小学生にとって6月はトラブル多発期
小学校教師向けの専門誌『教育技術』(小学館刊)によれば、6月は校内でいろいろなトラブルが起きる時期だという。
●学校や先生に慣れてきて、子供たちが不平不満を持ちはじめる。
●子供のコミュニティーが形成されはじめ、子供同士のトラブルが増えてくる。
●中だるみから忘れ物が多くなり、集中力も途切れがち。
●梅雨を迎えて体調を崩しやすくなり欠席率も高くなる。
こうしたトラブルは6月になって急に発生するのではなく、今までの2カ月に起きた小さなトラブルが蓄積されて、気づかないうちに大きなトラブルに発展するのだという。
家庭でも、子供のちょっとした変化に不安を抱き、学校や教師に不信感を抱き始める場合がある。
尾木直樹氏は、『尾木ママ 小学一年生 子育て、学校のお悩み、ぜーんぶ大丈夫!』(小学館刊)で、さまざまな親の悩みに回答をしているが、その中に「担任の先生を信頼できません」という悩みがある。
「担任の先生を信頼できません」
Q:担任の先生を信頼できません。
入学以来、私自身が担任の先生を信頼できずにいます。でも子どもたちにそれが伝わると不安にさせてしまうと思い、娘の前では一切言わないようにしています。しかし娘は先生をよく見ていて、帰ってくると先生になりきって遊びます。こちらが感心するほど先生の特徴をよくとらえていて、今の担任の様子がよくわかるのです。強い口調や脅すような言い方、スムーズにことが進まないいらだちが伝わってきます。
「安心して任せられる」と私が思えない先生に子どもを預けるのはとても抵抗があります。時間がたてば信頼できるようになるでしょうか。(E・Yさん)
A(尾木直樹氏):どんな先生にもいいところは必ずあるはず。同じクラスの保護者と情報を共有しましょう。
子どもは親が思っている以上に、大人の様子を観察しています。この子はすでにママの顔つきや表情、言動から敏感に感じ取っているのだと思います。「ママも私と同じことを思っているんだ」ってね。だから、先生のそういうところをマネて見せているのかもしれません。もちろん、本人は無意識にやっているのでしょうけれど。
この先生には嫌なところがあるのでしょう。けれど、いいところもきっとあるはずよ。大切なのは先生を360度立体的にとらえること。参観のときに見て、「やっぱり……」と納得しているようでは、それ以上のことは何も見えてこないわ。先生の一面だけに注目しすぎると、ほかの面が見えなくなってしまいがちです。ときには「この先生の素敵なところはどこだろう」と、探す努力も必要です。どんな人間にも、いいところと悪いところがあります。ママがもっと先生を知ることで、娘さんの不安解消にもつながるかもしれません。(後略)『尾木ママ 小学一年生 子育て、学校のお悩み、ぜーんぶ大丈夫!』(小学館刊)より
こう指摘したうえで、ほかのママと情報を共有することを勧めている。それは、だれかと情報を共有することで先生に対するとらえ方も広がるし、異なる意見を聞いて気づくこともあれば、逆に同意見を聞けば「私だけではなかった」と気持ちが楽になるから。
子供も学校という社会にもまれて徐々に自立心が育っていく時期。親もゆっくり子供の成長を見守っていこう。
尾木直樹(尾木ママ)
教育評論家。臨床教育研究所『虹』所長。1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都の公立中学校の教師として22年間、子どもを主役としたユニークで創造的な教育を実践、その後法政大学教授、2017年4月より法政大学特任教授に就任。
文/まなナビ編集室 写真/(c)paylessimages / fotolia
(初出 まななび 2017/06/22)