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何度もせがまれ…エンドレス!同じ本を繰り返し読むのがツライとき、どうする?【絵本ナビ編集長の読み聞かせ相談】♯9

「もういっかい!」「もう一冊よんで!」絵本が好きなのは嬉しいけれど、長い一日の終わりでママもくたくた。同じ絵本を何度もくりかえしているうちに、まぶたが落ちてきて……なんていう経験、誰もがあるのではないでしょうか。

この連載では、『絵本ナビ』編集長の磯崎園子が、月に1テーマずつ、読み聞かせの悩みについておすすめの絵本と共に回答していきます。今回のテーマは「同じ本を繰り返し読み聞かせるのが辛いときの対処法」についてです。

Q1:3歳の子ども。1歳の頃から何度も同じ絵本、同じ場面をエンドレスに読んでとせがまれ、疲れました(34歳・その他)

 A1:スキンシップを取り入れて、ママも楽しめる時間にしちゃいましょう。

 小さな子どもたちは「くりかえし」が大好き。気に入ったら何度でも味わいたい。どうしてこんなに好きなのでしょう。理由はいくつかありそうです。

 ・そのお話が楽しいっていうことを知っているから。

・知っているお話を聞くのは安心感があるから。

・繰り返し聞くことで、その言葉の流れを覚えたり吸収しているから。

・その言葉をママやパパに言ってもらうのが好きだから。

 つまり「お気に入り」を見つけちゃったら「くりかえし読んでもらう」、これがセットになっていることが、もう幸せなことなのです。だけど、同じ絵本を何度も読むのは確かに大変。大人の方が先に飽きちゃいますからね。でしたら、こんな方法はどうでしょう。

・くりかえし読んでも飽きない絵本を見つける。

・飽きないように、読みながらアクションを付け加える。(ぎゅっとする、なでなでしてあげる、声を高くする、など)

要するにママも楽しめる時間にしちゃうのです。その瞬間が濃いものになればなるほど、意外と短時間で満足してくれるかもしれませんよ。

Q2:絵本が大好き過ぎて、夜寝る前の1冊の約束が3冊……5冊と増えて行き、さらに何度も繰り返して読むので、読み終わるのに30分はかかるので大変です(39歳・主婦)

A2:1冊1冊丁寧にじっくりゆっくり読んであげた方が、意外と効率がいいかもしれません。

 「絵本を読んでいるこの時間が永遠に続くのでは……!?」

その気持ち、よくわかります。でも、いったん深呼吸してみましょう。夜寝る前に読む絵本の冊数が増えていくのが、どうして大変だと思うのでしょう。

「とにかく早く寝て欲しいから」

これに尽きるのではないでしょうか。読んでも読んでも寝てくれない。これで終わりだと思っていたら「もう1冊」と言われる。1冊読むのだって時間がかかるのに……

だけど、30分で気持ちよく寝てくれるとしたら、それってそんなに長くない? 「急がば回れ」です。覚悟を決めて、11冊丁寧にじっくりゆっくり読んであげた方が効率がいいのかもしれません。急ぐと物足りなく感じてしまうかもしれませんしね。もしそれで2時間も3時間も読んでいるとしたら、それはもう「才能」です。

そうは言っても、ママだって人間です。どうしたってツライ日はあります。そんな日は素直に「明日一冊増やすから今日は一冊減らしていい?」と交渉してみたらいいかもしれませんね。寝そうになったらほっぺをつまんでもらったり、あるいはかわりに読んでもらったり。そんなやりとりも全部含めて、大切な思い出の時間になっていくはずです。がんばってくださいね。

 

今月のおすすめ絵本

同じ場面で毎回ひっくり返るのがお約束!『11ぴきのねことあほうどり』

『11ぴきのねことあほうどり』作/馬場 のぼる(こぐま社)

あほうどりが1わ、2わ、3ば、4わ……と出てきて、最後に大きな大きな「おばけあほうどり」が登場する瞬間!  親子で一緒になって後ろにひっくり返って笑うというアクションが我が家の毎回のお約束。これが親の方もだんだんクセになってきて、繰り返し読むのが楽しみに。

11ぴきのねこたちが、コロッケ屋をはじめます。
「さあ、できたてのコロッケはいかが」
コロッケ屋は大繁盛! ねこたちは毎日せっせとコロッケをつくります。

ところが、そのうちに少しずつ売れ残るようになり、ねこたちは毎晩コロッケを食べ続けることに。今日もコロッケ、明日もコロッケ。
「あー もう コロッケはあきたよ」

ねこたちは、思うのです。
「おいしい鳥の丸焼きがたべたいねえ」「たべたいねえ」
そこへやってきたのが…なんと一羽のあほうどり!

旅の途中だというあほうどりは、コロッケをわけてくれないかと頼みます。
11ぴきのねこたちはというと…目をピカピカ輝かせています!!
「ニャゴ ニャゴ」「シーッ」
あほうどりくん、大丈夫?彼は無事に家に帰れるのでしょうか。

馬場のぼるさんによって1967年に誕生した、とらねこ大将と10ぴきの仲間の愉快な冒険物語「11ぴきのねこ」は、50年以上経った今も愛され続けているシリーズです。本作『11ぴきのねことあほうどり』は2作目。あまりにも美味しそうなコロッケが、子ども達の心に鮮烈な印象を残す人気の1冊です。

いつもお腹を空かせ、欲深くて、ちょっとずるいねこたちと、疑うことを知らない純心なあほうどりのやりとりを、読者は緊張しながら見守ります。ところが、物語は意外な方向へと大きく転換していくのです!(そこから、子ども達が何度読んでも笑い転げるあの名シーンへとつながるんですね。1わ、2わ、3ば、4わ……)

やり込めているようで、やり込められる。狙っているようで、全然違う展開へとすすんでいく。どこか間の抜けた11ぴきのねこたちの愛らしさが、シリーズ全体を笑いと温かい雰囲気で包みます。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※ 『絵本ナビ』より引用

子育ての悩みを乗り越える唯一の方法は、「苦痛」を「楽しみ」に変えていくこと。ここにはちょっとした努力とアイデアが必要かもしれませんね。

 

【参考】

11ぴきのねことあほうどり』絵本ナビ

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