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「地味ごはんに我が家の歴史あり」。名もなきおかずが愛おしい理由【料理家・和田明日香さんインタビュー#1】

本格的なコロナ禍に突入していた2021年、毎日のごはん作りに悩む母たちの絶大な支持を得て25万部の大ヒットとなった『10年かかって地味ごはん。』(主婦の友社)。その続編となる『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』が3月3日に発売されました。今回『kufura』では、著者の和田明日香さんに「名もなきおかずが愛おしい理由」を伺いました。

「ご飯の炊き方がわからない」知識マイナスからの料理修行

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2010年に23才で料理愛好家・平野レミさんの次男と結婚。それまで料理をしたことがなかった明日香さんですが、家庭の基盤である食事=料理という、避けては通れぬ未開の地へ“マイナスからの一歩”を踏み出すことに。

じつは、結婚を決めるまでお姑さんが平野レミさんだって知らなかったんです。だから、料理をやったこともない自分が大変なところに嫁いでしまった……と。レミさんは“いつ電話がかかってくるかな”と待っていてくれたようですが、こちらは料理の何をどう聞いたらいいのかすら分からない。さすがにレミさんに申し訳なくて“ご飯の炊き方を教えてください”とは聞けず、ある程度自分でできるようになってから、聞けるようになりました」(以下「」内、明日香さん)

平野レミさんという、最高の師匠であり、最強のサポーターを得て料理が楽しくなってきたところで長女を出産。その後、長男、次女も誕生し、その後の10年はまさに、3人の子どもたちが「おいしい!」とパクパク食べてくれるごはん作りに追われる日々となりました。

地味かもしれないけど、家族に愛される料理の数々。(『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』より)

好き嫌いなしの長女、「海のもの全般が嫌い」な長男、肉嫌いの次女…

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とはいえ、三人子どもがいれば、三様の口があるわけで、これがかなり手強い(笑)。長女は好き嫌いなく何でも食べてくれるんですが、次女は肉嫌い、長男は海のもの全般が嫌い。でも、動物性たんぱく質はちゃんと摂らせたいので、食卓には必ず肉と魚、両方並べています

その後、“レミさんちのお嫁さん”としてメディアに出演し始め、食育インストラクターの資格を取得してからは“料理家・和田明日香”として独り立ち。「私ができることは何だろう」と考えてたどり着いたのが、『10年かかって地味ごはん。』とそれに続く『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』です。

それは、「料理ができなかったからこそ 伝えられるコツ」と「楽も苦もある」という気持ちから、大事に育ててきた“和田家のまいにちごはん”だったのです。

家族と一緒に育ってきた「10年目の豚大根」

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なかでも『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』に掲載されている「10年目の豚大根」(写真)は、子どもたちの成長に合わせて味を変え、形を変えてずっと作り続けているおかずです。

「レシピを見ずに作れるようになった初めての定番おかずではないかと。最初は、豚は三枚肉の塊や肩ロース肉を使ったり、大根も下ゆでしてみたりと、だしベースの薄味だったんですが、子どもたちが大きくなり、食べる量も増えてきたのでアップデート。

豚はバラ薄切り肉でいいかな……となり、大根も半月切りにして焼き色がつくまでしっかり焼いて、その焦げ目から出る大根の甘い香りを楽しみつつ、豚バラ肉の脂でしっかり味をつけ、にんにくを効かせ、ごま油で風味を上げて。箸がすすむように、甘辛の味つけに変えていったんです。

でも、彼らが成人になるまでの過程でまた変わるでしょうし、夫とふたりになったら、甘味を控えた薄味に戻るかもしれない。そんな、つねに家族の有り様を如実に反映しているおかずなんです」

ちょうど冷蔵庫に大根と豚バラ肉があったので、私も作ってみました。 

わが娘(16才)は、幼少時から頑固な食わず嫌いでとくに野菜には厳しく、家でしっかり大根を食べるのはおそらく人生初めて……。豚肉と濃いめの甘辛味が大好きなので、もしかしたらこれならと、豚バラ肉と砂糖をやや割り増しで作ってみたところ、大成功! しっかり豚バラ肉と大根をセットにして口へ運び、「おいしい」とモリモリ(私の分まで)食べていました。

地味ごはんに我が家の歴史あり

「アップデートのきっかけは、妊娠だったり、レミさんだったり、子どもたちがニョキニョキ育っていくのが楽しかったり、あるいはふとした思いつきだったり。同じようなものを作り続けているからこそ、少しずつ変えられるんですよね。家族が大好きな代わり映えしないおかずを淡々と、でも、ずっと好きでいられるように慈しみながら育てていく。地味ごはんに我が家の歴史あり、なのです」(明日香さん)

新刊『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』から、「味噌ラーメンの麺なし」のレシピをお届けします。ぜひ、晩ごはんで作ってみてください。「和田明日香さんインタビュー#2」もお楽しみに!

レシピ:「味噌ラーメンの麺なし」

レシピ:「味噌ラーメンの麺なし」
「北海道の新千歳空港で味噌ラーメンを食べた時、これが本物か……!と感動しましたが、同時にうちのスープも全然負けてないなと思ったのです。煮込んだもやしの食感もクセになります。もやしの魅力はシャキシャキだけじゃなかったんだな」(『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』より)

味噌ラーメンの麺なし

【材料】(4人分)

<A>水1200ml・だし昆布5×5cm・豚バラ肉しゃぶしゃぶ用200g

もやし2袋(400g)

(多すぎじゃない?って思うかもしれないけど、信じて入れてほしい。このもやしの量が大事なのです)

<B>味噌大さじ5・みりん大さじ2・にんにく1片・すりごま大さじ5・生キクラゲ3枚

 

【下ごしらえ】

<B>のにんにくはすりおろす。

*生キクラゲは気になれば石づきを切り落とし細切り。

 

【つくり方】

(1) 鍋に<A>を入れて中火にかける。沸いたらアクをとり、もやしを入れて、蓋をして15分ほど煮る。(2) <B>を加え、さらに15分煮込む。(3) 最後に生キクラゲを加えてさっと煮る。

 

撮影(人物)/小松士郎  写真(料理)/『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』より


【書籍情報】

『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』

発売日:202333日(金)

1496円(税込)/ 主婦の友社

2021年に発売された『10年かかって地味ごはん。』の続編。「今回は、私が伝えたいことをしっかり強化して掲載しています」(明日香さん)。「明日香風の定番料理」「35分で晩ごはん」「今日も主役は名もなきおかず」「広がれ!地味ごはんの輪」の4部構成で、料理ごとのタイトルやコメントがさらにパワーアップ!

和田明日香

料理家、食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、“食育”や“家族のコミュニケーション”をテーマにした全国各地での講演会やイベント出演、コラム執筆、ラジオ、CMなど幅広く活動する。Instagram公式HP

神史子
神史子

フリー記者/編集者。これまで『女性セブン』(小学館)はじめ、JAL機内誌やカード会員誌などの記事執筆および編集を担当。料理を中心に単行本の制作も行う。特技はネイティブとケンカができるレベルの英語とスペイン語。高校生の母。

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