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ついに米まで値上げ!今年のおすすめ新米は?フリマアプリで買うのはダメ?五ツ星お米マイスターが教えます!

夏に「令和の米騒動」が起き、不安の多いなか、ようやく待望の新米の季節がやってきました。ところがついに米まで値上げ……! スーパーでお米の値段を見て、愕然としている人も多いはず……。

夏から続くこの世知辛い米事情をお米のプロはどう見ているのでしょうか? 五ツ星お米マイスターの西島豊造さんに聞いてきました。

夏の「米騒動」が値上げの連鎖を引き起こしてしまった…

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8月中旬、スーパーの棚から次々と米が消えた。

2023年に収穫された米は、猛暑に加え、深刻な水不足による品質低下で、そもそも収穫量が少なく、全体的に国内で不足しがちな状況だったといいます。そこに、インバウンド消費の外食需要の増加、南海トラフ地震への備えなど、様々な要因がタイミング悪く重なり、そして起きてしまった「令和の米騒動」。

「スーパーの棚から米が消えた!」と連日報道され、買えたとしても1家族1袋までなど制限つきに。日本人はやはり米がないと不安になるのか、まとめ買いをする人も増えるという悪循環も起き、ますます米が市場から姿を消しました。

西島さんはその米騒動が、今年の新米の値上がりに影響していると話します。

「今年は銘柄や産地関係なく、全体的に多くて5割ほど値上がりしている印象です。茨城や千葉の米は、昨年は5kg1,500円くらいで買えましたが、今年は3,000円を超えています。

そもそも昨年の米は出来が悪かったので、早めになくなる予測はついていました。そのため、今年の新米が採れるまでは静かに待とうと専門家たちは思っていたのです。あと少し待てば、今年の新米が収穫されるという直前、お盆の頃に“米がない!”と連日報道されてしまい、国民の不安を煽ってしまった。お盆なので流通はストップしており、タイミングも悪かった。

新米が収穫されたらお米は充分に足りる予定でしたが、結果として需要が先に進んでしまい、順調にお米が回らなくなってしまった。スーパーの棚にないから、さらにパニックになる。流通してお米が回っても、パニック状態なので、すぐにお米がなくなる。そしてまた棚にない。この繰り返し。このような状態が都心から全国へと広がり続け、2カ月弱ほど続いたんです。

そして、新米の稲刈り時期にスーパーの棚に米がないから、今なら米が高くても売れるというイメージが広がってしまい、生産者が発端となった高値取引が始まってしまったのです。

米はそもそもお金との取引なので、一円でも高い方に流れてしまう。だから高く買うところがあると農協にお米が集まらない。そうして二重三重の値上げになり、最終的に5割ほど価格が上がってしまいました。

「平成の米騒動」は、タイ米などの外国産米を輸入して値上げを凌いだ。

平成5年にも大冷害による不作で米パニックが起きました。あの頃は、タイ米などの外国産米を輸入することで、そこまで価格を引き上げずに済みましたが、今回はそのような準備もなく、“米が足りない”という情報だけが発信され、全体的な値上げが始まってしまった。長年、米の動向を見てきましたが、このような現象は初めてかもしれません。

平成の米騒動の頃と大きく違うことは、今はインターネットやSNSの普及により、情報が拡散されるスピードがものすごく早くなったこと。今回も一夜にして“米がない”という情報は日本中に拡散され、途端に米が消えました。これは本当に早かった。踏み止めることができませんでしたね」(以下「」内、西島さん)

プロの意見を聞けば聞くほど、冷静になれば防げたかもしれないと感じる「令和の米騒動」。さまざまな要因が複雑に重なっていたことを改めて感じます。そして、私たち消費者が落ち着いて情報を精査する必要があることも身に染みました。

「とはいえ、生産者の方々のことを考えたら、今までの価格が安すぎたのかもしれません。そのため採算がとれずに離農する人も多く、産地が荒廃してきたのも事実です。さらにガソリン代や飼料代も値上がりしている。よくこの価格で耐えてきました。他の食材は文句なく値上げしているのに、米はなかなか価格を上げられませんでしたが、今回の米パニックによって正当化する理由を作ってしまったという感じです」

まとめ買いは実は損!ネットで買うのも要注意

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このようなことが起きた時、私たち消費者はどうすればよいのでしょうか?

「焦ってまとめ買いをした人も多いと思いますが、米には消費期限がないとはいえ、劣化して味はどんどん落ちていきます。まとめて買ってしまった人は、保存法を工夫しなければならない。すぐに新米が出てきて、美味しい米が出回っている中、まとめ買いをすると後から損するだけです。

また、『メルカリ』などで購入した人も多かったようです。米の品質表示をきちんとしなければ、売ってはいけない。米は食べ物なので、品質管理がちゃんとされているのか、衛生上の心配もあります。それを知識がない一般の人たちが高価格で転売して……これはひどかった。

少し落ち着いて考えれば、まもなく新米が収穫されることは分かったはず。一時期、米が食べられなくても、パンや麺もある。普段そうやっていろいろなものを主食として食べているから、国内の米の需要が落ちているのに、一体どうして? 今になって急に? という感じです(笑)」

今年の新米はどれを買ってもハズレなし!

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でも、そんな中でも良いニュースが! そう今年の新米は、とにかく出来がいいそうです!

「今年の新米はどれを買っても美味しいです。例年だと産地によるバラつきがありますが、今年はハズレがないので、銘柄関係なく買ってOK!

今年は全国的に猛暑でしたが、雨も多かった。そのおかげで、去年に比べると高温障害の出ている米が圧倒的に少ない。特徴としては、天気が良すぎたうえに、雨による保水もされ続けていたので、米の中のタンパク質が例年よりも低めに出ているため、粘りが若干強めな印象です。

どの品種を食べても粘りが強い傾向なので、いつもは“新米だからといって水加減を控えなくていいですよ”と言うのですが、今年は”やわらかいと思ったら、水加減を控えたり、炊飯器の炊き分け機能で『あっさりorさっぱり』を選んだりすると美味しく炊けますよ”と、お伝えしています。これは全国的に言えること」

今年の新米は全国的に出来がよく、どれを食べても美味しい!

また、今年はハズレがないので、産地や品種を知らなくても、試しに買ってみるのもおすすめとのこと。

「今年はどれもこれも産地関係なくおいしいから、試し買いがしやすい。今日はこの産地、次はこの産地と、いろいろな米を買ってみて、自分の好きな味を探すのが理想です。米が美味しく食べられる期間は1カ月程度なので、一度にたくさん買うと味が落ちてしまうため、定期的にスーパーのチラシなどを見て、少しでもおもしろい米があったら少量ずつ買ってみて!」

さらに、ふるさと納税や道の駅で産地の米を手に入れる方法もありますが、特に道の駅は地元の農家の方が直接持ち込んでいることも多いので、少し注意が必要だそう。

「地元の農家のかたが袋詰めして販売しているお米もあるので、市販品ほど厳しい品質チェックがされていない場合もあります。それも産地で買う良さではありますが、覗き窓があったら、粒が揃っているか、割れた米や白い米が少ないか、しっかり米の状態を自分でチェックすることが大切です」

味わい別、2024年の新米おすすめ5選はこちら!

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今年はハズレなし。いろいろ食べ比べて好きな味を見つけてみて!

値上げのダメージを受けつつも、「今年はハズレなし!」という朗報に少し心が軽くなりましたが、そんな中でも、特におすすめのお米を教えてもらいました。

◆若者や食べ盛りの子どもたちに

ここ数年、若者や食べ盛りの子どもたちに人気なのが、『新之助』(新潟県)や『雪若丸』(山形県)。唐揚げなどの揚げ物やカレーやチャーハンにも合う、食べ応えのある粒感のある米が大ブームです!

◆コシヒカリ好きな人に

1970年代に起こった「コシヒカリブーム」を知っている世代は、粘りのある米が好きな人が多い。最近人気の北海道のブランド米『ゆめぴりか』(北海道)は、魚沼級の価格になってしまい、ちょっと気軽に手が届かないかもしれないけれど、濃密な粘りと濃い甘味が魅力的。

◆あっさり好きな女性に

軽やかなあっさりした味わいの米は、重すぎないので女性に人気。特に秋田県の米は女性受けがよく、バランスのよい『サキホコレ』(秋田県)がおすすめ。さっぱりした『青天の霹靂』(青森県)や王道の『つや姫』(山形県)も和食や朝ごはんにぴったりの味わいです。

通常は、産地や品種、ブランド力によってランクがあり、それによって価格にかなり差があったそうですが、今年は米なら一律同じ値段という印象とのこと。

「今年は残念ながらコスパがよいお米は正直ありません。でも、どれも本当に美味しいので、いろいろ食べ比べてみるチャンスかもしれません」

ぜひ、この機会に自分好みのお米を見つけてみてください!

西島豊造さん。

西島豊造

五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しい米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。

岸綾香
岸綾香

ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。

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