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娘(高2)の我が家の味「ミラノ風カツレツ」はこんな作り方で【お米農家のヨメごはん】

こんにちは! 富山県の黒部市というところで、お米だけを作っている小さな小さな農家の濱田律子です。旦那とココ(娘・17歳)と3人で、地道に真面目にコツコツとお米を作りながら、仕事に子育てにドタバタもがきつつも楽しく暮らす。そんな私たちの、食卓周りの日常を皆さんにお伝えする連載169回目。今回が最終回になります。

最後にご紹介するのは、久しぶりに帰省した娘がリクエストした、我が家の定番料理です。

娘のリクエストは「我が家の味」

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2学期の途中で入寮した娘が、連休に合わせて久しぶりに家に帰ってきた。
その途端、家が汚くなるのは何という現象なのだろう……。

娘がいない間は平和で静かだったのに、突然こんな感じになる我が家。朝からイライラして「片付けて!」と、つい大きな声を出してしまう私。

ありとあらゆるところに娘の物が散乱して、平常心を保てない。家は散乱するけれど、よく言えば活気が出る。そう思うようにしないと気持ちをなだめられないし、週末だけだと思うと耐えられる。

子どもがいなくなると淋しくなるよ、とよく聞かされていた。それをちょっと楽しみにしていたのに、実際は全く淋しくなかった。これは想定内。

淋しくはないけれどもでも、帰ってくると嬉しい気持ちになったのは想定外だった。

寮は快適で楽しいらしいが、でもこうしてピアノを弾く私の邪魔をしてくっついてくるので、彼女なりに頑張っているのだろう。

食生活も家とはかなり違うようで、なかなか慣れないようだ。家に帰ってくる前から、これが食べたいあれを作ってほしいとリクエストが入る。お母さんのご飯が一番、だなんて嬉しい事も言ってくれる。

因みにリクエストは、煮込みハンバーグやミネストローネスープなど、洋食ばかりだった。面白い。

短期で海外に行っていた時は、豚汁に白いご飯という和食リクエストだったのに。今回は和食ではなく、純粋に我が家の定番の味を食べたかったようだ。

リクエストの中から作ったのは、ミラノ風カツレツのようなシュニッツェルのような、薄く叩き伸ばした肉に衣をつけて揚げたお料理。

本場では仔牛肉なのだろうか、いや仔牛肉の場合はウィンナーシュニッツェルと呼ぶのか、粉チーズは入れないとか入れるとか、材料や作り方によりいろいろ呼び方が違うようだ。

私は特に気にせず、手に入りやすい材料で私が美味しいと思った方法で作っている。衣は、パン粉とたっぷりの刻んだパセリと粉チーズ。

お肉は豚カツ用を、麺棒で叩いてうすく伸ばす。

包丁の先でスジ切り、しなくても大丈夫だと思う。

塩胡椒はたっぷり目に。

お肉に小麦粉をはたいて、卵液にくぐらせて、衣をつける。

揚げ物で私が面倒だなと思うのが、この工程。だけれども、娘のリクエストなのだ、頑張って作ろう。

娘の笑顔が見たい。私も1人の子どもを愛する親なんだなぁと思った。

ギュッとしっかり衣をつけたら、あとは揚げ焼きに。

オリーブオイルの価格が高騰して使いづらくなったけれど、娘の喜ぶ顔が……、以下省略。
フライパンにオリーブオイルをたっぷり入れて、お肉をカリッと焼き上げる。

お肉に添えるのはレモンと、山口県オリジナルの柑橘類「ゆずきち」。たっぷり絞っていただきます!

カンパーニュとミネストローネスープと、これに合わせるのはやっぱりワイン。とっても我が家らしい食卓になった。

久しぶりの、家族3人そろっての夜ごはん。

我が家はご飯の時間はあまりテレビをつけず、会話を楽しむようにしている。一緒に過ごす時間は限られているのだ。

こんな時くらいは、学校や寮での出来事を娘の口から聞きたい。

食べ終わったお皿を見ると嬉しくなるのは、空っぽのお弁当箱の時と同じ。

作り手として、しみじみ幸せな、何とも言えない温かい気持ちになる。

翌朝、寮に戻る娘を最寄りの駅まで送った。淋しいという感情は、やっぱり生まれない。でも、次の帰省がとても楽しみだ。

今度はどんなお料理をリクエストしてくれるんだろう。寮ではなかなか食べられない、旬の果物もたくさん用意しておこう。

またいつでも帰ってきていいからね。
でも、帰ってこなくてもいいからね。

あなたが帰りたいと思った時に、いつでも帰ってこれる場所がちゃんとある事さえ覚えていてくれれば、それでいいよ。

これからもたくましく、でもあなたらしく能天気に、のほほんとした性格のあなたの人生を楽しんでください。それが私たち親の願いです。

秋の田んぼは、トラクターで「秋起こし」

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田んぼでは、まだまだ農作業が続いている。
トラクターでの秋起こしは、雪が降る前までもう少し続く。

さて。この連載「お米農家のヨメごはん」は、これで終わります。

2019年4月から始まって、6年ちょっとで169回。こうして文字に書き起こす事で、自分がこだわっているお料理や、育児の考え方、娘への思い、米農家としての誇りなど、自分が何を大切にして何を大事にしているか、整理されるような気持ちになりました。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

濱田律子
濱田律子

愛知県生まれ、千葉(スイカの名産地・富里)育ち。大学卒業後カナダへ。バンクーバー、カムループス、バンフと移り住み、10年間現地の旅行会社で働く。カナダの永住権を取得したにも係わらず、見ず知らずの富山県黒部市で農家に転身。米作りをしながら、旦那とココ(娘)と3人で日々の暮らしを楽しんでいます。黒部の専業米農家『濱田ファーム』はこちら。

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