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簡単?おいしく焼ける?「お手頃VS高級ホームベーカリー」をパン講師が焼き比べてみました!【高級機種編】

材料を入れてスイッチを押すだけで焼き立てほかほかのパンが作れるホームベーカリー(以下HB)。外出自粛の影響で手作りに目覚める人が増え、ここ最近人気が高まった調理家電のひとつです。ただ、いざHBを買おうと探してみるとかなり値段や機能に幅があり、どれを選んでいいのかわからないという人も多い模様。

そこで今回は、パン講師であるnagyiさんに高級機種とお手頃機種、2種類のHBで実際にパンを焼いてみて、できあがりにどれくらい差が出るのかをじっくりレポートしてもらいました! 2回目となる今回は、定評のあるPanasonicのHBを使用し、お手頃機種との差がどれくらい出るのか比べてみます!

作れるパンの種類が豊富!高機能HBの実力はいかに?

こんにちは、オンライン講座などでパン講師をしております、nagyiです。検証記事も第2回。前回は手軽に買えるHB代表、sirocaの実力を「基本の食パン」と「白パン」で検証しました。

簡単?おいしく焼ける?「お手頃VS高級ホームベーカリー」をパン講師が焼き比べてみました!【お手頃代表siroca編】

そして今回は高級機種編ということで、PanasonicのHBを使用してみました。こちらは「食パン生地、ハード生地、リッチ生地」などタイプの違う生地づくりのメニューが充実しているのが特長の高級HB。

まずは前回と同じ配合で「基本の食パン」を焼き比べ。そしてリッチ系パンの代表である「パン・ド・ミ」と、最後に、ハード系のパン「クッペ」も作ってみようと思います。どこまで違うか検証スタート!

使用したのは「Panasonic ホームベーカリー」

使用したのはPanasonic ホームベーカリー SD-MDX102(実勢価格:税込42,000円前後 2021年3月時点 編集部調べ)。前回のsirocaの約4倍の価格ということになりますね。基本仕様は以下の通りです。

  • サイズ:幅約26cm×奥行約36cm×高さ約35cm
  • 付属品:パン羽根、めん・もち羽根、 生種容器、スプーン、レシピブック
  • オートメニュー:全41種(パン・ド・ミ、食パン、ハーフ食パン、もちなど、オートメニュー34種・食パン生地、ハード生地、リッチ生地など、オート生地メニュー7種)
  • 自動投入機能付き

※メーカーサイトには高級生食パン専門店として有名な『乃が美』監修、「おうち乃が美」などのパンレシピも充実しています。

コンパクトで置き場所に困らなかったsirocaと比べると、同じ1斤とはいえ本体がだいぶ大きく感じます。

持ち手つきで、コードの収納もできるようになっています。移動や収納にも便利。

お手入れ方法の違いについて。sirocaは、パンケースのみ取り外して洗う仕様でしたが、こちらは、パーツが少し多くなります。着脱式の上ふたやイースト容器は取り外し、固く絞ったぬれぶきんで拭きます。レーズン・ナッツなどを入れる容器は取り外して洗えます。

まずは「基本の食パン」を焼いてみた!

それでは今回も取扱説明書を参考に操作しながら「基本の食パン」を焼いてみます。付属レシピではなく、できあがりの差を比べるために前回のsirocaとレシピも粉も配合も同じにしてみました。

【材料】

  • 強力粉
  • 砂糖
  • スキムミルク
  • バター
  • インスタントドライイースト

パンケースにパン羽根を取り付け、インスタントドライイースト以外の強力粉などの材料を中央を高くして入れ、水を周囲に回しながら入れパンケースを本体にセットします。パンケースへの材料の入れ方も機種によって違うようですね。

右のイースト容器(丸い穴の部分)にインスタントドライイーストを入れます。自動投入機能付きなので、レーズンやナッツを入れたい時は左の容器にセットします。

メニューボタンでで「2 食パン」を選択。焼き色は「淡・標準・濃」が選べるので、「標準」に。右上のスタートボタンを押したら、今回は焼き上がりまで4時間と少し待ちます。

今回も気になって、少し開けちゃいました。sirocaと比べて、捏ねている時の音がとても静かです。

※イースト投入前には絶対に開けないでくださいね。

いい香りがしてきてしばらくすると、焼き上がり。

蓋を開けてみると……前回は庫内の上面に届いてしまったせいで凹んでしまいましたが、今回は縦に大きく焼き上がりました!

気温や水温度、粉の種類、材料など環境によって焼き上がりが変わるのがパン。パンケースに余裕がある分、大きく膨らんでも安心ですね。

Panasonicの断面
前回焼いたsirocaの断面

完全に冷めてからカットしてみると、膨らんだ分フワっと軽いですが、少し気泡は丸いようです。sirocaは山型食パンらしい比較的粗いキメと縦長気泡でした。

HBは構造上どうしてもパンケースまわりの温度が高く、生地の中心部との温度差が出てしまいます。生地表面の温度が高く過発酵(発酵しすぎ)の状態になると、このようにパンのクラスト(表面)がボコボコとした仕上がりになりやすいんです(1枚目の写真)。これは前回のsirocaでも感じたのですが、個人的な感覚ではPanasonicの方が温度差の影響が少なく焼き上げられた感じがしました。

リッチ系パン「パン・ド・ミ」を焼いてみた!

お次はPanasonicが誇るパン・ド・ミを作ってみます。皮を食べるパンがバゲットとすれば、中身を食べるパンはパン・ド・ミと言われ、そのやわらかな食感が魅力。しかしいざ作るとなると生地の水分量が多いため、発酵時間や温度の調整が難しいパンのひとつです。PanasonicのHBは少量のイーストで作る専用のプログラムを用意し、温度センサーが発酵環境を自動で管理しているんだとか。

【材料】

  • 強力粉
  • 砂糖
  • スキムミルク
  • バター
  • インスタントドライイースト

パンケースにパン羽根を取り付け、「基本の食パン」同様に材料を投入します。「基本の食パン」に比べるとイースト量は少なく、バターと水分が多めです。

左のメニューボタンで「1 パン・ド・ミ」を選択してスタート!

食パンより長い4時間50分後に焼き上がります。

焼き上がりはこんな感じ!パンケースから出す時もクラスト(表面)の薄さとやわらかさが伝わりました。そして上面、側面ともにとてもきれいに焼けています。

基本の食パンより少量のイーストで「ねり」と「ねかし」を繰り返した後、発酵を長くとり、しっかり温度管理するという専用プログラムで、難しいパン・ド・ミ生地を上手に作ってくれていたことが分かります。

HBでここまでできるようになっているのは正直驚きました。日々進化しているんだなぁ。

完全に冷めてからカットしてみると、きめ細かいというよりは、水分が多いだけにとてもしっとりとやわらかいクラム(中身)です。クラスト(表面)も基本の食パンより薄く、ふんわりと食べやすいです。

食パンはスーパーでも安く売られているし、HBでも簡単に焼けるので、なんとなく「食パンは簡単に作れる」と思われている方も多いかもしれません。でも実は、食パン作りには時間もかかりますし、生地作りや焼き上げる工程には高い技術と経験が必要とされます。「シンプルなものほど難しい」ということでしょうか。それがこんなに簡単に焼けるのは本当にすごいこと!  基本の食パンはもちろん、特に今回のパン・ド・ミに関しては、特にその技術の進化に驚かされました。

ハード系パン「クッペ」を焼いてみた!

そしてこのHBももちろん、食パンを焼く以外の機能もいろいろ搭載されています。sirocaと同様、おもちや甘酒も作れますが、このHBの特長は豊富な生地作りのメニューにあります。

家庭でのパン作りで憧れる人も多いハード系のパン。その中で今回は、大きなクープ(切れ目)が特徴の「クッペ」を焼いてみます。

【材料】

  • フランスパン専用粉
  • モルトシロップ
  • インスタントドライイースト

メーカーのレシピではモルト粉を使用していますが、モルトシロップに変更し工程も若干変えています。そのほかは公式レシピ通りの作り方です。

水にモルトシロップを溶かしておきます。パンケースにフランスパン専用粉と塩を入れ、モルトシロップを溶かした水を回し入れます。パンケースを本体にセットしたらインスタントドライイーストをイースト容器に入れます。

今回は「生地」ボタンを押して「d2 ハード生地」を選択してスタート!  あとは発酵終了まで約2時間です。

発酵終了!

生地表面に打ち粉をふり、生地をできるだけ傷つけないように台の上に出します。分割して丸め、乾燥させないように休ませます。

成形をしたら布でヒダを作り生地を支えて発酵させます(布取りという工程です)。生地表面にクープ(切れ目)を入れ、スチームを入れたオーブンで焼いてできあがり。

ハード系のパンらしい気泡もしっかりできました!

今回作ったハード生地はべたつきやすく初心者の方には特に扱いが難しく感じると思います。しかし、機械を使って短時間で作るハード生地としてはなかなかの仕上がり。ぜひ挑戦してみてくださいね。

お手頃機種と高級機種のHBを使ってみての感想

前回のお手頃なsirocaと高級機種のPanasonicを比べると、メニュー数とパン生地作りの性能の差は確かに大きく感じました。ですが、それも使いこなせなければ宝の持ち腐れ。今後自分がどんなパンを焼いていきたいかで選ぶ機種は変わってくると思います。

パン作りに興味のある人や、今後色々なパンを焼いてみたい人、またすでにある程度パン作りの経験があるという人なら、Panasonicの高度な機能を応用していけば様々なパンが作れます。扱いに慣れが必要な生地もありますから、応用編のパンを作るためには経験と少しの勉強が必要かもしれません。

それほどパン作りにこだわりがなく、「焼き立ての食パンとちょっとしたアレンジパンが食べられればいい」という人には、気軽にトライできるsirocaでも十分ではないでしょうか。ちゃんとおいしいパンが焼けますし、約1万円というお値段も魅力的です。

ライフスタイルや、パン作りにどれくらい時間がかけられるか、パンへのこだわり度などに合わせて選んでみてくださいね。

 

今回、久しぶりにHBでパンを焼き、私自身最近のHBの進化に驚きつつとても良い経験になりました。HB購入に迷っている人の参考になるとうれしいです。焼き立てのパンの香りとともに、豊かなおうち時間が過ごせますように。


nagyi

「なぎの木パン教室」主宰。​趣味から始め、本格的にパン作りを学び、オンラインでのパン教室をスタート。ブログやInstagramで、作ったパンの写真を中心に“小さな彩りのある暮らし”を発信している。その他、パン関連のコラム執筆などでも活躍中。

●「なぎの木パン教室」オンラインレッスン
https://nagyinoki001.wixsite.com/lesson

●ブログ「パンが主役の”ものづくり”」
https://nagyinoki.blog.fc2.com

●Instagram:@nagyinoki
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