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「PTAの合理化」を進めるうえで失敗したこと。育児であらゆる役員を経験した3児の母が今、思うこと

小中学校のPTA、保育施設、子ども会、学童や習いごとの保護者会。

子育てをしていると、子どもを起点として、どこかの組織に所属する機会と巡り合います。望まずとも「突如、役が降りかかってくる」機会もあるでしょう。

さまざまな組織であらゆる役を経験してきた1人の保護者が今、思うこととは?

「なんで私が会長やらなきゃいけないの?」と泣いた夜も…

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まず、この記事を書いている筆者の紹介をさせてください。

筆者(ライター)は、3人の男の子の母親です。15年の子育て期間の中でこれまで、さまざまな役員を担ってきました。

くじで引き当てる、誰かに指名される、“1人1役”という慣習があるなど、そのときどきの理由があり、以下の役員を経験しました。

【幼稚園】

・PTA会長 ・バザー、ベルマーク委員

【小学校PTA】

・校外補導 ・読み聞かせ ・広報

【子ども会】

・ラジオ体操係 ・6年生を送る会係 ・広報

【スポーツ少年団】

・父母会長 ・副会長 ・学年リーダー ・会計 ・広報

【中学校PTA】

・厚生部 ・広報部(2024年度に就任予定)

前置きが長くなりそうなので役の詳細は文末で紹介しますが、このリストを見ると、まるで役員コレクターみたいですよね(笑)。 今回は割愛しますが、これに加えて、夫が担った役もあるんです。

読者の皆さんからは「2度も何かの父母会長をやってるなんて、よほど役員が好きな人なんだね」という声が聞こえてきそうです。

あらかじめ言っておくと、筆者は役員活動が全く好きではありません。できれば引き受けずに活動時間を別のことに充てたいとすら思ってきました。責任の重い役から逃れられなかったときには、夫の前で「やりたくないよー!!」と泣いたことがありますし、これでも何度か責任の重い役を逃れてきました。

公立小中学校のPTAの組織は、基本的に“任意”(望んだ人が加入する)ではありますが、「加入しません」とは言い難い雰囲気があり、筆者の家庭では空気に抗わずに“順応”というやり方を選びました。さらには、地域の組織はPTAだけではありません。子どもの数だけ、どこかで何かの役をやる“役員就任確率”があがります。

これからご紹介する内容は、未就園児のお子さんがいる保護者が読むと「子どもを育てるには、こんなに役員をやらなければならないの!?」と不安になるかもしれません。後でお話ししますが、現在はコロナ禍や世論の変化により、状況はだいぶ変化しています。

今回は、筆者が、いろんな組織の役員を経験して、いくつかの組織に共通していたこと、気づいたことについてつづっていきます。

たくさんの役を経験して「気づいたこと」。「正論」で人の心を閉じさせた経験も…

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(1)「長・副の役」「重役」にならないなら「やってもいい」という人もいる

役員決めのときの重苦しい空気を経験した人は少なくないと思います。

役員になった後の時間的・心理的な負担を心配しながらも、多くの父母は「役員の中で、どのポジションに就くか」に不安を抱いています。責任の軽い“ヒラ”の役ならできるけど、“会長”や“委員長”など、“長”がつく役員になったらどうしよう……と。

職場の部署とは違い、よく知らない人たちと急ごしらえのチームを結成し、そのチームを引っ張っていかなければならないことの負担感たるや、かなりのものです。心無い噂や悪口の対象になるリスクを恐れる人もいるでしょう。

一方、自らすすんで責任の重い役に立候補する保護者もいますが、そのモチベーションはさまざまです。

「“あの人”がいるから」「みんなのために」「役員決めの雰囲気に耐えられず挙手してしまった」「感謝されたい」「自分の知名度を上げたい」「思い通りに仕切りたい」などなど。

その動機を第三者の立場で勝手に推測すると、当事者を傷つけることもありますので要注意です。

(2)「例年通り」「上の人が言った通り」。1年の任期なら、実はラク

何かの役を担うまでは「こんなに無駄な仕事、どうしてやってるの?」「合理化すればいいのに」と文句を言っていた人でも、実際に役についてみると気づくと思います。

「そうか。このやり方には、それなりの理由があったのだ」と。

書類の作り方、手書きかパソコンか。行事グッズの買い出しの方法、連絡方法、行事の運営方法などなど。

毎年、少しずつ形を変えながらも“だいたい例年通り”でつつがなく行事が回っています。

そして、任期が終わるころ、ほっと一息つきながら気づくでしょう。結局、多くの人の経験値の上に成り立つ“だいたい例年通り”は、意外とラクであることを。

(3)合理化、省力化は声高に叫ばないで進めたほうがいい

役員業務について、これらの言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

それは「あの業務は合理的じゃないから、なくしたほうがいい」「なぜ、こんなに無駄なことをやっているの?」「共働きの父母が多いんだから、こんな行事やめてほしい」といった言葉です。

正しい部分もあるかもしれませんが、PTAなどの地域の役員の領域においては、そうした言葉がしばしば“刃”となることもあります。

ここで筆者の役員経験の中で、苦い失敗エピソードを1つお話しします。

筆者は幼稚園のPTA会長を務めた経験があります。例によって誰もやりたい人がおらず、役員決めで泣きだす人もいるような負担の大きい役でしたが、筆者はあれこれ理由をつけて「押し付けられる」形で就任しました。不安と怒りが高じて、最初の顔合わせの場でつい言ってしまったのです。「仕事との兼ね合いもありますし、無駄な仕事はできるだけなくしていきたい」という一言を。

この言葉が、意図せず旧役員のメンバーを刺激してしまいました。特に前会長は、役員業務に誇りをもって膨大な時間を投じてきた方だったので、その場にギクシャクした雰囲気がたちこめました。「私たちの仕事、無駄だったっていうの?」と、怒っていたメンバーもいたと思います。

この経験から、感情にまかせて“合理化”という言葉をPTAなどの地域組織で使うと、これまで善意で担っていた人が積み重ねてきたことを否定してしまうこともある、と身をもって体験しました。

そして、一見、合理的でないプロセスの中で、保護者同士の交流が深まっている場面もあったのです。

「合理化すべき」は正論ですが、正論で組織が変わることはありません。

少し前、小学校のPTA活動で1人の保護者が声高に「この仕事、意味があるんですか? 廃止すべきか、全保護者のアンケートをとりませんか?」と語気を強める様子を見てサーっと周囲の人が引いている場面を目にしたこともあります。

おそらく理想のやり方としては、味方を増やしながら、根回しをしながら、誰も責めることなく粛々と仕事を簡略化していくのが禍根を残さないやり方なのでしょう。

とはいえ、“急ごしらえ”の地域のチームでは、それが難しい。本当に難しいけれど、その年ごとに「やる気ある人たちが創意工夫をしながら楽しく活動」という理想を掲げておくことは大切だと思います。

(4)コロナ禍で縮小化が進んだ組織が多数。一方で「地域のイベント」も復活

ここまで「重い役を敬遠する人が多い」「簡略化には根回しが必要」などとつづってきましたが、そんな組織に大きな変化をもたらしたのが、コロナ禍です。

会議を開くことができない、行事が開催できない状況になり、園や学校のPTA活動の簡素化が劇的に進み、地域から子どもの行事が消えました。

『kufura』編集部では、コロナ禍にPTA活動状況について、何度かアンケートをとりましたが、業務が激減した学校、さほど変わらなかった学校など、さまざまなケースがありました。これまで“例年通り”と言う指標があった地域活動・PTA活動ですが、「自分たちで決める」場面が増え、多様化しました。

コロナ禍のまっただなかに筆者が取材した私立中学校では「コロナ禍だからこそ」という理由でPTA広報部の冊子が150ページ超に膨らんだケースも目にしました。「これを作る過程で、保護者のいろんな考え方が交錯したんだろうなぁ」と想像を巡らせたものです。

『kufura』のアンケートでも、コロナ禍で消滅した業務、新たに始まった業務など、組織ごとの変化が見られました。“不要”と判断されたまま復活しなかった取り組みも数多くあり、結果として役員活動の簡素化が進んだ組織も多いのではないでしょうか。

役員は「面倒くさい」ことだらけだけど…

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ここまで筆者の経験をもとに、役員業務を通じて気づいたことについてつづってきました。

つい先日、研究職としてバリバリ仕事をしている先輩ママがこんなことを言っていました。

PTAとか子ども会にはいろんな人がいて、これまでの社会人経験とかスキルが役立たない場面もたくさんあったなぁ。でも、地域がいろんな小さな仕事で回っていることを知るいい経験だった

筆者の場合も、仕事柄たくさんの活字本を読んで、ビジネスマナーの記事をたくさん書いていますが、身に着けた知識は地域の活動ではあまり役立ちませんでした。

たとえ、メディアで取り上げられた画期的な取り組みに関する知識をひけらかしても、「それをやってみよう」という組織の機運が形成されなければ、実行にうつされることはありません。機運の盛り上げ方をインターネット上で検索しても、明確な答えはありません。

多分、どんな組織にも謎のルールがあり、無駄な業務があって、仕切りたがりの人や何もしないで文句ばかり言う人がいて、ものすごく優しい人も、素晴らしいリーダーシップを持った人もいます。

その時々の巡り合わせで、いい雰囲気の年も、悪い雰囲気の1年もあるかもしれません。

かくも一筋縄ではいかない役員業務。

面倒なことのほうが多いと思いますが、地域のことも、身近な組織のことも、誰かに“おまかせ”したまま、高いところから批判をして評論をするだけでは、多分変わらないのだろうな……とも思うのです。

おわりに

来年度、筆者の子どもたちは小学校・中学校・高校と、バラバラの学校に通う予定です。

次男の公立中学校では、入学時に3年分の役を決めるのですが、2024年度のPTA広報部をくじで引き当ててしまい、まだまだ役員ライフが続きます。現時点では、どんなメンバーとどんな業務を担当するのか、全くわかりません。小学校や高校でも何かの役が降りかかってくるかもしれません。

どうか“長”は避けられますようにとは、祈りつつ、微力ながら各メンバーが気持ちよく業務ができる雰囲気作りに貢献したいとも思っています。

ところで今年は、皆さんの身近なところでは、PTAや子ども会運営のイベントや祭り、飲食つきの懇談会などが4年ぶりに復活したケースがあったのではないでしょうか。役員として運営に携わった方もいらっしゃるでしょう。

子どもといくつかのイベントに参加しましたが、そこにはたくさんの笑顔がありました。いつかの役員で顔見知りになった人を運営サイドに見つけるにつけ感謝の気持ちがわきあがってきました。

現在、どんな組織でもその時々で大小の問題を抱えていると思いますが、ひとまず現役の役員が活動している場面にでくわしたら「お疲れさま」の気持ちを伝えていこうと思った次第です。

 

【役員の概要】

◆幼稚園

・PTA父母会長(こまごまとした雑務の取り仕切り)
・バザー、ベルマーク委員(ベルマーク収集やバザーの準備など)

◆小学校PTA

・校外補導(横断歩道の旗振り)
・読み聞かせ(小学校の朝時間に絵本を読み聞かせ)
・広報(広報誌作り)

◆子ども会

・ラジオ体操係(子どもを広場に引率。体操後、景品を配る)
・6年生送別係(買い出しをして、ギフトを配る)
・広報(広報誌作り)

◆スポーツ少年団(サッカー)

・父母会長(イベントの仕切り、会議の仕切り)
・副会長(会長のサポート、書類作りなど)
・学年リーダー(試合の出欠取り、配車、業務連絡など)
・会計(集金、ガソリン代計算など)
・広報(広報誌作り)

◆中学校PTA

・厚生部(コロナ禍でほぼ活動なし)
・広報部(入学時に3年分のクジを行い、2024年度担当予定)

北川和子
北川和子

自治体HP、プレスリリース、コラム、広告制作などWEBを中心に幅広いジャンルで執筆中。『kufura』では夫婦・親子のアンケート記事やビジネスマナーの取材記事を担当している。3児の母で、子ども乗せ自転車の累計走行距離は約2万キロ。地域の末端から家族と社会について日々考察を重ねている。

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