ビジュアルつきで詳しく紹介。だから読みたくなるんです!
nullこの本のすごい所は、なんと言っても“125冊分”が電子書籍で読めるという、圧倒的なボリューム感。読み継がれてきた国内外の名作から、2000年代に書かれた新しい物語まで、世界各地の作品をバランスよく収録しています。
本を開くと、各作品を2ページずつ使ってじっくり紹介してあって、まるで“物語の図鑑”。ここからQRコードで飛ぶと、スマートフォンやタブレットなどの電子機器で作品を読める、という仕組みです。
絵を描いているのは、酒井駒子さんやあべ弘士さんといった、第一線で活躍する絵本作家・イラストレーターばかり。美しい絵や図を交えながら、見どころを存分に紹介しているので、眺めているだけで“読みたい作品”が増えていきます。
例えば「クマのプーさん」のページだったら、“プーさんは、作者が息子にあげたテディ・ベアがモデルになっている”といった情報や、“次に読むならこれ!”という本の紹介も。いろんな知識が広がって、作品を読むのがもっと楽しくなりますよ。
しかもこれらの物語、なんと125作品のうち105作品は、この本のために訳された“新訳”。さらに、そのうちの24作品は、ここでしか日本語版が読めない“本邦初訳”の物語とのこと。
正直、5,500円(税込)と聞いて、最初はちょっと買うのをためらったのですが、5,500円÷125作品=1作品あたり44円! この物価高のご時世、44円で買えるものなんてほとんど思いつきません……。
小学館・児童創作編集部で編集を担当していた塚原伸郎さんに、この本に込めた想いを聞きました。
「読書の喜び」を知る、きっかけになる文学全集
null―この本が生まれた経緯を教えてください。
「この本は小学館の100周年企画として、子どもたちが本を好きになってくれる入り口になるような、新しい“児童文学全集”をつくろう、という声から始まりました。
昭和の時代には、たくさんの文学全集が出ていて、私も子どものころに面白がって読んでいた記憶があります。でも今は、市場に文学全集がほとんどない。そこから、今の時代に合った児童文学全集とはどんなものかと考えはじめました」(以下「」内、塚原さん)
―そういえば、“文学全集”という響き、久しぶりに耳にした気がします。
「現代の子どもたちの環境だと、例えば50巻を超えるような文学全集を本棚に並べるというのは、なかなか難しいものがあります。たとえ買っても、すぐに手が届かない場所にしまいこむのではもったいない。
そんな課題が、いつでもサッと手にとれる1冊から、各作品の電子書籍にアクセスするという、今の形につながりました」
―初めて本を開いたとき、あまりに充実した内容に驚きました。編集にも苦労があったのでは?
「この本は、編集委員、著者、翻訳者、画家、編集スタッフなど、あわせて300名以上の方と一緒に進めてきました。作品を選ぶにあたっては、児童文学者の角野栄子先生をはじめ、世界各国の文学に詳しい50人ほどの作家・翻訳者・文学研究者に協力をあおぎました。そこで集まった500以上の作品をもとに、検討を重ねてしぼりこんだのが、収録されている125作品です。
今の子どもたちが読んで楽しい文学全集になるようにと、多くの人が力をかけて選んだものなので、相当いい作品がそろっていると思います」
―私も何冊か読んだのですが、まったく知らなかった話がとても面白かったりと、自分でも新しい発見がありました。読者さんからの反響はいかがでしょうか。
「“子どもだけでなく、親も読むのに夢中になり、親子それぞれが思い思いに楽しんでいます”という感想がいくつかきていて、とても嬉しかったですね。
あとは、お子さんが“まだ電子書籍までは読んでいないけれど、ずっと本をめくって眺めている”という声があって、これもすごくいいと思うんですよ」
―電子書籍の本文を読んでいなくても、ですか?
「それはきっと、本に対する興味がその子のなかでどんどん膨らんで、熟成していっている時間なんだと思うんですね。気になって気になって、もうたまらなくなった時に、その好奇心がポンポンとはじける瞬間が必ずくる。それを、ぜひゆっくりと待ってあげてほしいです」
―なるほど。まさに図鑑のように、眺めているだけでも発見がある、というのはこの本ならではの楽しみかたですよね。
「お父さんお母さんが、子どもに本を読ませたくなる気持ちもとてもわかるのですが、“これを読みなさい”ということは言わないほうがいいと思うんです。
子どもが自然に、自分で読みたくなるチャンスっていうのはきっとあるので、その時に何を読むかは、子ども自身に任せてあげてもらえたら。
本の世界って、やっぱり非常に幅広くて深くて、無限の楽しみがあるので、読書の喜びっていうのを覚えたら、多分一生役に立つんです。
昭和の文学全集は、それを読むこと自体がある種の“ゴール”だったかもしれませんが、この本はそうではなくて、子どもたちが新たな読書生活を始める“スタート地点”になるような、そんな本であってほしいと思っています」
斬新なアプローチで、「本を読みたい!」という気持ちを育ててくれる『小学館世界J文学館』。思えば、本を読む前にその作品の“楽しさ”を感じられて、そこから一番気になるものを選べるのって、とても贅沢な体験なのかもしれません。
新学期や新生活の始まるこの時期。親子で、今までにない、新しい読書体験をスタートしてみませんか?