 1,650円(税込)小学館
料理研究家・管理栄養士の沼津りえさんによる“ごま油で「いつものごはん」をもっと楽に、もっと美味しく”するレシピ集。パパッと作れる小鉢、メインになる肉や魚のおかずからごはんや麺まで、全98レシピを掲載。

ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。