子どもの吸収力・適応力には、目を見張るものがあった
nullセブ島は今、語学留学をしたい若者に人気のスポットとなっています。安い費用で、しかも自分の許す日数に合わせてカリキュラムを組み立て学習できるからです。
木南さん一家の場合も、毎日マンツーマンで英語レッスンを受け、1日3食付き、住居費込みで、大人ひとり1カ月10万円という破格の値段で語学留学しました。
「家族で世界中を回るための準備期間として、どこかで暮らしてみたいと思い、探したのがセブ島でした。子どもは長期にわたって海外を旅するのは初めて。海外の語学留学をすることで、1カ月とはいえ、疑似生活体験ができると考えて。
私たちは毎日語学の勉強をしましたが、長女のサナも1週間に1回程度レッスンを受けて、英語を使う生活に慣れさせる計画でした。
最初は、言葉が分からなかったみたいですが、続けるうち教師や周囲の人と意思の疎通ができるようになって、楽しんでいましたね。
子どもの吸収力・適応力には、目を見張るものがありました。まずはセブで日常生活に触れることができてよかったと思っています」(以下「」内、木南さん)
英語を話すことより、日本語を話す人が少ない中での生活に慣れること
nullセブ島の場合は、英語に触れると同時に現地の人と交流することで、4歳だったサナちゃんは、見違えるように成長したといいます。
「英語を話すことよりも、日本語を話す人が少ない中での生活に慣れることが大切です。
英語が話せなくても臆せずに人々とコミュニケーションが取れるようになったことは、娘たちにとって世界を広げるきっかけになりました」
世界一周の旅の最中にも、姉妹はペルーのリマで1カ月間幼稚園に通ったことがありました。
ペルーの公用語はスペイン語で、言葉の多くはほとんど理解できなかったと言いますが、幼稚園で友達ができ、嬉しそうに遊んでいたそうです。
行く先々の公園では、ものおじせずに現地の子と一緒に遊んでいたということです。
日本語で日本と同じレベルの教育が受けられるのは大切な条件
null一方で、子どもが英語を話せるようになることに、木南さんは特にこだわってはいません。
むしろきちんと日本語が話せる子どもに育ってほしいと、コタキナバルでは日本人学校に通わせていることでも、それはわかります。
語学の専門家は母語を取得したうえで、別の言語を学べばアイデンティティーの混乱は起きないとよく言いますが、木南さんもまた幼ければ幼いほど、母語の取得が重要だと実感したそうです。
「なので、旅を終えて海外に定住しようと思ったとき、日本語学校がある地を探しました。日本語で日本と同じレベルの教育が受けられるのは大切な条件です。
娘が通う学校では、日本から3年の任期で派遣された6名の先生が、マンツーマンに近い形で指導してくれています。
先生がたは、海外で働きたいという自分の意思で来ていますので、みなさん個性豊か、情熱があります。通う小中学生の生徒たち13人は兄弟のようで、休み時間になると、けいどろや陣取りゲームをして、楽しそうに遊んでいますよ」
授業は無償の日本の教科書を使い、漢字テストや計算テストもあるそうです。そして、運動会などの行事は日本同様、親子で参加の行事も多いため、家族ともども盛り上がります。
「海外で暮らす多くの家族の子どもたちは、英語を話せるようにしたいという親の意向で、インターナショナルスクールや現地の公立校に通い、日本語の補習のために、さらに補習校に行きます。
それならば、最初から日本語学校で日本の教育を受けたほうがいいと僕たちは考えたのです。漢字で読み書きができ、本が読めるって、日本人にとって最低限必要ですよね。
日本の教育を受けながら、多民族国家のマレーシアで暮らすうちに、英語は自然と身についていきます。子どもにとって貴重な異文化体験なのです。
大事なのは英語を話すことではなく、自分の意見をきちんと言えることなのです」
コタキナバルの日本人学校はこんなところ
nullコタキナバルの日本人会が運営する日本人学校は、創立37周年。日本の文部科学省の認定と支援を受けています。
かつてコタキナバルは、林業が盛んなところで、日本人学校には商社などの駐在員の子どもたちが通っていました。
しかし今は、環境保護の影響で林業が衰退していき、生徒数も年々減少傾向にあります。
それに代わって、増えてきているのが親子留学です。母親と子どもたちがやってきて、日本人学校に通わせています。
コタキナバル日本人学校だけがマレーシアでは唯一、学生ビザ、保護者ビザの申請を支援してくれるため、今後は親子留学の人たちが増えていくのではないかと予想されています。
入学金は約5万円。授業料と諸費用で月に約2万3,000円。入学を考えている保護者とはメールでの相談や随時体験入学にも応じているそうです。
「歴史ある日本人学校です。日本からもぜひ来てほしいですね。一緒に貴重な体験をしましょう。子どもにとっては、素晴らしい環境ですよ。
もちろん僕がそうだったように、海外への関心や興味を持つようになる大学生や高校生でも遅くはありませんが、小さい頃から旅をし、いろいろな国の人たちと触れ合い、かわいがられた記憶は、必ずどこかに残っていると思うのです。
コタキナバルで、世界で、多くのものを吸収していってほしいです」
この夏、木南さん一家は日本人学校の夏休み中、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスを旅行する予定です。
そして木南さんは将来、コタキナバルでこれまでの経験を踏まえた家族旅ができる、ツリーハウスなどの宿泊施設を建てたいと考えているそうです。‟地球タビカゾク”のこれからにも注目していきたいですね。