質の高い「東洋文庫」の所蔵を展示するミュージアム
null『東洋文庫』とは、日本最古で最大の東洋学専門の図書館ならびに研究機関。アジア地域の歴史と文化を幅広く扱っています。蔵書の質の高さと量により、世界5大東洋学研究図書館のひとつとしても知られており、世界中から研究者が訪れている場所。その蔵書数は国宝5点、重要文化財7点を含めてなんと約100万冊!
併設されている『東洋文庫ミュージアム』は、『東洋文庫』所蔵の質の高いコレクションを使った展示が行われる日本最大級の本の博物館です。
『東洋文庫ミュージアム』の中で一番有名なのが、オーストラリア出身のジョージ・アーネスト・モリソンが集めた東アジアに関する書籍、絵画、冊子など2万4,000点のモリソンコレクションを収めた「モリソン書庫」。三菱財閥の3代目で『東洋文庫』の創設者である岩崎久彌がコレクションを一括購入し、保管されています。
この「モリソン書庫」の書棚の美しいことといったら! 本には触れることができませんが、ヨーロッパの古い図書館を訪れたような気分になれる場所です。
古地図から浮き上がってくる「当時の日本」
null「モリソン書庫」を抜けた奥の展示室で2019年1月14日(月)まで開催されているのが「大地図展 古地図と浮世絵」。江戸時代のものを中心に、国内外を描いた地図、そして各地の名所や旅の様子を描いた浮世絵を展示しています。
日本における地図作りの立役者といえば、ご存知、伊能忠敬(いのうただたか)。49歳で隠居し、50歳から江戸に出て天文と暦学を学び始めた伊能忠敬は、55歳から17年という長い年月をかけて日本全土を測量。日本全図『大日本沿海輿地全図』を作成しました。
この『大日本沿海輿地全図』、現在の地図とほぼ変わらない非常に正確なもの。
展覧会では、伊能忠敬が“伊能さん”としてキャプションで登場。おもしろおかしく当時の模様を説明してくれます。
伊能忠敬が作った地図は時代が進むにつれて改良が重ねられ、よりいっそう正確なものになりました。
下記の写真は、ドイツ人医師でオランダ商館医として長崎に滞在していたシーボルト博士が書いた『NIPPON』の中の1ページ。日本全図の詳細な地図が収録されています。
しかし、ここまで正確な日本の形が外国に知れてしまうと、日本の弱点も外国に把握されてしまうことに……。江戸時代後期の1828年にいわゆる「シーボルト事件」が起こったのも日本地図の持ち出しが発端でした。
昔はとくに、地図がとても価値のあるものだったのです。
地名がぎっしり! カラフルな絵入りの地図も
null正確な形を記した地図の一方、カラフルでわかりやすい絵が描かれた地図も人気がありました。
下記の地図は、富士山を望める13の国を描いた『富士見十三州輿地全図』。
大きな絵図に近寄って見てみると、細かい文字で地名がぎっしり! 火口の中までも書き込まれています。
展覧会では、他にも様々な地図を観ることができます。昔は栄えていた街、いまは人気スポットなのに当時の地図には名前すらない地域など、描かれた当時の日本に思いを巡らせてみましょう。地図がただの道しるべにあらず、たくさんの情報が詰まった貴重なものだった時代に想いを馳せるのも楽しみ方のひとつ。
会場では拡大鏡のレンタルサービスもありますので、細かいところまでじっくり鑑賞できますよ。
子どもと一緒に! 「学習ノート」を活用してみて
nullそして「大地図展 古地図と浮世絵」には、ぜひお子さんと一緒に出かけてみてください。というのは、会場で展示を見ながら考えたことを書き留めることができる「学習シート」を配布しているから。
単に地図を観るだけでなく、何が描かれているか、それがどういう意味を持っているのかをしっかりと考えることができるようになっているのです。
日本史好きなお子さんはもちろん、歴史に興味を持ち始めたお子さんと訪れれば、より一層好奇心を刺激してあげられそう。ぜひ時間をかけて考えながら見学してみましょう。
現代はスマートフォンのアプリがあればどこへでもたどり着ける時代。地図を広げることも減っていますが、現代の地図が後世にどんな形で残るのかも興味深いところです。
「大地図展 古地図と浮世絵」は、2019年1月14日(月祝)まで。気になった方は、この機会にぜひ『東洋文庫ミュージアム』に出かけてみてくださいね。
【展覧会情報】
会期:2018年9月15日(土)〜2019年1月14日(月祝)
会場:『東洋文庫ミュージアム』 東京都文京区本駒込2−28−21
開館時間:10:00~19:00(最終入館18:30)
休館日:火曜(祝日の場合は翌平日)、展示替期間、年末年始(12月30日〜1月2日)
最寄り駅:JR山手線、東京メトロ南北線「駒込駅」より徒歩8分