写真よりも写真みたい…「写実絵画の魅力」を知る
null東京駅から約1時間、土気(とけ)駅からバスで5分の場所にある『ホキ美術館』は、2010年に開館した日本初の“写実絵画”専門の美術館です。
千葉市最大の公園『昭和の森公園』に隣接しており、付近一帯はのどかな場所。
ふしぎな形をしている美術館なので、遠くからでもすぐにわかります。
思わず立ち止まって眺めてしまう建物は、設計・監理・都市計画をメインに、建築と都市のライフサイクル全般にわたる調査・企画・コンサルティングを行う専門家集団・日建設計の山梨知彦による設計。
2011年には日本建築大賞をはじめ、第18回千葉県建築文化賞、千葉市都市文化賞などを受賞しています。
美術館に入る前に、まずは周囲を一周して建物を見てみるのもおすすめです。
『ホキ美術館』に展示されている作品は、すべて医療機器メーカーであるホギメディカルを創設した実業家・保木将夫が収集したもので“写実絵画”というジャンルに属しています。
巨匠から若手まで約50作家450点の作品を所蔵しており、現在も少しずつ収蔵点数は増えているそう。
では、そもそも写実絵画とはどのようなものなのでしょう。
2018年2月現在、常設展示されている作品を見てみると……。
写実絵画とは、その名の通り写実的に極限まで精密に描かれた絵画のこと。一見すると、特にWEB上においては、写真のようにしか見えない作品ばかりです。
けれども、これらは全て画家が丁寧にキャンパスに自分の手で描いた絵画作品。実際に美術館で作品をじっと見てみると、ほんのわずかではありますが、作品に筆の跡などを見つけることができます。
※ 上記3点はいずれも『ホキ美術館』ギャラリー8で展示中
上述の≪「崇高なるもの」OP.6≫で描かれた野依氏の肌には、しわや血管・毛穴まで描き出されていますし、風景画では青い空や風にそよぐ木々、風景を写し込む水などすべてが現実世界そのままに見えてきます。昆虫標本も、足に生えた毛までしっかりと描かれているのです。
とはいえ、画家は“写真のように”目の前にある対象を再現することが目的で描いているわけではありません。
彼らは対象物を徹底的に観察していき、そのものの“本質”を洗い出すことが一番の目的。そしてその洗い出したものが、絵を作品として成立させているのです。
そのためでしょうか、展示作品はどれも強烈なパワーを持っていて、ひとつの作品をじっと見ていたらいつの間にか10分以上経っていることも。
なので、『ホキ美術館』を訪れるときは、できれば時間に余裕をもって出かけることをおすすめします。もっと見ていたいのに閉館時間が来てしまった、なんてことは悲しすぎるので……。
美術館内は、人物画や風景画・大作などが展示された3つのフロア、9つの展示室に分かれています。
洋画家・森本草介の日本最大のコレクション36点をはじめ、野田弘志、中山忠彦など、約40名の現代作家による写実絵画の名品約140点を見ることができます。
そして、先ほど外観に驚かされた建築についても、あらためてご紹介しましょう。
単なる直線の廊下にはせず、ゆったりとカーブを描く回廊のような展示空間は、歩いているとその先になにがあるのかワクワクしてきます。
そして鑑賞に集中できるように、作品を飾るレールやワイヤーなどは除かれ、作品だけが見られるように仕組みも工夫されています。
そういった“写実絵画をより美しく見せる工夫”が凝らされた建物も『ホキ美術館』の見所のひとつになっているのです。
さらにおすすめスポットは続きます。
併設するイタリアンレストラン「はなう」と地下1階にある「ミュージアムカフェ」は、味覚や視覚・嗅覚も満足させてくれる場所。
「はなう」は、ワインの揃えも充実したイタリア料理店。美術館に入館しないで食事だけの利用も可能です。
お昼のパスタランチコースは、手打ちのパスタに前菜やデザートもつく豪華仕立て。
「ミュージアムカフェ」は、地下ながら明るい光が降り注ぐ空間。
かわいらしいデザイナーズチェアに座ってケーキやサンドイッチなどの軽い食事も楽しめます。
月に数回、東京駅から出発するランチ付きの見学ツアーも開催されている『ホキ美術館』。
普段とは違う休日を過ごしたいときに、もってこいの空間ですよ。
【施設情報】
『ホキ美術館』
千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15
開館時間:10:00~17:30(最終入館17:00)
休館日:火曜日、展示替期間、年末年始
最寄り駅:
JR外房線「土気駅」南口よりバスで「あすみが丘ブランニューモール」行きに乗車、「あすみが丘東4丁目」下車すぐ
ジャンルに特化した美術館に行こう
null美術館には、『東京国立博物館』のように日本美術であればジャンルを問わず収集・展示を行う施設もあれば、『ホキ美術館』の写実絵画のようにひとつのジャンルに特化して収集・展示を行う施設もあります。
ここでは、そんな専門的な美術館をご紹介しましょう。
『東京都写真美術館』
「恵比寿ガーデンプレイス」内にある、写真と映像専門の美術館。日本の歴史が分かる貴重な資料写真から、ホンマタカシや本城直季など現代の人気作家の作品まで幅広く収集・展示しています。
『太田記念美術館』
原宿にある、浮世絵専門の美術館。浮世絵の始まりから現在に至るまで、約1万2,000点ものコレクションをテーマにあわせて展示しています。
『東京おもちゃ美術館』
以前、【子どもと楽しむ美術館】vol.4「まさに子どもの遊び場! 元小学校の“東京おもちゃ美術館”」でご紹介した、おもちゃ専門のミュージアム。木のぬくもりに触れられる「プレイルーム」は、いつも子どもたちの笑い声に満ちあふれています。
『アクセサリーミュージアム』
目黒区 祐天寺にある、コスチュームジュエリー専門の私立美術館。『CHANEL』や『ディオール』からヒッピームーブメント、バブル期のものまで、さまざまなアクセサリーを一望できます。
『切手の博物館』
豊島区 目白にある、世界中の切手を収集・展示している博物館。その数はなんと35万枚以上。また、切手を使った「切手はり絵」のワークショップなどイベントも盛んです。
(※ 情報は2018年2月現在のものです)