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息子(6年生)の手を少しずつ離す時期が、もうすぐそこ【ママはキミと一緒にオトナになる】

コラムニスト・ライターとして活躍する佐藤友美(さとゆみ)さんが、12歳の息子との会話を通して見えてきた新しい景色、新たな気づきなどを伝えてくれる連載エッセイの特別編。

kufuraでの3年間にわたったこの連載は今年の春に書籍になり、多くの方から嬉しい感想をいただいています。読者として見守ってきた息子くんは、6年生に。母であるさとゆみさんとの関係も、ずいぶん変化してきたよう。そんな「今」の二人をお届けします。

「玄米か白米がいい。野菜も食べたい」

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「もう、Uber Eatsはやめようと思う」と息子からLINEがきたとき、私は心の中で小さくガッツポーズをした。続いて、食パンとトマトとブロッコリー、目玉焼きとヨーグルトが並んだ典型的な朝食の画像が送られてきた。どこかで写真素材を拾ってきたんだろうか。
「こういうご飯が食べたい。あと、夜は玄米とお味噌汁がいい」

私は返事を返す。
「でも、野菜食べたくないし、肉がいいって言ってなかった? 玄米もマズいからいらないって」
「トマトとブロッコリーはわりと好き。玄米はいけると思う。やっぱ脂っこいものばかり食べてると、お腹の調子が変な気がする」

我が家がUber Eatsの味を覚えたのは半年ほど前か。仕事で遅くなる日に遠隔でお届けをしてもらったら、息子がすっかりハマった。私がいないときはもちろんのこと、家にいるときまで「Uber Eatsがいい」と言う日もあった。栄養が偏るなあと思う気持ちと、でもまあ楽ちんだしなあと思う気持ちとせめぎ合って、たいていは「じゃあ、いいよ。何食べる?」とメニューを選ばせてきた。文字通り”味をしめた”2人。

ただ、私のほうは早々に離脱した。味の濃い食事が続くと胃にくるお年頃だ。それでも息子は「今日もUber Eatsがいい」と頻繁に配達を頼んでいた。迷ったけれど、しばらくは好きにさせようと思っていたら、「やっぱり、Uberはもう辞める」と自分から言ってきた。素朴なご飯が食べたい。玄米か白米がいい。野菜も食べたい。肉じゃなくて魚が食べたい。

以降、彼は私の作る大変素朴な家庭料理を粛々と食べている。それまで聞く耳を持たなかった「栄養バランス」について、自分で調べたらしい。以前は嫌がっていた野菜も残さない。その様子を見て、「人は、自分で気づいたことならば、できるんだなあ」と思う。自分で言い出すまで待ってよかった。

できるだけ小さくいっぱい失敗してほしいと思って接してきた。なるべく早い時期にいろんな失敗をして、そこから立ち上がる方法を知ってほしい。
小学校に入学してからは、できるだけたくさん転びますように。でも大きな怪我はしませんように、無事に帰ってきますようにと祈って毎日家から送り出していた。

先日何か考え事をしているふうだったので、「どうした? 何かあった?」と聞いたら「昭和の学校に通っていた人に、令和の学校のことはわからないと思う」と返され、まあそれもそうかと思った。「じゃあ、困ったら友達に相談すればいいね」と伝えたら「うん」と頷く。親ができることは、もう、ほとんどない。

この連載が始まったのは、小学3年生のとき。私は、彼のことが好きだと書いた記憶がある。
今も私は、彼のことがとても好きだ。そして今は、彼のことを信頼もしている。自分のことを自分で決めようとする、その姿勢を信頼している。

うっかりミスることも、道を外すこともあるだろう。だけど、きっといつか自分で気づいて立ち上がると思う。もしくは友達が気づかせてくれる。手を貸してくれるだろう。もちろん、私で力になれるときは、力になりたい。

気づけば、いつの間にか身長を追いこされていた。
少年は、もうすぐ小学校を卒業する。
まだまだぎゅっと抱きしめていたい気持ちをかかえながら、少しずつ手を離す時期が、もうすぐそこだ。


 

好評につき重版!
『ママはキミと一緒にオトナになる』佐藤友美・著(1,650円税込・小学館)

kufuraでの3年間の連載が書籍になりました。
息子(連載スタート時には9歳)と二人暮らしのシングルマザーが、彼との会話や子育てを通して見えてきた世の中のこと、家族のことを綴った3年間の記録。

実際に子どもが生まれてわかったのは、
「たしかにできなくなったこともあるけれど、
それ以上にできるようになったことの方がずいぶん多い」
ということだった。これは、私にとって、驚きの誤算だった。
(本文より)

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佐藤友美(さとゆみ)
佐藤友美(さとゆみ)

佐藤友美(さとゆみ)
ライター・コラムニスト。1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経てファッション誌でヘアスタイル専門ライターとして活動したのち、書籍ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。
著書に8万部を突破した『女の運命は髪で変わる』など。理想の男性は冴羽獠。理想の母親はムーミンのママ。小学5年生の息子と暮らすシングルマザー。

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