子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

絶品!「りんごのタルト」作りのコツはじっくり&ゆっくり炒めること【お米農家のヨメごはん】

こんにちは! 富山県の黒部市というところで、お米だけを作っている小さな小さな農家の濱田律子です。旦那とココ(娘・16歳)と3人で、地道に真面目にコツコツとお米を作りながら、仕事に子育てにドタバタもがきつつも楽しく暮らす。そんな私たちの、食卓周りの日常を皆さんにお伝えする連載142回目。

今回は、この時期のお楽しみ、タルトタタンで幸せな3時のオヤツと、田んぼに堆肥を散布する作業風景をお伝えしたいと思います。

毎シーズン必ず作る「タルトタタン」!

null

最近はあまり出回らなくなってしまったそうだが、お菓子作りのリンゴと言えば紅玉だ。酸味がしっかりきいた味わいは、焼き菓子にぴったり。見つけたら、すぐに買うようにしている。

……し、見つけられなかったら潔くあきらめて、他の品種でも1年に1回は作りたい。
それが、りんごのタルト「タルトタタン」だ。

リンゴの美味しさを、ギュッと凝縮させたような焼き菓子。素朴な見た目だけれど、実は、ちゃんと作ると手間がかかる。から、作りたくない。でも、美味しさに抗えず、どうしても作ってしまう。

タルトタタンには、とにかく大量のリンゴが必要。皮をむくだけで時間がかかる。この時に使ったリンゴは、小ぶりの紅玉だったので8個!

まずはバターとお砂糖で、ゆっくり炒めていく。焦げないように、リンゴを崩さないように、丁寧に。1時間くらいかけて、出てきた水分が飴色になるまで。

型底に、リンゴを隙間なく詰めていく。その上に、崩れてしまったリンゴものせる。最後に、タルト生地をのせて。

……と簡単に書いたけれど、タルト生地も自分で用意するとなかなか大変だ。ふるった薄力粉と塩と砂糖に、冷たいバターを入れて切るように混ぜる。水で溶いた卵黄を少しずつ入れて混ぜて、まとめたら冷蔵庫で寝かせる。と、なかなかの手間。

それを乗り越えて、ようやくオーブンでゆっくり焼いていくわけだが、焼成時間もなかなか長い。
まずアルミホイルをかぶせて45分、さらにホイルをとって45分。リンゴの旨味をゆっくり引き出すようにするのが、美味しさのポイント。

焼けたら、型からひっくり返す。それがタルトタタン。

元々は失敗から生まれた焼き菓子だそう。19世紀のフランス、タタン姉妹が伝統的なアップルパイを作ろうとしていた時に、タルト生地を用意するのを忘れたのがきっかけ。仕方なく、リンゴを炒めたフライパンの上に途中からタルト生地をのせて焼いてみた。

フライパンをひっくり返すと、焦げたリンゴの果汁がキャラメルのように香ばしいタルトが完成。あっという間に人気を博して、世界中に広まっていったとのこと。

では私のタルトタタンもひっくり返して。

と、こちらは正真正銘の失敗作、黒く焦げてしまった。でも、リンゴの皮の色が溶け出して鮮やかな色合いに焼き上がったので、良しとしよう。

タルトタタンは冷まして味が落ち着いてから食べてもいい。けれど、私は熱々が好き。
アイスクリームではなく、たっぷりの生クリームを添えて。

リンゴのお菓子には紅茶と決めていて、この日は暑かったのでアイスティーに。一口食べて、わたし天才かも!とつい口に出てしまったくらい美味しかった。

この辺りでは販売しているケーキ屋さんがないので、タルトタタン屋さんを始めようかしら。そんな夢物語を語ってしまうくらい、大好きなタルトタタンが上手に焼けて嬉しい気持ちになった。

時間も手間もかかるタルトタタンだけれど、今シーズンもう一度は焼きたい。

さてこちらは、車の中で朝ごはんを食べながらスマホを見ている娘。スクールバスが出る場所までの送迎中だ。

以前は、バス停まで自力で行っていた娘。家からまずは最寄りの駅まで自転車で。そこから1時間に2本ほどのみ運行される、ローカル電車に乗っていた。

車で送迎するのは簡単。だけれど、公共交通機関を使って自分で行く体験をしてほしかった。

毎朝顔を合わせる他の学校の子ども達や通勤する人と、少しづつ顔なじみになる。話す仲になる事はなくても、あの人はいつも同じ席に座っているな、あれ、今日は乗ってこないな、等、気づく事もたくさんあっただろう。

毎日会う駅員さんとは少しづつ会話をするようになり、成長を見守ってもらっていたようだ。私はそういう出会いや時間を大切に思っていて、大変でも時間がかかっても、電車にこだわっていた。

けれど高校生になり、勉強も部活もとにかく忙しそうな娘の様子を観察していて、これはそろそろ車で送迎してもいい頃合いかもしれないと感じた。電車移動の時間を節約して、少しでも生活にゆとりを持ってもらえるなら喜んで送迎しようと。というわけで、朝晩2往復、車で送迎している。

朝はこうして朝ごはんを食べながらスマホを見ている事が多いけれど、会話が弾む事もある。最近の出来事や娘が考えている事、娘から話をゆっくり聞ける貴重な時間だ。

卒業までのあと2年と少し、この時間を大切にしたいと思っている。

稲刈りのあと、田んぼに堆肥の散布をする日々

null

最後に農作業の様子を。まだまだ田んぼでの作業が続いている。

前回お伝えした自家製の堆肥が仕上がってきたので、今は田んぼで堆肥をひたすら散布する日々。

堆肥を散布できる専用の農機具は、サンダーバード風(伝わりますでしょうか……?)の可愛らしい見た目。

正式にはマニュアスプレッダーと呼ばれる農機具で、堆肥を田んぼにまいていく。

作業所の脇で熟成させた堆肥を積み込んで、田んぼに来て散布する。それを繰り返す事70回くらいでゴールする予定だが、1日15回が限度。他の作業との兼ね合いで、1日10回できればいい日もあるので、2週間ほどの予定で考えている。

それにしても良いお天気。

山の上の方は紅葉も始まってきたようだが、それでも例年に比べると10日ほどは遅いだろうか。本日この原稿を書いている10月下旬でも、25℃を越える日が多かった。

秋とはもう言えないくらいの陽気だ。

稲刈りが終わって刈り取られた株から、生命力たくましく生えてきた稲。この辺りでは、ヒコバエと呼ばれている。その多くが、再び稲穂を垂らしている。

これは毎年の事ではあるけれど、それでも今年は異常なくらい稲穂が多い。

否が応でも、気候変動を感じる秋を迎えています。

濱田律子
濱田律子

愛知県生まれ、千葉(スイカの名産地・富里)育ち。大学卒業後カナダへ。バンクーバー、カムループス、バンフと移り住み、10年間現地の旅行会社で働く。カナダの永住権を取得したにも係わらず、見ず知らずの富山県黒部市で農家に転身。米作りをしながら、旦那とココ(娘)と3人で日々の暮らしを楽しんでいます。黒部の専業米農家『濱田ファーム』はこちら。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載