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野菜たっぷり「豚汁」に、こんなおかず。帰国した娘(高1)のリクエストごはん【お米農家のヨメごはん】

こんにちは!富山県の黒部市というところで、お米だけを作っている小さな小さな農家の濱田律子です。旦那とココ(娘・16歳)と3人で、地道に真面目にコツコツとお米を作りながら、仕事に子育てにドタバタもがきつつも楽しく暮らす。そんな私たちの、食卓周りの日常を皆さんにお伝えする連載140回目。

今回は、アメリカ短期留学から帰国した娘のリクエスト料理と、新米出荷シーズンの様子をお伝えしたいと思います。

アメリカ短期留学から娘が帰国!

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娘のリクエストで、大量の豚汁を作った。

大きな無水鍋にごま油を熱し、豚肉と根菜類を炒める。玉ねぎ・人参・大根・牛蒡とお野菜たっぷりで、それだけで身体に良さそうだ。

しっかり炒めたら水を加えて、蓋をして炊く。味付けは、醤油と塩胡椒のみ。

これは豚汁というよりは、恐らくけんちん汁と呼ぶべきなのだろう。でも我が家ではこれを豚汁と呼び、娘が愛してやまない汁物だ。

もう1つのお鍋では、ジャガイモと卵を茹でる。これはポテトサラダ用。

卵をたっぷり入れた方が美味しいと、私は信じている。

茹で上がったら一緒に潰し、冷ましてからハムやキュウリと一緒にマヨネーズで和える。

ちょうど新米の季節、農家の特権で一足先に田んぼの恵みをいただいた。瑞々しい味わいに、収穫の秋を感じる。豚汁とポテトサラダを並べて、おかずはこれも娘が大好きなサバの味噌煮。あとは梅干しとお漬物。

こういうご飯がしみじみ美味しい。
齢を重ねた私たちはそう思うけれど、娘がアメリカへの短期留学から帰国して真っ先にリクエストしたのは、このメニューだった。

実は娘「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」派遣留学生に自ら応募し、選ばれた。

この留学制度は、官民協働で日本の若者の海外留学への挑戦を応援するプログラム。返還不要の奨学金が支給される。

全国の若者の応募目的は様々で、留学=英語の勉強という概念しかなかった私には驚きの内容だった。K-POPを本場で学びに韓国へ行きたい子もいれば、世界でSDGsがどう議論されているか生活する事で実感したい等々、多種多様。

娘は、世界でお米がどう消費され加工されているかを調査して、日本米の輸出拡大には何が必要か考えたいという動機だったそう。家業が米農家、というのが大きく関係しているのは間違いなさそうだ。

行先も自らアメリカを選択、現地のスーパーや農場に行く計画を盛り込んだ。資料を作りこみプレゼンの練習も頑張り、面接に臨んだ。

情熱・好奇心・独自性という基準で審査された結果、合格! 通知が届いた時は、本当に嬉しそうだった。

そしてそれからしばらくたって、いよいよ出発の時を迎えた。1人で北陸新幹線に乗り東京へ行き、1人で成田空港で手続きをし、1人でアメリカに入国した。

家族で海外旅行に行った事もあるし、短期の海外語学プログラムに参加した事もあった。しかしこれまでと違い1人で全て行動、しかもアメリカだ。いろいろ心配で、私も一応は親だった事を痛感。

やっとホームステイ先に到着したと連絡が入った時は、本当にホッとした。と同時に、スマホが常に側にあり、Wi-Fiが整備された環境ですぐにLINEで連絡が取れる便利な今の時代を、つい自分の時と比べてしまう。

私が30年前にカナダへ1人渡った時は、地図を片手に右往左往しながらファックスで予約した安宿まで歩いたものだ。

昔話をしても仕方ない。
けれども、私がカナダへ行った時に私の母もこうして、今の私のように心配したのだろうか、とふと思った。子を心配する親の気持ちは、いつの時代も変わらないだろう。

さて現地では、バス2本を乗り継いで語学学校へ通う日々。

田舎で暮らしていると、電車はもちろん路線バスに乗る事がほとんどない。乗り継ぎ!と驚く私を傍目に、月間パスの方が安いとすぐバスパスを購入していた。

自分の目的がここでは叶わないと、即ホームステイ先の変更も依頼していた。親は事後報告を聞くだけ、娘の行動力に驚くばかりだ。

食事は、少し戸惑ったらしい。

アメリカでもカナダでも一般的なこんな夕食も、さすがに毎日では飽きたのだろう。

日本から持参したお米を炊いたり、スーパーで買った野菜でサンドイッチを作ったりと自分で工夫してやり過ごしたそう。

現地で仲良くなった友人と、ディズニーランドへ行ったりビーチで過ごしたりもしたようだ。逞しくも楽しそうに過ごしている様子が、写真で伝わってきた。

ただ、連絡はほとんどなかった。くるのは、デビットカードにそろそろチャージしてほしいとか、洋服を買っていいかとか、そんな事ばかり。子どもというのは、そういうものなんだろう。

誰とどう過ごしているのか、楽しんでいるのか、問題はないのか。いろいろ聞きたいし、LINEではまどろっこしいので電話しようかとも思ったけれど、グッと我慢した。便りが無いのは元気な証拠とはもう、本当にその通りで。

娘がこうして、私の知らない場所で知らない人と楽しそうに過ごし、私の知らない生活を満喫してきた。しかもそれを、自分の勇気と努力と行動力で叶えた。素晴らしい事だし誇らしい事だ。

マメに連絡をしてこないくらい、何なのだ。娘はしっかり自分の人生を楽しんでいる。目をキラキラ輝かせて、海外の洗剤の香りを強烈に放ちながら、現地の様子をたくさん聞かせてくれた。

豚汁をおかわりしながら。

新米の発送が始まっています!

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さて、新米シーズンが始まった。

毎日たくさんのお米が、全国へと旅立っていく。9月に入ってすぐ、新規のお客様からのご注文を停止する措置を取らせてもらった。今年は収穫量も少なく、予約ですぐに完売となりそうだったからだ。

ご希望のお客様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだが、今やるべき事を1つ1つ、しっかりと誠実に。

できるだけミスがないよう、新米を心待ちにされている方へお届けしたいと思います。

濱田律子
濱田律子

愛知県生まれ、千葉(スイカの名産地・富里)育ち。大学卒業後カナダへ。バンクーバー、カムループス、バンフと移り住み、10年間現地の旅行会社で働く。カナダの永住権を取得したにも係わらず、見ず知らずの富山県黒部市で農家に転身。米作りをしながら、旦那とココ(娘)と3人で日々の暮らしを楽しんでいます。黒部の専業米農家『濱田ファーム』はこちら。

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