一方で、親世代からは、カリキュラムが変わることに対する期待とともに不安の声も聞かれます。
今回は、小学校のお子さんがいる女性121人に学習端末(タブレットやパソコンなど)の配布状況や、端末の配布によって生じた不安・悩み・よかったことについてお聞きしました。
「GIGAスクール構想」とは?
nullそもそも“GIGAスクール構想”とは、どのような構想なのでしょうか。
文部科学省のホームページを参照すると、“GIGAスクール構想”とは「子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現」のために、通信ネットワークを整備し、児童・生徒が1人1台の学習端末を持つための取り組みのこと。
2021年5月に文部科学省が公表した「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の進捗状況について(確定値)」によれば、全自治体等のうち 1,748自治体等(96.5 %) が2020年度内に納品を完了する見込みだそう。
『kufura』編集部が、2021年6月に小学生のお子さんがいる女性121人に端末の配布状況について聞いたところ、配布済の割合は以下の通りでした。
【端末の配布状況】
配布されている・・・54.5%
配布されていない・・・42.1%
配布された子どもと、配布されていない子どもがいる・・・3.3%
半数超が「配布されている」と回答しています。
端末の取り扱い方法については日常的に自宅に持ち帰る学校と、常に教室に置いている学校に分かれており、バラつきが見られます。
「端末配布済み・毎日持ち帰る」家庭からは、「荷物が増えた」の声
null続いて、端末を配布されている家庭に、現在の端末の取り扱い方法や、悩みについて聞いてみました。
まずご紹介するのは“持ち運びの負担”について。生徒個人が端末を持ち帰っている家庭からの声をご紹介します。
「重いのに持ち帰ったり、また学校に持って行ったり、かわいそうに思う」(41歳・主婦)
「タブレットを自宅で使わなくても、学校で使わなくても、毎日ランドセルに入れて持って歩かなければならなくて、毎日重たいランドセルを背負っていて大変そう」(49歳・主婦)
「持って帰るときが重すぎる」(49歳・主婦)
ICT環境の整備が進んでいる学区では、学習端末から宿題を提出するクラスもあります。しかし、紙の教科書やノートも運ばなければならないので「重くて負担」という声があがっていました。
目の酷使による「視力の低下」を不安視
null端末を見ることで、視力の低下を心配する声も複数寄せられました。
「タブレットを使いすぎると、目に良くないし、気になります。なるべく時間を決めるように注意します」(34歳・その他)
「長時間使用しているので、目に悪い気がする」(34歳・総務・人事・事務)
「まだ一度しか持ち帰りがないのでよくわからないが、確実に視力は落ちてきている」(47歳・主婦)
2020年春の一斉休校後は、さまざまなメディアで子どもの視力の低下が問題となっていました。日ごろから自宅でゲームやテレビ視聴を通じて目を酷使している子どもの“目への負担”の増加を懸念する声が聞かれます。自宅に持ち帰るようになってから「本を読む時間が減った」「ずっと触っている」という悩みも寄せられました。
自宅学習時に「親のデジタルリテラシー」が求められる場合がある
null自宅で提出物を作成する際には、親のサポートを要するケースもありました。
「子どもがタブレットの使い方がわからない。親が教えた」(41歳・総務・人事・事務)
「扱い方が私にはわからず主人が教えていました! 私も勉強しないと。焦ります!」(43歳・コンサルタント)
「パワーポイントを使っての宿題があり、子どもから質問されたことがわからず、私がネットで調べなければならず、苦労した」(40歳・主婦)
子どもが端末を使って自宅で宿題をする場合、親の指導が必要になることも。端末の使い方を教えることについて「自信がない」「負担」という声が聞かれました。
子どもの乱雑な取り扱いを見ていると不安
null先生からは、端末を大切に取り扱うように口を酸っぱくして言われていると思いますが、それでも親はヒヤヒヤすることも……。
「学校での使用と家での使用で持ち帰ってくるのですが、うちには保育園児がいるのでいたずらされて壊したら弁償しなくてはいけない」(45歳・その他)
「防水対応の機種ではないため、取り扱いが慎重になり、なかなか使いこなせずにいます。視力低下への影響がないか心配です」(35歳・主婦)
「子どもが乱雑に扱ってそのうち壊すのではと思っている」(38歳・営業・販売)
今回のアンケート対象者は、小学生の子どもがいる女性。皆さんの回答から推測するに、端末が精密機器であることを忘れ、普通の荷物と同様に取り扱ってしまうという子もいるようです。
「ずっと学校に置きっぱなし」のケースも多い
null今回のアンケートでは「配布済だが、自宅に持ち帰っていない」という回答が3割でした。
「自宅には持ち帰らないので、何に使っているかが分からない」(49歳・営業・販売)
「配布されているが、学校からの持ち出しが禁止されている」(39歳・主婦)
「緊急事態宣言中にしか持ってかえらず、家では短時間のオンライン授業で使ったのみ。家での置き場所に困った」(48歳・主婦)
持ち運びの負担はないものの、新型コロナウイルスの影響で参観会の機会は激減しており、カリキュラムがどのように変わっているのかがわからないことへの不安感が聞かれます。
セキュリティや、デジタル・アナログの二重負担への不安も…
null他には、こんな心配ごとも寄せられました。
「宝物を写真に撮って送るといった宿題だったが、家庭内の映り込みに抵抗があった」(44歳・主婦)
「まだ自宅に持ち帰ることはないが、授業中お友達がふざけてYouTubeを見ていたと聞いてちゃんと授業が進むのか心配している」(43歳・主婦)
「タブレットを家でやっているが、ちゃんと勉強になっているのか、わからない」(40歳・主婦)
「職員室の先生の机にはPCがない。メールも普及していない。いまだにファックスでのやり取りがあることにもびっくり」(48歳・主婦)
プライバシーの問題や、自宅学習時間の集中力に関する問題、移行期間につき“デジタル”と“アナログ”を併用することの二重負担について心配している人が見受けられました。
以上、今回は、端末の配布状況や、家庭での心配ごとにまつわるアンケートの内容をご紹介しました。
移行期ならではの、さまざまな悩みがありました。
「GIGAスクール構想」は、調べ学習、プレゼン資料や文章の作成、データ分析などを通じて教科の学びを深めるという狙いがあるとのことですが、教育現場の先生の負担増加や、子どものカリキュラムの過密化を不安視する声もあります。
現在は現場で試行錯誤が重ねられていると思いますが、ゆくゆくは、さまざまな事情を抱えた個人に寄り添った教育につながっていくといいですね。
【参考】