現代日本画の繊細な美しさを味わえる美術館
null『郷さくら美術館』は、もともとは福島県郡山市に2006年に開館(現在は休館中)した現代日本画を中心に収集・展示する美術館です。現代日本画の魅力をより広く伝えるため、2012年に東京にも美術館を開館し、2017年9月にはニューヨークにもギャラリーを開設するなど、精力的に活動。現在の収蔵作品数は700点以上に及んでいます。
『郷さくら美術館』の収集方針は少し独特で、昭和以降に生まれた作家の日本画作品であること。原則として50号以上の大型作品を中心に収蔵していること。
“日本画”とは、古来から伝わる日本の伝統絵画を総称したもので、明治時代に西洋からやって来た油彩画や水彩画などの“西洋画”と区別するために生まれた用語。そのため、江戸時代より前の絵画については、「狩野派」や「丸山派」など流派で呼ばれることが多いジャンルです。
そして“号”とは、絵画の大きさの単位こと。1号がだいたい葉書大のサイズとされており、号の数字が大きくなるにつれサイズも大きくなっていきます。50号だと幅は約1mくらいの大きさです。
つまり『郷さくら美術館』は、比較的新しい時代の作家、現代の私達の感覚に近い作家の作品を鑑賞でき、さらにどの展示作品もかなり大きいので見ごたえも十分な美術館なのです。
また年に数回、企画展を開催するほか、常設展では「桜」をテーマにした作品の展示を行っています。春夏秋冬、年間を通じて絵画でお花見ができる空間です。
ちなみに、彫刻にしろ絵画にしろ大きな作品を見るときは、まず距離を取り、全体の雰囲気を感じましょう。そして作品に近寄って作家の筆使いや色の置き方など細かい部分をじっくり見てみると、より作品が楽しめます。とくに日本画は、岩絵具(いわえのぐ)による繊細な色味と緻密な描写が特長。時間をかけてゆっくりご鑑賞ください。
『郷さくら美術館』では、展示作品の作家のコメントなども展示室で読めるようになっており、作品の理解をいっそう深められるように考えられています。収蔵作品に存命の作家が多いからできる、うれしい試みですね!
絵画でお花見…さまざまな「桜」を愛でる空間
null現在『郷さくら美術館』では、「第6回 郷さくら美術館 桜花賞展」(2018年5月27日まで)を開催中です。館名にちなみ「桜」をテーマに据えたコンペティション形式の展覧会で、今回は29名の若手作家による「桜」が揃いました。
冒頭の画像の絵画、鹿間麻衣の『巡』が今回の大賞受賞作品です。
29名の画家は、それぞれ全く異なる桜を描いており、その違いを見比べてみるのも面白いですよ。お花見で本物の桜を見た後に訪れるのもいいですね。
時間をかけて、たっぷりと“絵画のお花見”を楽しみましょう。
そして、美術館のもうひとつの見所はリノベーションされた建物。
外観は、桜をモチーフにした1,100枚の有孔(ゆうこう)タイルが並べられ、裏側から見ると陽の光が柔らかく差し込んで非常に美しい佇まいです。また、夜になると室内の灯りがタイルの孔から外に美しくこぼれ落ちます。
この風景もひとつの「お花見」として楽しむのも良さそうです。
目黒川沿いの桜を楽しみつつ、美術館にも立ち寄ってみませんか?
【施設情報】
『郷さくら美術館』
東京都目黒区上目黒1‐7‐13
開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
休館日:月曜日(祝日/振替休日の場合は翌日または直後の平日)、展示替え期間、年末年始
最寄り駅:
東急東横線、東京メトロ日比谷線「中目黒駅」正面出口より徒歩5分
お花見もできる都内の美術館
nullじつは『郷さくら美術館』のほかにも、都内でお花見を楽しめる美術館がいくつもあります。この季節に出かければ、アートも楽しめて桜も愛でられる、1回で二度おいしいお出かけになりますよ!
『東京都庭園美術館』
約4年かけた庭園の改修工事が先日完了した『東京都庭園美術館』は、その名のとおり庭園も美しい美術館。【子どもと楽しむ美術館】vol.3「庭に建物…全部が見どころ! “東京都庭園美術館”」でも取り上げました。さまざまな植栽に彩られた庭園では、量は多くないものの立派な桜が花を咲かせます。
『根津美術館』
南青山にある『根津美術館』には、起伏に富んでいて歩くのも楽しい庭園があります。5月に燕子花が満開となることで知られていますが、桜の季節も美しい風景を見ることができます。
『東京国立近代美術館』
皇居や千鳥ケ淵、北の丸公園といった桜の名所エリアにある『東京国立近代美術館』には、桜の開花時期に前庭に休憩所が設置され、その場でお花見を楽しめます。また、併設のレストラン「ラー・エ・ミクニ」のテラス席は皇居の桜が眼前に!