「ちゃんとしてほしい場所に限って、なぜできないの?」
null今回は、こんなお悩みを取り上げます。
人の目が気になる場所で、子どもの一挙一動にピリピリしてしまう!
小さな子どもの場合、公共の場や義父母の家など「頼むからこの場所では、ちゃんとして!」と思うシチュエーションに限って、いつもならできることができなかったり、ぐずってしまったりすることがあります。
たとえば、電車やバスに乗ったとき。子どもが大声を出すたびに周りの目が気になり、つい「静かにしなさい!」と感情的に叱ってしまったり。
ほかにも、義父母の家にお邪魔して、子どもがプレゼントをいただいたとき。当の本人がお礼も言わず、プイと無視していたら、つい「ほら“ありがとう”は?」と、子どもにイライラしてしまったりすることもあるのではないでしょうか。
「最近は、小さな子どもに対して不寛容な人も増えていると聞きます。子どものしつけができていないと周りの方に申し訳ない、と考えてしまうのも、仕方ないことですよね」と戸田先生。
ただし、家の外など、人の目が気になる場所で感情的に怒ってしまうのは、親も子もつらいもの。どうすればいいでしょうか?
本当は、ダメな親だと思われたくない?
本当は、ダメな親だと思われたくない?自分の怒りのパターンや、「その時、本当は何を思っていたのか」「本当は何を伝えたかったのか」がわかると、怒りに振り回されず冷静になれると、戸田先生は話します。
たとえば、家の中で子どもが大暴れしているときには、叱りはするものの、感情的に怒ることはあまりない。でも、それが電車の中だと、思わずイライラして、キツい言い方になってしまう。また、逆の方もいるでしょう。このように、人それぞれに怒りのパターンがあるのだそう。
怒りを感じやすい状況・パターンや、その時に思ったこと、感じたことを客観的に把握するために、戸田先生がこんなトレーニングを紹介してくれました(以下「」内、戸田先生)。
自分の怒りの傾向を知る!怒りを記録する「アンガーログ」
■アンガーログで記録する項目
2:どこで
3:どんなできごとに対して
4:あなたが思ったこと・感じたこと
5:怒りの強さは、10段階で何点?
アンガーログをつけていくと、その時に、何を思い、何に怒りを感じたのか気づけるようになるそうです。
「アンガーログに取り組んだ親御さんからは“世間から見て、ちゃんと子育てをしていると思われたい。親のしつけが悪いのではと思われる瞬間がつらい、だからあんなに怒ってしまったということに気づいた”といった声を聞くことも多いです。
そのように思うことは決して悪いことではありません。ただし、親としての評価を気にしすぎると、そもそも子どもにどうなってほしいかを見失うことがあります。
改めて、自分に問いかけてみてください。子どもに“ありがとう”と言わせられない親は、ダメな親でしょうか。あなたは理想的ではない子どもを見たときに“この子の親は、なんてダメな親なんだろう”と思いますか?」
そう考えてみると、ひょっとしたら「今、周りの人が私を評価している」と思うこと自体が、私たちの思い込みかもしれません。
今すぐ思い込みを捨てることはなかなかできませんが、怒りがわいたとき「またこのパターンで怒っているな。本当は自分がダメな親だと思われるのがつらいんだよね……」と思えるだけで、少しは冷静になることができそうです。
「こういう時にはありがとうと言う」をコツコツ教える
nullそれでは、周りの人の目が気になる状況でイラっとしてしまったら、どのように子どもに気持ちを伝えたらいいでしょうか。
ありがちなのは「どうしてできないの!」「この間も言ったよね!」「お母さん(お父さん)が恥ずかしいでしょう!」と怒ってしまうこと。
「このような表現で叱った場合、子どもは何をどうすればいいのかわからず“どれほど自分がダメな子かを伝えられている”と受け取ってしまうかもしれません。
特に幼児の頃は、1度言っただけではルールやマナーの意味を理解できないもの。できて当然、わかって当然とは思わず“どういう状況で、どうしてほしいのか。それはなぜか”を整理して、リクエストの表現で伝えてみましょう」
電車やバスの中で、大きな声ではしゃがないでほしい。なぜなら、寝ている人や本を読んでいる人、具合の悪い人などいろんな人がいて、静かに過ごしたい人もいるから。
義父母にプレゼントをもらったら「ありがとう」と言ってほしい。なぜなら、お礼を言葉にして伝えると、相手もうれしい気持ちになるから。
このようなこのようなことを、子どもの年齢や理解度に合わせて、具体的な表現で、繰り返し伝えていくことが大事だそう。
「ポイントは“何度言ってもわからないよね!この前だって大声を出したでしょ!”と、過去にさかのぼって怒らないこと。“この前、電車の中で大声出して、ダメだよって言ったの、覚えてる? 今回も同じことだよ”と過去の出来事を確認するのはOKです。
できれば未来に意識を向けて、“次からはこうしようね”といった表現で、伝えてみてくださいね」
アンガーログを習慣化することは、怒りにくくなるための体質づくりにもつながるそう。ひょっとしたら「寝不足なときほど、外で怒りがち」など、さまざまな傾向を見つけられるかもしれません。気持ちに余裕があるときに、ぜひ試してみてくださいね。
幼児編はいったんここまで。次回は、小学生の子どもをもつママやパパから寄せられた、「ゲームの時間などの約束を子どもが守ってくれずにイライラする!」というテーマを取り上げます。
取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono
アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。
豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。