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【脱・中学受験】息子(12歳)とアラフォー母の「カナダ親子留学」。医療や気候などデメリットもあるわけで…

12歳の息子くんと一緒にカナダに「親子留学」しているエディター・高橋香奈子さんの短期連載。第5回は、住んでみてわかった「カナダ留学でデメリットに感じる点」について。

海外生活はメリットばかりではない

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カナダに引っ越してきてから9カ月が経過。基本的には親子ともに楽しく過ごしており、生活には満足していますが、いいことばかりではありません。

単身で、親子で、家族でカナダに来たものの、さまざまな事情から日本に帰国する道を選ばれる方もいらっしゃいます。今回は、カナダに来てデメリットに感じたことを書いてみようと思います。

デメリット1:医療のハードルが高い

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体調が悪いときに買った息子と私の市販薬。冬場にインフルエンザなどが流行っている時期は、かなり品薄になっていました。

カナダには「MSP」というカナダの地方政府が提供する公的医療保険があります。ビジターとして滞在している私は加入できませんが、学生ビザを発給してもらっている息子は加入しています。カナダ市民や永住権を持った方もこのMSPに入っており、加入者はほとんどの場合、無料で診察や治療が受けられます。

こう聞くとかなりメリットのように思えるかもしれませんが、実際にはそううまくはいきません。カナダで病院にかかりたい場合、まず“ファミリードクター”(かかりつけ医)か、かかりつけ医がいない場合は“ウォークインクリニック”を訪れて診てもらい、そこから専門医の診察が必要になった場合のみ、紹介状をもらい、専門医に診てもらえる流れなのです。

さらには、日本のように「体調が悪いから予約なしに病院へ行こう」と気軽に行けることもあまりありません。私は冬に大風邪をひいてしまい、高熱がなかなか下がらなかったことがありました。高熱が3日続いたらさすがに病院にかからねばと思い、(かかりつけ医がいないので)近所のウォークインクリニックに行こうと調べたら、完全予約制で最短予約可能日は1週間後……。

市販薬を買い、ハァハァ言いながらも家で寝ているしかありませんでした。私は体が丈夫なほうであまり風邪などをひかないのでまだ良かったのですが、これが頻繁にあるとさすがに辛いですよね。

近年、カナダは世界中から移民を多く受け入れており、人口も増えているので、そもそもファミリードクター自体が見つからないという声も聞きます。カナダに生まれ育った人に聞いても、病院にはかかりづらいと言っていたので、留学生だからではなく、カナダ自体の問題のようです。

デメリット2:歯医者が高すぎる!

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個人で歯科治療の保険に入っていたり、自分が働いている会社の保険が歯科治療を対象にしていたら、治療費の補助がありますが、そうでなければ全額自腹。先述のMSPも、歯科治療は対象外。

先日、息子が歯が痛いというので歯医者に連れていき、先生に口の中を診てもらい、レントゲンを撮ってもらったら、結局痛む歯はまだ乳歯で、下から永久歯が押し上げてきているから痛みがあるというだけでした。で、この診療代はなんと1万円!

日本なら子ども医療証があるので0円です。私の歯が欠けてしまったときも応急処置だけで3〜4万円かかりました。定期検診や歯のクリーニングだけでも高いし、もし虫歯が続けば、生活費を圧迫しそうと思うくらい高額です。

デメリット3:冬が長くて寒い。雨が多い

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子どもにとっては楽しい雪ですが、交通機関も乱れるし、寒いし、私は苦手……。雪が積もる景色は美しいです。

私が住んでいるバンクーバー界隈はカナダのほかの地域と比べると冬が厳しくないほうですが、東京より北に住んだことがない私にとっては、じゅうぶんすぎるほど寒いし、時々雪も降ります。そして、秋冬は雨も多く、晴れ間はほぼなく、大抵がどんよりとした空。

年によって違いますが、去年の10月くらいから雨が降るシーズンに突入し、4月くらいになって、ようやく雨が減ってきたような感じ。5月になってやっと晴れ続きとなったのですが、心地よい気候は5月から9月までととっても短いんです。

私は息子が野球をやっているおかげで、途中で雨があまり降らないアメリカの地域に遠征に行け、紫外線を浴びることができましたが、そうでもしないと気分まで鬱々としてしまいそう。秋冬はあまりに太陽が出ないので、ビタミンDの摂取を勧められるほどです。

デメリット4:家賃も外食も、スーパーでの買い物も高い

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平日の夜に子どもの野球の練習があるときは、帰宅が遅くなるので、練習の合間や練習後に食べるお弁当を作っています。外食をすると高いし、東京のようにどこでも飲食店があるわけでもないので。

今住んでいるバンクーバーは郊外でも家賃がとても高い! 10年前なら東京よりも安かったようですが、今は10年前の倍くらいになっているところもあるそう……。

近年のインフレでスーパーで買うようなものも高くて、日本でいうと高級スーパーで買い物をしているような金額感です。外食も高くて、ファストフードや気軽なお店だったとしても、ランチ2人で3,000円、ディナー5,000円くらいはかかってしまいます。

外食はカナダに来てからほぼしておらず、数える程度。日本の“数百円で買えるお弁当”が恋しいです。

こんなデメリットが原因で、帰国を選択される方も!

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我が家の場合は、こんなデメリットを差し引いても、今のところ留学はプラスがあると感じています。なかには、どんなに親御さんや子どもが優秀で、英語に困らなかったとしても、家庭や子どもにとってこれらのデメリットの存在が大きすぎたり、許容できない問題と感じられた場合、帰国していく人もゼロではないのが事実。

やっぱり日本が恋しい、となる人もいるし、子どもが学校になかなか馴染めなくて子どもの意思を優先して日本に帰る人もいます。

私も子どももカナダに住んだことがなかったので、とりあえず学生ビザが取れる1年間行ってみよう! そしてもし合わなければ帰ろうという気持ちで渡航しました。もし合わなくても、帰国後に、日本の住民票があれば地元の中学校に入れることも確認済み(地域により異なる場合あり)だったので、安心して挑戦することができました。

特に、子連れで海外に住む場合は、“子ども次第”な点が大きいと思うので、もしダメだったらこうしようというBプランを用意しておくのがいいですね。

高橋香奈子
高橋香奈子

ファッションエディター。ファッション雑誌『Oggi』(小学館)、ウェブマガジン『mi-mollet』(講談社)を中心に、書籍、ウェブコンテンツ、ファッションカタログなどの編集・ライティングを行っている。好きが高じて著者として出版した、旅行ガイド本『子連れGUAM』(ワニブックス)は、これまでなかった“子連れ母”目線が話題を呼び、何度も重版。プライベートでは、12歳野球少年の母。2022年8月末から息子と2人でカナダに移住。親子留学の様子はInstagram@takahashi_kanako_  で投稿中。

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