0才は「子育ては大変で当たり前」という固定概念を、まず捨てよう
null育児のさまざまな困りごとを、“新たな視点”で楽しく解決してゆくアイディア集『子育てブレスト』を出版した佐藤家。ねじさん曰く、その本領を発揮するのは0才〜4才。イヤイヤ期などでネガティブに陥りがちなマイナス状態を「アイディアで、ゼロか+1にします」。
「なかでも0才児のお世話は、本当に大変ですよね。母親は出産直後で体力もなく、親がダウンしないことが大事です。『子育ては大変で当たり前』という固定概念は捨て、いかに負荷を減らし、ラクをするかに焦点をあてます」(ねじさん)
「赤ちゃんのお世話は、泣き止ませたり寝かしつけたりと、地味につらい物事に対応する時間が長い。客観的になれるツールを取り入れると、冷静になれたり気晴らしになります」(蕗さん)
まだ会話が成立せず、ともすると赤ちゃんの健康を保つことで精一杯になりがちな0才育児。親が慢性的な睡眠不足と闘うのも、この時期です。ラクをすることは決して悪いことではなく、むしろ笑顔で楽しく子どもと過ごすために積極的に取り入れるべき!
佐藤家のアイディア「泣き声には、防御力を高めて客観的になれるツール」
生後まもない赤ちゃんは、なぜ泣いているのかわからなかったり、昼夜問わず大きな声で泣いたり……。それが赤ちゃん本来の姿ですが、親は生理的にイライラしてしまうことも。
「子育ては思い通りにならないことの連続だからこそ、そのたびにネガティブな感情を抱いていたら、自分自身がつらくなってしまいます。イヤイヤ期に泣いて地面に転がるのを写真に撮って残すように、なるべくポジティブにとらえたり、ああこんなこともあったとよい思い出に昇華できればと、息子の泣き声をアプリで計測していました」(蕗さん)
「今の泣き声は60デシベルだった」「45デシベルだったから、意外と小さかった」など、数値化することで冷静に。大泣きしても「今度こそ新記録が生まれるか!?」と楽しめる視点が生まれ、気晴らしになったといいます。
コミュニケーションが生まれる1〜2才から本領発揮!
null早いとイヤイヤ期の気配も感じる頃ですが「だからこそアイディアによる課題解決もしやすくなってくる」と、ねじさんは言います。また、だんだん親の言っていることもわかってくる頃。蕗さんは、お子さんが2才ぐらいからずっと大事にしていることがあるそうです。
「“鬼が来るよ”とか“置いていくよ”とかっていう脅しの言葉を使わず、素直に本心を伝えるようにしています。たとえば公園に疲れて行く気が起きないときは“疲れていて行けないから明日行こう”。なかなか帰ろうとしないときは“もう帰ろう”。案外、誤解なく受け取ってくれますし。でもこれはポリシーというより、自分の中で辻褄が合わなくなるのがいやだから」(蕗さん)
歩き始めて少しずつ体力もつき、好き嫌いや得意不得意などの個性も現れてくる1〜2才。佐藤家でとくにヒットしたアイディアを教えてもらいました。
佐藤家のアイディア「寝ないときは、大人も運動不足解消のチャンス!」
お昼寝をたっぷりしたり、エネルギーを発散しきれなかった日は、なかなか寝てくれないこともあります。大人が「寝てくれない!」とイライラしたり、「早く寝なさい」と怒っても、子どもは元気で……。
「わが家でハマったのは『1才児ブートキャンプ』です。なかなか寝てくれない次男の動きを大人がまねて、一緒に動いちゃおう!というもの。僕たちも楽しくて、新鮮でした。見るのとやるのとでは大違い。子どものほうが手足が短いぶん床が近いので、しゃがむにしても動きが早い。運動量もすごくて、大人のほうが疲れました」(ねじさん)
子どもがジャンプすれば、大人もジャンプ!ほふく前進すれば、みんなでほふく前進と、なかなか激しい動きに驚いたそうです。大人がまねすることで、子どもは大喜び。
佐藤家のアイディア「子どもは遊びたいけど親は寝ていたい……背中を線路に」
仕事に家事に育児、日々たまってゆく疲れ。子どもの「遊びたい」という気持ちは大切にしつつも、親の負担を最小限にしながら子どもを遊ばせるには?
「当時、長男がプラレールなど電車のおもちゃにハマっていました。そこで、線路を背中に描いたTシャツを着て、息子の前にごろんと寝て“背中に電車を走らせてみて〜”と声をかけてみました。親の背中が線路に変身して、息子は大笑い。寝転がっていると子どもが自発的に遊んでくれるので、一応休めます」(蕗さん)
つくり方は、Tシャツにアイロンプリントシートを貼って線路に見立てたり、油性ペンで線路や道路のような線を書き込むだけ。疲れていても目が離せない時期だからこそ、アリ!
3〜4才は「してほしいこと」を楽しくゲーム化
null自己主張がはっきりしてきて、動きも大胆になる3〜4才児。イヤイヤ期もますます加速して、「保育園に行ってほしい」「ごはんを食べてほしい」「静かにしてほしい」など、子どもに「してほしいこと」が増えます。とはいえ、なかなか素直に「YES」とは言ってくれないんですよね。
「3〜4才になると軽いゲームはできるので、わが家では“してほしいこと”をゲーム化する発想法が大活躍しました。また、イヤイヤ期は親の提案に“NO!”と言いたくなるお年頃。“してほしいこと”の逆を、なるべくコミカルに伝えました。すると子どもはゲーム感覚になって、素直にいうことを聞いてくれる確率が上がります」(ねじさん)
なるほど〜。中でも佐藤家がお気に入りの『子育てブレスト』で生まれたアイディアとは?
佐藤家のアイディア「ごはんを食べたがらない……つまみぐい大作戦、決行!」
イヤイヤ期は、好き嫌いが激しくなったり、ごはん自体を食べてくれないことも。親としては、野菜もお肉も、いろいろ食べられるようになってほしい!
「子どものいたずら心と達成感を刺激する“つまみ食いレストラン”がおすすめ。僕が子どもの頃、家でケーキを作るときに、ボウルに入った泡立てた生クリームをつまみ食いするのが好きで。料理する母ちゃんにバレないように、毛布をかぶったりして子どもと一緒につまみ食いします。子どもはドキドキしながらも楽しいようで、苦手な野菜も喜んで食べてくれました」(ねじさん)
「つまみ食いする姿がすごくかわいい(笑)。お行儀は悪いかもしれないけれど、子どもにとっては行儀が悪いものは楽しいんですよね」(蕗さん)
子どもはつまみ食いが成功した達成感と、苦手なものを食べられたことにより自信がつくといいます。どうしても食べてくれない場合、まずは「食べるって楽しい」と思ってもらうことをゴールにしてみましょう。
自分を責めずに楽しんでほしい
null大切な存在だからこそ、「大変!」「困った!」と感じる子育て。「私たちもいつもうまくいっているわけではありませんし、怒鳴ったり叱ったりしていることがほとんど。でも、このアイディアをヒントに、自分を責めずに楽しんでもらえたら」と蕗さんは言います。
成長するごとに、くるくると変わる多彩な表情を見せてくれる子どもたち。渦中は目が回るような日々も、振り返れば「あんなこともあったね」と笑い飛ばせるように。大変なことや困りごとも、佐藤家のアイディアを参考にちょっと目線を変えて、明るく楽しんじゃいましょう。
【取材協力】
佐藤ねじさん
プランナー/クリエイティブディレクター。面白法人カヤックを独立後、2016年『ブルーパドル』を設立。WEB・アプリ・商品やお店などの企画とデザインを行う。
佐藤 蕗さん
手作りおもちゃ作家。建築設計事務所勤務を経て、第一子の出産を機にフリーランスに。著書に『ひらめいた!遊びのレシピ ふきさんのアイデアおもちゃ大百科』(偕成社)など。
『子育てブレスト その手があったか!67のなるほど育児アイデア集』
2023年8月2日発売/小学館刊/1,650円(税込)
SNSで話題! 育児の悩みの“意外な解決策”。クリエイティブディレクターの佐藤ねじ、手づくりおもちゃ作家の佐藤蕗夫妻が実践してきた子育てアイデア集。
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote