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【ごみ清掃芸人に聞く】一年を締めくくるごみ出しのコツは?年末、ごみの出し方をサクッとおさらい

あっという間に今年も終わり。毎年思うことではありますが、掃除と片付けをきっちり進め、スッキリした気分で新たな一年を迎えたいですよね。そこでお笑い芸人として活動しながら現役のごみ清掃員としての顔も持つ、「マシンガンズ」の滝沢秀一さんの元へ。まずは、一年の最後を飾るごみ出しの極意を聞きました。

年末は一気に大量のごみ出しをする家庭が多い!

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改めて年末のごみ捨てについて、注意点を教えてください。

「年末になると多くの方が大掃除みたいなことをやり、一気にわ~っと大量のごみを出します。でも、ごみは無限に捨てられるわけではありません。だいたいどこの自治体でも、いちどに出せるのは3~4袋という決まりがあります。各家庭に配布されるパンフレット等に書いてあるはずですが、ほとんどの方が知りませんよね。自分がやっていることって、他の人もやっている可能性が高いもの。一軒で20袋も出されたら収集車がまんぱんになり、担当地域を回れなくなっちゃいます」(以下「」内、滝沢さん)

ごみ袋に捨てた人の名前が書かれているわけではありませんが、一軒家でなくても、同じ人が大量に出したごみというのはわかるそう。

「マンションでもだいたいわかります。ごみの出し方というのは、“なくて七癖”。僕は袋の口を対角線同士でそれぞれ二重に結んでいますが、一括りにして縛る人もいます。自分のやり方が当たり前でそれが標準と思いがちですが、本当にそれぞれ。ごみの内容も似たようなものだったりして、“これ20袋あるな”と思ったら、警告シールを貼って置いていきます」

そうならないため、私たちにできる対策はありますか?

「その年の最後の収集日直前に大掃除をし、あれもこれもいらない!ということになっては困ります。そこで、今度からは大掃除を前倒しにしてみては? 12月に入ったころから意識し、何回かにわけて捨てる。粗大ごみを出すなら事前に予約が必要なのはもちろんですが、それ以外も計画的に捨てていただけるとありがたいです」

大掃除をやめて、日々の小掃除にシフトしている家庭も増えています。

とにかくごみを減らす!

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そして大事なのは、大掃除や片付けで出た不用品について、ごみとして捨てるものを減らすこと。

まずはごみと資源の区別をつける。資源ごみに回せば、それはごみではなくなります。資源になって生まれ変わるのと、可燃ごみとして燃やされて灰になるのとでは、ごみを出す側としても真逆の行為に思えますよね。そのときにポイントとなるのは紙とプラスチックで、それをちゃんと分別するだけでごみ全体の3分の1が減ります」

そうやって分別したごみは、どうしたらいいのでしょうか?

「紙パックや、ペットボトル、食品トレーは、スーパーの店頭や自治体の窓口に設置されたリサイクルステーションに持っていく。プラスチックには食品トレーの素材であるPS(ポリスチレン)以外にも、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などたくさんの種類がありますが、リサイクルするには同じ素材を集める必要があります。また汚れや匂いを洗浄することが難しいため、納豆のパックやカップ麺の容器はトレーとは扱いが異なります。プラスチック資源分別回収を行っている自治体の場合は、それを利用してください」

なるほど、あとはフリマアプリなどを利用する手もありますね?

フリマアプリ、いいですね~、とてもいいです。自分にとっては不用品でも、誰かが使ってくれたなら嬉しいですよね。食べものだけでなく、モノの値段も高騰しているわけですから。ただ、出品するにも手間がかかるのは確かで。個人的には、バザーがいいなと。近々、自分で主催しようかと考えてます

もっとごみを減らしたい…でも、それは捨てられません!

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処理の仕方の判断に迷って家庭の中で放置されたごみを、大掃除タイミングで処分してみるという人もいそうです。

「可燃か不燃か? わからないからそのままにしておく、という人もいるでしょうね。もちろん自治体によりますが、ベルトやカバン等も、素材の9割が可燃なら可燃ごみに。“9割ルール”が採用されることは多いです

ただ資源は別で。紙、食品、トレー、ペットボトルと、同じ素材を集めなければ意味がありません。日本には『指定PETボトル自主設計ガイドライン』というのがあって、リサイクルの効率化のため、ペットボトル本体は無色透明のPET(ポリエチレンテレフタレート)で出来ています。

最近、外国製のドリンク容器で、下部がプラスチックで上部が缶の素材のものがありますよね。フランス産の炭酸入りミネラルウォーターの入った緑色のペットボトルもそうですが、それらはリサイクル出来ません。僕が処理工場で分別作業をしていて流れてきても、手ではじいて可燃ごみに入れちゃいます」

緑色のペットボトルのキミは、ジャパンでは資源にならないのだよ……。

紙の捨て方には細かい配慮を

個人情報の書かれた封筒

封書やはがきの個人情報部分は、しっかりシュレッダーにかけておきましょう。

僕の場合は宛名の部分だけを破ってシュレッダーにかけ、残った封筒の部分はそのまま資源に回します。ちょっと面倒臭いかもしれないですけど、そこまでやれたら安心です。

可燃ごみや不燃ごみは、興味を持って勝手に開けて中身を見る人がいるようで、カラスとかじゃないよな……という変な開き方をした袋を何回も見たことがあります」

資源にならない紙ごみ

食べ終わったピザの箱は可燃ごみへ。

「クレヨンでお絵描きした紙、チーズや油で汚れた宅配ピザの箱、墨汁で書かれた習字の紙は資源ではありません。そうした紙は再生したときに、点々と汚れのように残ってしまうんです。

資源として回収された古紙は、印刷されたインキ成分を除去する“脱墨(だつぼく)”という工程を経て、さらに漂白します。なので、鉛筆や水性ボールペンで書かれた紙は大丈夫。資源も、リサイクルの工程を知ると、何をしてはいけないかがわかりますね」

「リサイクルの工程を知ると、資源の出し方がわかりやすくなりますよ」

庭掃除で出る石や土、レンガは捨てられません!カブトムシ飼育のおがくずは可燃へ

レンガは産廃に出すしかありません。

「石や土はもともと自然界にあるもので、ごみではありません。僕らはごみを回収してるので、石や土は回収出来ません。

買うことは簡単に出来るけど、捨てられないものって世の中にはあるんです。レンガもそう。燃やすことも再生することも出来ませんので、産廃にお願いするしかありません。

また一見すると土のようですが、カブトムシを飼育するときに使うおがくずは可燃ごみです。燃えますからね! でも庭があるなら土に埋めておけば大丈夫。葉っぱなども庭の隅に置いておけば、分解されて腐葉土になります」

ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。必ずお住まいの地域のルールをご確認ください。そうしたルールの書かれたパンフレットなどを読んでみると、意外といろいろな発見があって面白いかもしれません。

撮影/小倉雄一郎(小学館)

【取材協力】

滝沢秀一(たきざわしゅういち)

1976年生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ『マシンガンズ』を結成。
『THE MANZAI』 2012、2014年認定漫才師。
2012年より定収入を得るため、ごみ収集会社に清掃員として勤務を始める。
現在、SNSや執筆、講演会等にて、ごみ清掃中に気がついたことを発信している。
著書に『このゴミは収集できません』(白夜書房)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)などがある。
「滝沢ごみクラブ」というごみを減らすためのオンラインサロンを開催中。

浅見祥子
浅見祥子

映画ライター。映画配給会社勤務を経て、フリーランスに。二児の母。
『ビーパル』(小学館)、『田舎暮らしの本』(宝島社)などの雑誌、『@DIME』、『シネマトゥデイ』などのWEB媒体で映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。
西田敏行の語り下ろしエッセイ本『バカ卒業 ~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~』(小学館)、お笑い芸人ニューヨークのエッセイ本『今更のはじめまして』(ワニブックス)を担当。

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